中東の悲劇の再来を予感。アメリカが求める有志連合の「踏み絵」

 

これから2週間から1か月の間は、日本政府の外交筋としては、とても難しいハンドリングを迫られることになるかと思いますが(本件のハンドリングはもちろん、韓国との問題もあるので)、大事なことは、「いかにトランプ大統領からの要請に応えつつ、イランとの間に醸成されている信頼関係を崩すことなく、この大波を乗り越えるか」という戦略的な対応です。慎重な思考を期待します。

では、もしハンドリングを間違え、再度、イランを孤立状態に追い込み、対日信頼も失われたらどうなるのでしょうか? すでにイラン核合意で約束したウラン濃縮レベルを超過し、欧州各国にもプレッシャーをかけているイランですが、仲介のドアも閉ざし、欧州各国からも批判に晒されることになったら、中東地域はこれまでにない危機的な緊張の高まりを経験することになるでしょう。

第1次世界大戦後、英仏がアラビア半島を勝手に切り裂き、第2次世界大戦後には英国の3枚舌外交の結果、イスラエルが建国され、パレスチナ問題が勃発し、中東戦争が起き、そして、アラビア半島が相互不信のエリアになってしまったような緊張状態です。その状況は、1991年の湾岸戦争以降、さらに悪化し、イスラエルとイランの“核”を用いた相互威嚇の状況を生みました。 そこに確実に軍事力を付けているサウジアラビアが参加し、イエメンにおいてイランと対峙するような事態になっています。そして、今やスンニ派の雄としてサウジアラビアはスンニ派国をまとめ、イランに代表されるシーア派国との軍事的・外交的な緊張を高めています。 イスラエルとの歴史的なライバル関係を加えると、大きく分けてもトライアングルの力の均衡が出来ています。その後ろには、米ロがおり、そこに地域のバランサーとしての役割を果たしてきたトルコがいます。 もし、イランがさらに孤立し、軍事的な緊張を高める方向に触れていくなら、偶発的なincidentがおこれば、一気に第3次世界大戦の口火を切ってしまうかもしれません。

今回、私がお話した内容、ただの絵空事だと思われるでしょうか?いろいろな角度から入ってくる情報や、現地の声を聴く中で、私はとても大きな懸念を抱いています。

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世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

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