中国化という地獄。一国二制度の甘い罠で餌食にされた香港の絶望

 

香港では、2014年の雨傘革命以後、断続的にデモはありましたが、それらすべては中国の手によって握りつぶされてきました。そして4月末、雨傘革命の中心的役割を担った活動家たちに禁固刑が言い渡され即日収監されたのです。

14年の香港民主化デモ提唱者に禁錮刑 中国政府への抵抗に壁

話は少し違いますが、1月には「中国国歌への侮辱行為に禁錮刑を科すことを盛り込んだ国歌法が可決されています。香港では、サッカーの国際試合で香港のサポーターが中国国歌にブーイングを浴びせるケースが相次ぐなどで、中国政府は問題視していました。そこで、香港政府にゴリ押ししたのが「国歌法」です。中国国歌を、替え歌などで意図的に侮辱する行為を禁じ、違反者には最高で3年の禁錮刑と5万香港ドル(約70万円)の罰金を科すものです。小中学校での国歌教育実施の明記のおまけつきです。

中国国歌法、香港にも適用へ=替え歌やブーイングに禁錮刑も

こうして、徐々に中国色が濃くなっていく香港において、市民は最近では諦めに近い心境なのか、政治への関心が薄れてきているとも言われています。どれだけ反対しても、どれだけ力を終結させても、徹底的に潰される現実を、香港市民は身をもって知っています。

「一国二制度」との建前があるため、形式的には個々の政府を持っていますが、香港側が中国の言いなりになって立法手続きを行うことで、香港は中国の思いのままです。香港議会は親中派が占めていますから、中国に逆らうようなことはありません。香港は、これからも真綿で首を絞められるように、徐々に中国への同化を強いられるのです。

台湾人は、こうした香港の悲劇をしっかりと見るべきです。何度も言いますが、「一国二制度のまやかしで餌食にされた香港の例があることを、2020年の総統選挙に向けて台湾はしっかりと教訓にするべきなのです。

香港の「一国二制度」は、香港返還時に英中双方による国際的な約束で、50年間はこの体制を維持することを両国で取り決めたわけですが、2017年の行政長官選挙に中国政府が介入し、民主派候補の立候補が制限される事態となり、この約束は中国側によって事実上反故にされています。

中国では、漢、晋、明といった諸王朝時代から封建制を敷いており、中央集権国家でした。それは今でも変わっていません。香港に対して「一国二制度」という建前を保ってはいますが、その実は、歴代王朝同様に香港を中央集権の一部に取り込んだだけであり、「二制度は有名無実化されているのです。

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