メルマガ『届け!ボディメイクのプロ「桑原塾」からの熱きメッセージ』の読者から、「コンテストに備えた減量に入る前に準備すべきことを教えてほしい」という質問が届きました。桑原弘樹塾長は、まずいきなり全開での減量は避けるべきとアドバイス。減量をスタートする前にやっておくと減量が楽になる2つのこと教えてくれました。
いきなり減量!その前に。
Q. 減量をスタートしていますが、とりあえずカロリー制限をしているといった感じです。来年コンテストに挑戦したいと思っていて、今年はお試しの減量を9月くらいまでしてみようと考えています。いきなりの減量の前に何か準備をしておく事はありますでしょうか。(33歳、男性)
桑原塾長からの回答
減量がうまくいく人もいれば、なかなかうまくいかない人もいます。うまくいかないというケースの殆どは、途中で停滞してしまって先に進まないというケースです。同じ人であっても、その年によってスムースに減量が進む時と、同じ内容であるにもかかわらず停滞してしまう時があったりもします。
幾つかの留意点があります。まず、いきなり減量全開にしないことです。今日から減量開始となって、減量期にやるべきすべての事を一気に投入しないことです。
もちろん、最初はスムースに進みますが、必ず停滞期が来るからです。これは減量という負荷に体が適応するためです。最初にすべての事をやってしまうと、停滞期に入った時に打つ手がなくなってしまうのです。
もう1つは、なるべく余裕をもった減量計画とすることです。競技によっては数週間、下手をすれば数日間で体重を落とすというケースもありますが、ボディビルやフィジークのようなフィギュア競技の場合は、体重合わせが目的ではなく如何に美しく痩せるか、言い換えれば、如何に筋肉を残しながら脂肪を削ぎ落としていくかということになりますから、数カ月という期間は確保したいのです。そして、その期間を幾つかに分けて、徐々に新しい手を追加していくようにします。
私が減量のキーワードとするのは「代謝」です。代謝とは栄養素が体の中で化学反応を繰り返して進んでいく一連の流れで、この流れはエネルギーを作る方向に向かっています。つまり、代謝が高ければ、様々な反応が起こりやすくボディメイクはしやすくなるのです。
減量開始前にやっておきたい2つのこと
減量の手前もしくは減量期の第1段階としては、本気の減量の前にしっかりと代謝をあげておくことです。この場合には大きく2つやっておくといい事があります。
1つ目は、1日の中で最も低い起床時の代謝を上げておくことです。代謝の高い人も低い人も、その人なりに1日の中で変化をしていますが、睡眠時は最低限の省エネモードとなるため、起床時が起きている時間帯の中では最も代謝が低い状態となります。
まず、朝起きてすぐにグルタミンを5g程度飲むようにします。グルタミンは小腸の唯一のエネルギー源であり、また胃粘膜の細胞もグルタミンで活性化します。つまり、胃腸が元気になるアミノ酸なのです。起きたら内臓を元気にしてあげるのです。
ついでに肩甲骨を動かすエクササイズを行うとより効果的です。大そうなトレーニングでなくていいので、肩甲骨周りを意識して動かしてください。この辺りには褐色脂肪細胞という脂肪燃焼をオンにしてくれる細胞があるので、非常に効率的に代謝をあげてくれます。この簡単な一連の作業を毎朝のルーチンとして、朝一の代謝をあげる癖をつけるようにします。
2つ目は食事そのものの代謝を上げるようにします。糖質、脂質、タンパク質は三大栄養素ということで、栄養素の中でも最重要なものですが、それはこの栄養素だけがカロリーをもっているからです。しかし、それぞれの栄養素には役割があって、その役割がうまくバランスを取った時に、もっとも代謝がスムースになります。
ちなみに、そのバランスとは、エネルギー産生栄養素バランス(PFCバランス)のことで、エネルギー比にして糖質:脂質:タンパク質が60:25:15というのがひとつの目安となります。
減量とは脂質をカットしてみたり糖質制限をしたりと、言ってみればPFCバランスを崩す行為でもあります。つまり、減量に入ると栄養素的に代謝は落ちていくのです。代謝を落とすことで体は制約された栄養素に適応しようとするのです。
減量期にチートディなどを設けて代謝を上げる工夫も、結果的にPFCバランスを整えることにも繋がっているのです。
そして、減量の時には、その代謝が落ちていくことをも乗り越えて更なるカロリー制限をしたり、運動強度をあげたりして体重(体脂肪)を落とすわけですから、ここに減量が苦しい要因があるのです。
従って、本格的な減量に入る前には一度理想的なPFCバランスを作り上げて、極力スムースな代謝としてあげることで、本格的な減量に入った時が楽になるのです。例えて言うならば、遠くまでジャンプしようとする時の助走のようなものです。
糖質を極端に嫌わずにGI値の高い複合炭水化物を中心に、特に朝食を含めた午前中とトレーニング後には補給するようにします。また、脂質は普通に食べていると25%を超えるケースがほとんどなので、若干控えめにするように工夫します。
そして、タンパク質ですが、やはり朝食を含めた午前中は特に足りない傾向にありますから、プロテインを活用するなどして補給をしてください。またトレーニング後のゴールデンタイムへの補給も必須です。
このようなしっかりとした助走期間を設けてやることで、本格減量に入ってからの停滞期を最小限に抑えることが出来るはずです。ぜひ準備期間として1カ月ほど取り入れてみてください。
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