中国化という地獄。一国二制度の甘い罠で餌食にされた香港の絶望

 

香港がイギリス領となったのは、アヘン戦争の結果でした。もともとイギリスは舟山諸島を欲しがったのですが、舟山諸島は長江の出口で、清朝には都合が悪かった。そこで清朝は、人口5,000人しかなかった漁村の島を与えたのでした。それが後に、中国人の駆け込み寺的な存在となり、人口が約1,000倍以上に急増した上に、世界の金融センターとしても有名になりました。日本が一時占領した満州国もそうでしたが、中国と切り離され他国に統治された地域は近代産業社会へと急激に変貌しました。この事実を中国は冷静に見つめるべきでしょう。

香港人の運命は、全人類にとってひとつのモデルケースです。中国に返還されたことにより「籠の鳥」になるだけでなく、「法治国家から徳治人治国家へと後退したモデルケースです。中国が「一つ」である以上、返還後の香港の「中国化」は免れず、「一国二制度」が形骸化するのも避けられません。

香港人は、かつて享受していた自由と人権を守りたいと思っている一方で、中国人からすればそれは贅沢な要求です。香港に一国二制度を許したら、「一つの中国の大原則が揺らいでしまうからです。

中国には中国の仕組みと原則があるのです。「天下はひとつ」「大同」が中国の原則です。もっと言えば、世界を一つの中国にしたいというのがチャイナドリームです。そんな壮大な夢の前に、香港の自由などあまりに小さくどうでもいいことです。香港ごときに一国二制度を許すことはできないというのが、中国の言い分なのです。

チベット、ウィグル、内モンゴルも、無理やり併呑されて漢族の移住と独自文化抹殺によって「中国化」が進められました。現在はキリスト教やイスラム教を中国政府の完全支配下に置く、「宗教の中国化」も進められています。大量のウィグル人強制収容も、その一環として行われています。

李氏「宗教の中国化」堅持 ウイグル族大量収容正当化

中国に飲み込まれた以上、一国二制度や高度な自治、多種多様な価値観などは決して容認されず、待っているのは同化しかありません。それこそが「中国の夢」なのです。

image by: Gil Corzo / Shutterstock.com

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年5月14日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込648円)。

こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー

※ 初月無料の定期購読手続きを完了後、各月バックナンバーをお求めください。

2019年4月配信分

  • 新元号を台湾に通知した日本に対し、中国は「中国の影響から逃れられない」/「台湾を国と認める時が来た」に日本はどう対応するか(4/3)
  • 米韓首脳会談で文在寅は亡命申請?/蔡英文の「新南向政策」で急増した東南アジア人の不法滞在(4/9)
  • 日米から見放され、親北団体に翻弄される文在寅政権の「寿命」/疫病の国・中国がWHOから台湾を除外する愚(4/16)
  • スリランカのテロをウイグル弾圧に利用する中国の姑息/中国と親密な鴻海・郭台銘は国庫を狙って台湾総統選出馬?(4/23)
  • 平成とともに隆盛し、平成とともに終わる中国(4/30)

2019年4月のバックナンバーを購入する

2019年3月配信分

  • なぜ中国は経済減速でも軍事・治安維持費の増大が不可避なのか/社会主義の中国で愛人文化が流行る理由(3/5)
  • 蔡英文「日本との安全保障対話を進めたい」日米台印連携で中国は軍拡で潰れる(3/12)
  • ひまわり学生運動から5年、台湾・香港・ウイグルで起きた大きな差/米中貿易戦争以後の日本・中国・台湾の未来(3/20)
  • 中国への警戒感高まる欧州、それでもカネで歓心を買う中国/美談をでっち上げても誰も信じない中国(3/26)

2019年3月のバックナンバーを購入する

2019年2月配信分

  • 中国で最先端科学が発展する恐ろしい理由/外国を知っても中国人は中国を変えられない(2/6)
  • 「日本に国王を奪われた」と嘘の歴史で天皇侮辱を正当化する韓国/国民監視と同化政策の中国は確かに「人類の恥」(2/12)
  • 中国でまたもや発覚した日本人拘束(2/20)
  • 中国が喜び、台湾に懸念が広がった沖縄県民投票/習近平の失態で支持率回復した蔡英文と台湾の行方(2/26)

2019年2月のバックナンバーを購入する

2019年1月配信分

  • 武帝時代に広がった貧富の格差(1/1)
  • 文在寅政権と対決することは必然だった日本/「一国二制度」を台湾が受け入れられない理由(1/8)
  • 中国が世界一の科学国となることは人類の不幸/「日本語世代」が減少しても台湾人の日本好きは変わらない(1/16)
  • GDP成長率低迷、動揺から強気に振る舞う中国(1/22)
  • 中国は歴史的に「人質外交」の国/台湾政界の風雲児「フレディ・リム」の描く台湾の未来(1/29)

2019年1月のバックナンバーを購入する

2018年12月配信分

  • 中南米で行われている米中の代理戦争(12/5)
  • 欧米で進む中国企業排除、アリペイと組むpaypayは本当に大丈夫か/スポーツですら侵略主義をむき出しにする中国(12/11)
  • 世界の分断が進む中で中国の独善が明らかになった1年/統一地方選挙から読む2020年の台湾とアジア情勢(12/18)
  • レーダー照射は「ムクゲの花を咲かせたい」韓国の野心を表している(12/25)
  • 【年末特別号】中国の嘘がばれた2018年(12/30)

2018年12月のバックナンバーを購入する

2018年11月配信分

  • アジア各国の社会問題をあぶり出す映画プロジェクトに期待(11/6)
  • 実より脳内ファンタジーが優先される韓国の反日の異常/台湾の選挙に介入する中国の実態(11/14)
  • もっともルールを守らない中国がルール遵守を叫ぶ矛盾/台湾の映画賞まで台無しにする「習近平の言論弾圧」(11/21)
  • 台湾統一地方選挙は国民党が勝利したのか(11/28)

2018年11月のバックナンバーを購入する

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年5月14日号の一部抜粋です。

黄文雄この著者の記事一覧

台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」 』

【著者】 黄文雄 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎週 火曜日 発行予定

print
いま読まれてます

  • 中国化という地獄。一国二制度の甘い罠で餌食にされた香港の絶望
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け