教師のいじめ解決の具体的な方法について、『いじめ 困った時の指導法40』(明治図書出版刊)という教師向けの書籍をお勧めしたいと思います。「いじめから子供を守ろうネットワーク」のセミナー等でもお話ししていただいた千葉孝司先生(公立中学校教諭)のご著書です。
「まえがき」で、千葉先生は、読者である先生方に問いかけます。
あなたはいじめ対応に自信がありますか。いじめ対応は難しいものです。隠そうとするものを見つけ出し、被害者の心に寄り添い安心させ、加害者に行動を変容させ、傍観者には、大人に知らせることができるようにさせ、保護者には、被害者側・加害者側双方に納得してもらう必要があります。どれか一つでも大変な難問です。それを同時に行わなければなりません。命にかかわる場合もあります。…(後略)
このように、いじめ対応の難しさを述べたうえで、同書は、
- いじめの事実を加害者が認めない場合
- いじめが解消しても体調不良や不登校が続く場合
- (被害者が)死にたいと口にする場合
- 加害者の保護者が指導内容に抗議してきた場合
等、教師が、いじめ加害者、被害者、傍観者、保護者等との対応で困った場面を、40例想定して、なぜそうなのか、どうすれば相手の心に寄り添えるのか、相手を安心させられるのか、相手に納得してもらえるのか、教師としてどう支援していくのか等を解説し、さらに、具体的に事例ごとに、教師と、加害者、被害者、保護者等との会話例を、良い例、悪い例で示しています。
また、子供がいじめを訴えた場合の教師の不適切な対応も取り上げています。
- (教師に)話をきちんと聞いてもらえない場合
- 被害者の立場を考えずに、教師が加害者にすぐ伝えてしまう場合
- (被害者が教師から)「自分にも悪いところがあるのでは」と言われる場合
等の事例を挙げて、教師の「いじめに対しての感度の低さ」、「人権意識の低さ」、「(加害者の報復等への)想像力の不足」、「いじめについての根本的な認識の不足」等を指摘しています。教師は、生徒の立場で考える「被害者ファースト」の姿勢で、「何があってもいじめは許さない」という意志を示すこと等が述べられています。
「まえがき」の最後で、著者は、
本書で示すアイデアを、教師は子どもにとって最後の砦なんだという気概をもって実践していただけることを願っています。
と結んでいます。教師に向けた書籍ですが、保護者にとっても、子供たちのいじめの実態がよくわかり、さらには、「先生、このようにしていただきたいのです」と、学校への要望としてお伝えできるなど、とても役立つ書籍ではないかと思います。
いじめの早期解決に向けて、ご相談を受けています。お子さんのことでご心配なことがありましたら、ご遠慮なくご相談ください。
いじめから子供を守ろう ネットワーク
松井 妙子
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