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なぜ水木しげる先生は妖怪をあれだけ身近な存在として描けたのか

墓場で生まれた鬼太郎と、魑魅魍魎の妖怪たちが織り成す不思議な作品『ゲゲゲの鬼太郎』。半世紀以上にわたり人々の心を捉え続けるその秘密は、どこにあるのでしょうか。今回の無料メルマガ『1日1粒!『幸せのタネ』』では著者の須田將昭さんが、作者・水木しげるさんの創造力と想像力を育てた「のんのんばあ」について記しています。

妖怪とお友達になりませんか?

人智ではよく分からないことを幽霊やお化けのせいにする、これはある意味、昔の人の知恵」だと思います。考えても分からないし、怖いのは怖い。そこに色んな宗教的要素(土着のものも、仏教、神道など)が加わって、幽霊やお化けなどの形になっていったのでしょう。

最近はまた「妖怪」がブームのようですが、妖怪も同じです。20年以上前ですが「のんのんばあとオレ」というドラマがNHKで放映されました。「ゲゲゲの鬼太郎」でお馴染みの、水木しげるの少年時代の思い出をまとめた本がもとになっています。

のんのんばあというのはお手伝いの老婆で、妖怪やお化けの話を少年時代の水木しげるに語って聞かせた人物です。この、のんのんばあがいなければ、「ゲゲゲの鬼太郎」はこの世に生まれなかったかもしれません。

のんのんばあは色んな妖怪の話をするのですが、少年の心には恐怖心とともに妖怪が身近な存在として根付いていきます。

ある日、「あかなめ」という妖怪の話をのんのんばあが語ります。あかなめは「垢舐め」で、風呂桶の汚れを舐めにやってくる妖怪です。この妖怪自体は、綺麗好きで特に害はありません。怖くもありません。

でも、のんのんばあは言います。

「妖怪は妖怪を呼ぶ。あかなめはいいけど、それに引き寄せられてどんな悪さをする妖怪がくるか分からない。だから風呂桶はいつも綺麗にしないといけないよ」

家中にわんさかやってきた妖怪を想像した少年はそれこそ必死になって風呂桶を磨きます。うまくできていますね。

「風呂を掃除しなさい!」と言われても、わんぱく盛りの子供が素直に掃除するかどうか…。家中におどろおどろしい妖怪がやってくるのを想像させる方が、よっぽど利きます。

のんのんばあは、地元の祈祷師の奥さんだった関係で、こうしたことに詳しかった、信心深い人だったという背景もあったとは思いますが、のんのんばあの語る妖怪の話が、少年の耳に素直に届くという時代背景そのものが素朴だとも感じます。

まさに、妖怪と人間は同居していた仲良くしていた時代だったのだろうと思います。

今はなかなか妖怪とお友達になる機会の少ない時代ですが、「のんのんばあとオレ」の原作本は、今でも筑摩書房から文庫本で発売されていますので、是非一度手に取ってください。

妖怪とお近づきになるきっかけが得られるかもしれません。

目に見えないモノの世界に思いをめぐらす。漫画家水木しげるを育てた原点が感じられますね。

創造力の源は想像力。空想、妄想、白昼夢にまみれることは、クリエティブな仕事を求められる大人にこそ必要なことではないでしょうか。これを機会に、ちょっと妖怪と空想の世界で戯れてみてください。

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【著者】 1日1粒!『幸せのタネ』 【発行周期】 日刊

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