ネット通販やコンビニ・ドラッグ以外の小売の業態では、欲しいという欲求を満たす商品のうち、すぐでなくてもいいけど欲しい、というようなものを、どのように買ってもらうか、と考えることが、差別化のポイントになります。
そこで、少しまえに話題になった、モノとしての商品にお金を使うのではなく、旅行やエンタメパークなど体験にお金を使う、「コト消費」という消費傾向がありました。
モノや情報が溢れている中、もう「どうしても欲しいものはない」ので、どうせなら楽しいことに使おう、という心理状態の消費者が増えた、という背景があります。
蔦屋書店から学ぶ~手法ではなくコンセプトを先に固める
ここ数年、ネット通販の台頭で、モノを買うのであればアマゾンや楽天で買う、すぐに欲しいのであればコンビニやドラッグストア、百円ショップ、ディスカウントストア、という感覚が消費者の頭の中にあります。なので、リアルな店を持つ場合は、「商品を売る」だけではなかなかECやドラッグストアなど、これらの業態のショップで済むため差別化ができません。
そこで、「食べる」「楽しむ」などの、体験ミックス型消費ができる仕掛けをしていくことで、消費者が「行きたくなる理由」を作ることが必要になります。モノ消費からコト消費、そして体験消費に変わってきているトレンドを、しっかりと捉えた今回の蔦屋書店の新業態と言えます。
蔦屋書店の新業態から学べることは、事業のコンセプトをはっきりさせたことにあります。コンセプトとは、誰をよろこばせ、そのために何を提供できるのか、ということです。
江別の蔦屋書店は、札幌に通うベッドタウンに住む若いファミリー層や独身男女たちに、平日も週末もゆったりと過ごせる空間を提供していくことが、そのコンセプトになるのです。これを「田園風景でのスローライフ」と表現したのです。まさに言い得て妙というか、ポイントをつかんでいる表現だと思います。
単にモノを売るだけでは価格競争になるし、ネット通販には勝てません。そこで体験型消費を提案するのですが、その際に重要なことは「誰に楽しんでもらうのか」と、「何で楽しんでもらうのか」という、その場所のコンセプトを固めることです。
人は居心地のいい場所に集まります。そして、来店頻度が高いほど、また、滞店時間が長ければ長いほど、お金を使ってくれます。
地域の住民の変化を見据えチャンスを見つけた上で、コンセプトを固めた蔦屋書店の、このプロセスから学べることは、目先の手法論や値下げなどを決めるよりも先に、消費者ニーズを把握した、わかりやすいコンセプトを固めたことに尽きます。
image by: PR Times