10月から10%となる消費税を財源として、新たに「年金生活者支援給付金」という制度が始まるのをご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者のhirokiさんが、年金生活者支援給付金の内容と該当する条件、そしてどのくらいの額が支払われるのかを事例を挙げて詳しく説明しています。
低年金者向けに10月分から月5,000円前後の年金生活者支援給付金が年金とは別に給付
国民年金には今は約年間12兆円の国庫負担(税金)が投入されています。全額、基礎年金に投入されています。これは今の国民年金からの給付である基礎年金の半分に相当します。基礎年金の2分の1は税金でできているという事ですね。
なので国民年金保険料(令和元年度保険料月額16,410円)を全額免除しても、税金分が受け取る事ができます。例えば極端な話、20歳から60歳前月までの国民年金強制加入期間を全く保険料支払わずに、全額免除していたとしても老齢基礎年金の満額780,100円の390,050円は支給されるという事になります。
ちなみにちょくちょく、今まで支払った保険料の元は何年でとれるのかという事が話題になったりしますが、ザックリ言うと10年ほどで元が取れます。今の国民年金保険料が16,410円で、16,410円×480ヵ月=7,876,800円だから、年金として受け取るのが780,100円なので、年金で割ると7,876,800円÷780,100円=10.09年という事になります。
本来は支払った保険料に対して20年で元が取れるようになってるというのが保険の世界ではありますが、なぜたった10年で元が取れてしまうのかというと、冒頭で申し上げたように半分が税金でできているからです。もし税金が投入されていなければ、保険料は16,410円の2倍の32,820円を支払う計算になり、32,820円×480ヵ月=15,753,600円の保険料を支払う。年金額が780,100円とすると、支払ってきた保険料15,753,600円÷年金780,100円=20.19年となる。
よく未納にするのは損だというのは、未納だと税金分すら受け取れないからです。老齢の年金は終身だから、終身で放棄する事になる。せっかく巨額の税金が投入されているのにその分の受け取りを拒否してるのと同じだから。
ところで、2019年10月からは年金とは別に支払われる年金生活者支援給付金というのが始まります。年金生活者支援給付金は低年金者への消費税対策として、2019年10月から消費税が10%になるのでその消費税を財源として支給されるものです。この給付金は今まで支払ってきた保険料期間や免除期間によって給付額が決まるので、未納が多い人ほど今まで以上に損な事になります。
というわけで今回は年金生活者支援給付金について見ていきましょう。
1.昭和29年5月16日生まれの女性(今は65歳)
● 何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!(参考記事)
● 年金加入月数の数え方一例(hirokiまぐまぐニュース参考記事)
18歳年度末の翌月である昭和48年4月から昭和54年8月までの77ヶ月間は厚生年金に加入。この77ヶ月間の平均給与(平均標準報酬月額)は24万円とします。なお、20歳に到達する昭和49年5月から国民年金(老齢基礎年金)の計算に含む。←ココ注意しとってください。
昭和54年9月から公務員と婚姻し、専業主婦となる。公務員の専業主婦は国民年金に強制加入ではなかったが、任意加入する事はできた。任意加入しなかったが受給資格期間最低10年に含むカラ期間にはなる。任意加入せずにカラ期間となったのは、昭和54年9月から昭和61年3月までの79ヶ月間。
昭和61年4月からはそういう強制加入ではない専業主婦も強制加入となって国民年金第3号被保険者となる(年間見込み収入額にもより3号にならない場合もあります)。夫が退職する平成10年2月までの143ヶ月間が国民年金第3号被保険者期間。
平成10年3月から平成18年9月までの103ヶ月間は未納。平成18年10月から60歳前月である平成26年4月までの91ヶ月間は国民年金保険料全額免除とした。なお、平成18年10月から平成21年3月までの30ヶ月間の全額免除は老齢基礎年金の3分の1に反映し、平成21年4月から平成26年4月までの61ヶ月間は老齢基礎年金の2分の1に反映する。
さて、この女性は60歳(平成26年5月の翌月分)から厚生年金が貰える生年月日の人ですが、年金加入期間の条件を満たしておく必要がある。更に65歳前の厚生年金が支給されるには少なくとも1年以上の厚生年金記録が必要。平成26年5月時点では年金受給資格期間は原則として25年以上(300ヵ月以上)無いといけなかった(平成29年8月から10年に短縮)。
保険料納付済期間は厚生年金期間77ヶ月+国民年金第3号被保険者期間143ヵ月=220ヵ月。保険料免除期間は91ヶ月間。カラ期間は79ヶ月間。
有効な年金記録は平成26年5月時点で220ヵ月+91ヵ月+79ヵ月=390ヵ月≧300ヵ月だったので、60歳から貰えてる人。
ところで、この女性は61歳の時に将来の老齢基礎年金を増やすために国民年金の任意加入を市役所で申し出た。65歳までの48ヶ月間任意加入したものとします(直近10年以内の免除期間は追納せず)。60歳からの年金はこの記事では省いて、65歳(令和元年5月)からの年金総額を算出します。
- 老齢厚生年金(報酬比例部分)→24万円×7.125÷1,000×77ヵ月=131,670円
- 老齢厚生年金(差額加算)→1,626円(令和元年度価額)×77ヵ月-780,100円÷480ヵ月×64ヵ月(20歳になる昭和49年5月から昭和54年8月までの期間)=125,202円-104,013円=21,189円
- 老齢基礎年金→780,100円(令和元年度満額)÷480ヵ月×(20歳以降の厚年期間64ヵ月+3号期間143ヵ月+任意加入48ヶ月間+平成21年3月までの全額免除期間30ヵ月÷3+平成21年4月以降の全額免除61ヵ月÷2)=780,100円÷480ヵ月×295.5ヵ月=480,249円
あと、夫の配偶者加給年金から振り替えられた振替加算は56,799円(この女性の生年月日による令和元年度価額)とします。
● 加給年金と振替加算(日本年金機構)
よって、65歳からの年金総額は、
- 老齢厚生年金(報酬比例部分131,670円+差額加算21,189円)+老齢基礎年金480,249円+振替加算56,799円=689,907円(月額57,492円)
なお、65歳以上の老齢基礎年金受給者で、世帯全員が住民税非課税、前年の公的年金等収入(非課税年金の収入は含まない)+前年所得≦779,300円であれば令和元年10月から年金生活者支援給付金の対象となる事を聞いていた。令和元年10月から年金生活者支援給付金が支給される事になり、請求書も出した(初回振り込みは令和元年12月13日)。いくらの年金生活者支援給付金が支給されるのか。
この女性は保険料納付済期間(20歳未満60歳以降の基礎年金に反映しない厚生年金期間除く)が64ヵ月+第3号143ヵ月間+任意加入48ヵ月=255ヵ月。全額免除期間が91ヶ月間あるので、この期間で年金生活者支援給付金額を算出する。未納期間やカラ期間は計算に含まない。
- 年金生活者支援給付金→5,000円(基準額)÷480ヵ月×255ヵ月+10,834円(免除の場合の基準額)÷480ヵ月×91ヵ月=2,656円+2,053円=4,709円(月額)
- 年額は4,709円×12ヵ月=56,508円
よって、令和元年10月からの年金総額は689,907円+年金生活者支援給付金56,508円=746,415円(月額62,201円)となる。なお、給付金は年金口座に一緒に振り込みますが、別々の名称で振り込まれる。
※追記
前年の公的年金等収入+前年所得が779,300円を超えた場合はどうなるのかとうと、879,300円までは補足的な給付金が支給される。例えば、事例の女性の前年の年金収入+前年所得が84万円になったとします。となると以下の計算で給付金を支給する。
- (879,300円-前年の年金と所得等84万円)÷(879,300円-779,300円)=0.393(調整率)
- 補足的年金生活者支援給付金→5,000円(基準額)÷480ヵ月×保険料納付済255ヶ月間×0.393=1,043円(月額)
補足的年金生活者支援給付金を計算する時は免除期間は含まない。前年所得などで給付金額が変わったり、停止される場合はその年の8月分から翌年7月分までの変更または停止となる。20歳前障害基礎年金が所得制限で停止される場合の期間と同じですね^^
それでは本日はこの辺で。
image by: Shutterstock.com