MAG2 NEWS MENU

米ペット産業で、手作りペットフードがトレンドになっている理由

アメリカのペット産業の成長率は、日本の約10倍で、その分多くの情報や新しいビジネスが生み出されているようです。『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』の著者でNY在住のりばてぃさんが、そんなアメリカのペット産業事情を伝えてくれます。まずは、アメリカで8年11シーズン続く猫専門番組を紹介。さらに、ペットの健康への気遣いが進み、ペットフード業界に起きている「手作り」のトレンドについて、その現状と注目される理由を教えてくれます。

アメリカで8年11シーズン続く猫専門番組

2011年に放送開始し、今年で8年目。現在シーズン11が放送中の猫に関する長寿番組がある。その番組とは、動物専門チャンネルのアニマル・プラネットで放送中の「My Cat from Hell」。直訳すると、「地獄から来たうちの猫」。

まるで地獄からでもやってきたのかと思うほど凶暴だったり、全く懐かなかったり、粗相をしたりなど、とにかく飼い主を悩ます猫ちゃんが登場。飼い主にとって問題と感じる行動を猫ちゃんにとっても飼い主にとっても妥協できる解決策を模索する番組だ。

この番組は日本で「猫ヘルパー~猫のしつけ教えます~」という番組名で有料チャンネルで放送されているようなのでご存知の方もいるだろう。

アメリカでも放送は有料チャンネルなのだが、いくつかのフル番組とショートクリップ動画がアニマル・プラネットのYouTube公式チャンネルで視聴できるようになっている。数話分だけ視聴したけども、これがなかなか興味深かった。

猫ちゃんならではの事情がこんなに様々あるとは知らなかったし、専門家が見ればその解決策は意外と簡単であることも驚きだった。せっかくなので、近年のアメリカの動物市場の動向を合わせて、この番組についてお伝えしよう。

ご参考:
My cat from hellYouTube公式のMy cat from hell プレイリスト

いろんな性格の猫ちゃん

「My Cat from Hell」は、猫行動学者のジャクソン・ギャラクシー(Jackson Galaxy)さんが、飼い猫の行動に困っているお家に出向いて問題を洗い出し、解決策を提案。1週間ごとに進捗確認のため再訪問して結果的に猫ちゃんの行動が落ち着くまで見守ってくれるという1時間のリアリティ番組である。

…と聞いて頭に思い浮かべるジャクソンさんはどんな人だろうか。猫行動学者ということで、白衣を着てメガネをかけていて、いかにも学者さんといった風貌を想像するだろうか?メガネをかけている点は合っている。けども、見た目はとてもいかつい。

腕にはごっついタトゥーびっしり。坊主に長めの黒ヒゲ。そして、特徴的なピアスをしていて、黒縁メガネという出で立ちなのだ。まったく知らない人だったら気軽に話しかけづらいかもという感じの人なのだ。

ちなみにジャクソンさんは昼間は猫行動学者として、テレビ番組に出演したり、獣医と共同運営している自身の猫コンサルタント会社Little Big Cat, Inc.を経営しているが、夜は猫好きのロック・ミュージシャンとしてバンド活動をしているそうだ。

だから、「My Cat from Hell」でお宅訪問する際には猫グッズは黒いギターケースに入れて、指には猫型の指輪、猫のタトゥーなどなど、猫満載。そんなぱっと見はとてもごついジャクソンさんが、依頼主の話に真剣な眼差しで否定することなく耳を傾けてくれる。

依頼主の中には、このままの状態が続けば猫ちゃんを手放すしかないとか、自分の平穏な日々が猫にめちゃくちゃにされて仕事にも影響が出ているなどなど、単なるペット問題にとどまっていないものも多い。

ひとしきり飼い主の話を聞いたあと、問題の猫ちゃんにご対面する。ジャクソンさんを見るなり猫パンチと威嚇で牽制する子もいれば、ベッドの下に潜ったまま出てこない子もいる。飼い主の話も辛そうだったけど、猫ちゃんの様子もとても辛そうなことが多い。ギリギリのところで生活しているように感じて胸が締め付けられる想いになる視聴者さんも多いのではないだろうか。

そして、この時にジャクソンさんは少し時間を取って、猫ちゃんの様子を観察。その後、なぜこんな状態になっているのか考えられる理由や原因を飼い主に説明した上で解決策の提案をしてくれるという流れだ。また時々、厳しいことを言うけども…、と前置きした上で飼い主のわがままと思われる主張を正すこともする。

番組の演出が入るため、時々、不自然な流れもあるのだけど、猫ちゃんにも様々な性格や特徴や悩みがあることを学べる良い番組になっていると思う。

例えば、夜中に飼い主に襲いかかってくる猫ちゃんや、いつもベッドの下に潜ったままで、近づくと威嚇してくる猫ちゃん、他の同居猫や訪問客手当たり次第に襲いかかる猫ちゃんなどは、それぞれ独自の悩みやストレスを抱えているそう。

解決策としては、猫がもっとも安心する高い位置から見下ろせる安全な場所を作ってあげるとか、もともと狩が好きで他の猫よりエネルギーのある猫種の場合は昼間にたくさん遊んであげるなどなど。猫の特性を知らない飼い主は、飼い主目線の過ごしやすい部屋作りをしてしまうけど猫の行動の理由を考えて内装を変えてあげるだけで、ほとんどの問題行動が軽減または無くなるそうだ。

そして、場合によっては病院での診察を勧めることもある。悪い病気や何か解決しないといけないホルモン問題などが隠れているかもしれないからだ。ふむふむ。

他にもいろんな事例があって、それこそ2011年から続く同番組は全部で110回も放送(シーズン1は3回分と短かったが好評だったため10回分ほどの放送に増加)。つまり、これまでに110通りの猫ちゃんと飼い主の問題を解決してきたことになり、猫ちゃんによって様々な性格や特性があるということなのだ。

ギャラクシーさんは「My Cat from Hell」の他にウェブ番組の「Cat Mojo」や自身のYouTubeチャンネルも運営。用意すべきトイレの数は?など猫ちゃんを飼うために知っておくべき基本情報などを知ることができるので、これから猫ちゃんをお家に迎え入れたいと考えている方や、猫ちゃんの変な(?)行動に困っている方、もっと猫ちゃんのことについて知りたいという方にオススメの動画となっている。

ご参考:
Jackson GalaxyさんのYouTube公式

成長中のアメリカのペット産業

それにしても、ひと昔前まではペットを飼うことは身近な経験者や病院の先生、ペットショップの方、本や雑誌などがペットについての情報源だった。でも今はインターネットでも知識を得ることができる。飼い主だけじゃなく、ペットにとっても環境が良くなったのではないかなと思う。

そして、以前より知識が増え、いろんなペットや飼い主に影響されてペットを飼う人も、もしかしたら増えているのかも?そんな様々な要因があってか、近年、ペット産業は急成長している。

具体的には、2018年のペット産業の市場規模は史上最大となる720億ドル(1ドル=110円換算で約8兆円)を記録。American Pet Products Association(APPA)発表のデータで時系列にみてみると、2017年は約700億ドル(7兆7,000億円)、2018年は720億ドル(約8兆円)で対前年比4.4%増。2019年は3.9%さらに増加する760億ドル(約8兆4,000億円)が見込まれている。

ご参考:
Americans Are Spending More on Pets Than Ever Before: $72 Billion

2016年にブログでペット産業について取り上げた際には、同じくAPPAの調査報告として、2018年のアメリカのペット産業の市場規模は675.6億ドル(7兆4,360億円)になるとの予測とお伝えしていたが、結果的には予測を大幅に超える成長となっている。

ご参考:
NYのユニークな巨大看板事例、高級車売るには車より可愛い子犬が効果的?

ちなみに、日本でもペット産業は顕著に成長しており、年率0.4%の伸びを見せているが、アメリカは年率4%なので日本の10倍のペースとなっており、様々な分野で興味深い改革が進んでいるが、例えば、ペットフード改革

私たち人間が、近年、健康に気をつけているようにペットの健康にも気をつける人が増えており、特に人口調味料や保存料、実際に使われている素材を気にする人が増加。

また、ペットの食物アレルギーも注目されていて対策が進んでいる。アメリカ大手ペットショップのペトコ(Petco)は、今年5月、人工的な素材を含んでいるワンちゃんや猫ちゃん向けペット・フードの販売を停止。オンラインやお店の棚からもすべて排除したのだ。

さらに「ペット・フード業界に革命」とまで言われている取り組みとして、手作りペットフードのスタートアップ企業のジャスト・フード・フォー・ドッグス(JustFoodForDogs)と提携して、ペトコ店内に店内キッチン・コーナーをマンハッタンのユニオン・スクエア店内に設置。毎日、手作りしたペットフード(主に犬中心)を販売している。近隣のペトコショップにもここから配送しているという。

ご参考:
ニューヨークのPetcoで進行中のペット・フード革命、JustFoodForDogs

なお、Eコマースから始まった手作りのペットフードはジャスト・フード・フォー・ドッグス以外にもいくつもあり、また、ペトコのような大手ペットチェーン独自に始める事例も出ているなど、一種のトレンドとなっている。

価格は、手作りということで割高ではあるが、比較的安価なものからこだわりのもの、獣医が監修などなど様々。ワンちゃんや猫ちゃんの体調に応じて選べるようになっている。中にはこれまでどおりのペットフードしか食べないという子もいるだろうしね。

なお、手作りペットフードがここまで注目されている理由の1つに、従来のペットフードにワンちゃんの心臓病の原因になっているのではないか?との疑いが出ていることも要因となっている。米国食品医薬品局(FDA)が過去に心臓病を患ったワンちゃんが食べていたペットフードのブランドリストを出しているほどで、けっこう深刻だ。

ご参考:
FDA Identifies Dog Food Brands Associated With Canine Heart Disease

ペットオーナーとしては、喋ることのできない猫ちゃんやワンちゃんにできるだけ体に良いものを食べて欲しいと願った結果、上述のような大手ペットショップの大改革の後押しをしたのかもしれない。

ただし、手作りペットフード、というか従来のペットフード以外の新鮮な食材を使ったドッグフードの中には「生の肉」をそのまま生のままにしている商品もあるようで、その生肉から下痢や体調不良を引き起こす菌が検出されたためリコールなど呼びかけがあった。

前述したペトコの手作りペットフードはすべて調理し衛生面もしっかり管理しているが、中には管理の甘い販売業者もいるので注意が必要だ。こういった点でもインターネット上ですぐにニュースや口コミを確認できるので、ペットにも飼い主にとっても、やっぱり以前よりずっと良い環境になったなと思う。

ご参考:
FDA warns against specific brand of raw frozen dog food

image by: Shutterstock.com

りばてぃこの著者の記事一覧

ニューヨークの大学卒業後、現地で就職、独立。マーケティング会社ファウンダー。ニューヨーク在住。読んでハッピーになれるポジティブな情報や、その他ブログで書けないとっておきの情報満載のメルマガは読み応え抜群。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 メルマガ「ニューヨークの遊び方」 』

【著者】 りばてぃ 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週 水曜日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け