中東の悲劇の再来を予感。アメリカが求める有志連合の「踏み絵」

 

しかし、most likelyですが、現在の日本政府には、今回のアメリカ政府からの「要請」を断ることはできないと考えます。その理由は、G20サミット前からトランプ大統領が呟いている「日米安全保障条約の“見直し”の必要性」に、影響がネガティブに波及しかねないとの懸念です。実際に、日本のタンカーを守るという経済的なinterestもありますので、国民の利益を防衛するためとの理由で自衛隊を出すというのは理に適っているようにも見えることもあります。

もちろん、憲法上の解釈、現行法の解釈という問題は付きまといますが、もしかしたら、これを憲法改正議論の“好機”と捉えるような考え方もあるかもしれません。恐らくこの2週間の猶予期間中に、日米政府間で何らかのアレンジを協議しあい、様々な解釈が可能なsolutionを編み出そうとするのだろうと思われます。

ただ、さらに大きな懸念は、このCoalition of the Willingへの日本の参加は、やっと築き始めた日本外交のチャンスを根底から壊してしまう可能性でしょう。 トランプ大統領から依頼を受けるような形で安倍総理がアメリカとイランの仲介をすることで、それまでの後追いの外交からの脱皮が図られ、恐らく初めて国際的な懸念事項の解決において、創造的な役割を果たせる可能性が生まれました。 イラン政府からも、普段、なかなか外国の首脳と会談を持たないハーメネイ師との会談をセッティングし、日本の果たし得る役割に対し、一応、期待感で応えました。メディアの論調には失敗だったのではないかとのネガティブなものが多くあるように見受けられますが、私は日本外交の新しい領域へのスタートと見ています。

しかし、仮に今回、トランプ大統領からの呼びかけに応じ、何らかの形でCoalition of the Willingに、しっぽを振って参加するように見られることになったら、イランからの信頼は失われるでしょうし、それを受けて、他の中東諸国からも「ああ、やっぱりアメリカに追従するしかできないのか」と、日本の外交力へのクエスチョンマークが付けられることになるでしょう。

私は予てより、日本外交が最も活きる道は、仲介・調停の部門だと見ています。リーダーシップを追求するよりは、皆が挙げた拳を下ろせなくなっている際に、双方の立場を尊重しつつ、和解の道を探るという点で、最大の力が発揮できるのではないかと思っています。表立って使える軍事オプションが削がれている中、これまで挙げてきている途上国支援での実績や資金力などは、和解案の提示と実施に際し、大きな評価となるからです。今回のイランが絡んでいるケースもそうでしょう。

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