あなたの視野を狭めているのが、ほかでもない「あなた自身」だったとしたら…。今回の無料メルマガ『ビジネス真実践』では著者で人気コンサルタントの中久保浩平さんが、自分の意見に否定的な考え方をシャットアウトすることの危険性を、とある企業のエピソードを例に上げつつ論じています。
否定的な意見も聞く
自分の考えや意見に対して否定的な意見や態度をとられると多少なりともカチンと来たりすることはありませんか?場合によっては「もういい。お前には俺のことはわからない」といって切り捨ててしまうなんてことも。実はこれ、伸びしろを捨ててしまっていることにもなるのです。
どういうことかというと、否定されるということは、
- 価値観が合わない、ズレ
- 考え方が違う
- これまでの環境・背景が違う
という原因で起こる場合がほとんどですが、そもそも人間の価値観が全て合う、なんてことはないので価値観の違う人間の意見を自らシャットアウトすることで
- 拡がるはずの世界
- 自分の持っていなかった考え
- 知らなかった情報
などに触れることができなくなり、視野が狭くなります。単純な話、否定されようが人の意見に耳を傾けないということは、それだけ独り善がりの世界へどっぷり浸かっていってしまうということです。
これは、過去に成功したもののジリ貧になっていくという経営者に多く見られます。いってみれば、過去の成功例に囚われていて「それが正しい」「自分の考えが絶対的だ。」という殻から脱皮することができないでいるのです。
以前、こんなことがありました。小売業のS社では、広告、チラシを活用し商売そのものは上手く行っていました。ですが、一定の売上は見込めるもののそれ以上の次なる成長戦略を描けずにいました。そこで、S社では新商品の販売をすることになったのです。
社長 「この商品なんですけど、どう思います?」
私 「その商品だと、これまで販売してきた主力商品のお客様層より、少し若いお客様になるんじゃないですかね」
社長 「やはり、そうですよね…。という事は一から新規開拓していかないと…」
私 「そういうことになりますね。何か漠然とでも良いので考えていることはありますか?なんでもいいですよ」
社長 「そうですねぇ~、特別割引か無料かなにかでモニターさんになってもらって、そこで試してもらってから正式に購入して頂く…という流れでしょうか?」
私 「そうですね、この商品だと、価格も価格ですし、まず試してもらうことが必要でしょうね。ではモニターさんにはどうやって集まってもらいますか?」
社長 「う~ん、やっぱりうちの得意な広告、あとチラシ…」
私 「それと今ならブログやらSNSなども活用できますね。でも、いつまでも広告頼りだと同じことの繰り返しになりますからどこで広告を止めるか?ってことまで最初から決めておかないと後々しんどくなっていきますよ。その辺も踏まえて、さっそく媒体の特性を活かした戦略を一緒に立てて行きましょう」
2週間後…。
社長 「広告はこんな感じでどうでしょうか?」
広告原稿を見ながら…
私 「う~ん、イマイチ、モニターになる理由がよく分かりませんね。あと…割引、割引を出しすぎですよ。これだとふつーに安売りしてるだけですよ。どうして、今回はこのような特別価格でご提供できるのか?これをきちんと説明しましょう。そうでなければ、何の為のモニターか分からなくなるし、正式に購入してもらう為の道が閉ざされてしまいます」
社長 「そうですかぁ~、これでイケルと思ったんですが…」
私 「ご納得頂けませんか?」
社長 「いやね、中久保さんの言うことはよく理解できますし、その通りだと思うのですが…前の商品では、この売り方で反応も良かったですし、実際に成功しましたから…」
私 「なるほど。では、そうして下さい。でも、それじゃまた、恐らく前と同じで、ずっと同じことの繰り返しになってしまいますよ。それに、顧客層も今までとは違うという事も頭に入れておかないと。それから、モニターさんとのコミュニケーションを継続していくための準備もしていきましょう」
社長 「……」
私 「まだなにかひっかかりますか?確かに前の商品が良く売れていたということも分かります。でも、その後、ジリ貧になったというご経験があるじゃないですか。今までのように広告頼りでずっと商売をしていけば自転車操業から抜け出せませんよ。せっかくの新商品で成長していくチャンスなんですから。1つの成功にしがみついていては、それ以上の結果は期待できません。今こそ、これまでの教訓を活かすべきだと思いますよ」
社長 「……。分かりました。よくよく考えてみたら、今まではそのような意見を言ってくれる人もいませんでしたから。やはり、このチャンス逃すわけには行きませんから、とことんやりましょう」
過去の成功事例にしがみつくということは、新たな発想や思考を自ら閉ざしてしまうということです。
自分と意見が合わない、価値観が合わないというものを無理に合わせる必要はありませんが、「そういう考え方もあるんだ~」というような耳を傾ける余裕を持っておくことで成長機会を逃すことは少なくとも減ってくるものです。
同じような価値観や意見の人といれば確かに居心地はいいですが、反対意見や価値観の違う人といれば、自分の知らなかった世界や考えを知ったり、学ぶことができるのです。
御社では、成長、発展していくために過去の成功事例にこだわりすぎていませんか?そして、自分と意見が合わない人の意見や主張を聞く前からシャットアウトしていませんか?
■今日のまとめ
「自分とは合わない意見や考えにも耳を傾ける」
- 周りを見て自分と意見が合わないな?と感じる人、なんだか苦手なんだよな~と感じる人の名前を列挙する
- 列挙した人を思い切ってランチに誘ってみる
- ランチ中の会話で感じたことをノートに書き出す
image by: Shutterstock.com