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喜ぶのは誰?「表現の不自由展」再開で左派が既成事実化したい事

8月1日にスタートするもその展示内容が大きな議論となり、わずか3日で中止となった「表現の不自由展・その後」。紆余曲折を経て今月8日に再開されましたが、これに否定的な視線を向けるのは、台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんはメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』でその理由を明らかにするとともに、再開により何を既成事実化したいのか、そして誰が喜ぶのかを熟考すべきとしています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年10月8日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

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SNS拡散対策・憲法で論陣 貫いた不自由展再開の意欲

慰安婦像や昭和天皇の写真を焼き足で踏みにじる映像などが批判を呼び、開催3日目で中止が決まった「表現の不自由展・その後が8日午後に全面的に再開されました。

愛知県の大村知事は、1回の入場者を抽選で選ばれた30人に限定し、動画撮影はNG、手荷物は預け、入場者は事前に「教育プログラム」を受ける必要があり、SNSなどでの展示内容の拡散防止も「誓約書」を書くことが求められるそうです。

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ずいぶん条件がついていて、公共機関が行う展覧会なのに、むしろ「観覧の自由意見開陳の自由を制限しているのではないかという疑念がわきます。

とくに気になるのは、なぜ教育プログラムを受ける必要があるのか、ということです。私は国民党による教育という名の「洗脳」を受けてきた経験がありますから、本来必要のない場に「教育プログラム」などというものが持ち込まれることに、非常に胡散臭いものを感じます。

主催者側からの一方的な「教育」ですから、批判的な内容であるはずもありません。単に制作意図の説明をレクチャーするなら、「趣旨説明」といえばいいだけで、「教育」などと表現する必要はないでしょう。教育とは「教え育む」という上から目線の言葉です。

中国でもいまウイグル人に「再教育」が行われていますが、言うまでもなく、これも洗脳です。

朝日新聞など、表現の不自由展の中止に批判的だった左翼メディアの記事を見ていると、どうもそうした「上から目線的な物言いがどうも気になります。たとえば、冒頭の記事では、

8月だけで1万件を超えたという『電凸(とつ)』と呼ばれる電話などでの攻撃対策は、県は対応を専用回線2本に限定。自動的に通話を10分間で終了させるシステムを導入したほか、専用回線以外に来た抗議電話は1分以内に切る方針。

とあります。この1万件の電話は、すべてが脅迫的な内容だったということでしょうか。義憤にかられた市民からの抗議の電話はこのなかに含まれていないのでしょうか?記事にそのあたりの説明はなく、展覧会への抗議や批判の電話まで攻撃扱いしているようにも見えます。

再開を望む側が「教育プログラム」「SNS拡散禁止」「動画撮影禁止」「攻撃対策」という言動をしているところからは、とにかく「批判・反論は許さないという、「表現の不自由」しか感じられません。

もちろん暴力的な脅迫によって展覧会が中止になるということは、あってはならないことです。しかし、公金を使う展覧会であれば、「内容が公的展示にそぐわない」という批判があるのは当然で、行政側もそれを理由に中止することも、何らおかしいことではありません。

今回、河村市長は中止を求め、また、文化庁が補助金を不交付にしたことを「表現の自由への攻撃」「事前検閲につながる」などという批判がありますが、まったく的はずれです。国民や市民の税金が使われることに対して、内容をよく吟味するのは当然のことです。いつもマスコミや市民団体が政治や行政に対して求めていることでしょう。しかも今回は、事前に問題になりそうな展示内容は意図的に隠されていたとも報じられています。

私的な開催までも禁じられたわけではなく、公的な機関、公金を利用した展示としてはふさわしくないというだけですから、表現の自由が侵害されたわけではないことは、誰にでもわかります。

また、もしも今回の展示が、戦前の軍国主義を賛美するような内容だった場合でも、再開支持派は「表現の自由」を守れと言ったでしょうか?むしろ率先して中止を訴えたでしょう。

「表現の自由」を標榜する日本のマスメディアは、はっきりいって、ダブルスタンダードです。李登輝元総統が母校の京都大学を訪問しようとした際中国の大阪大使館や京都大学が妨害しましたが、これを問題視する日本のメディアはほとんどありませんでした。私も母校の早稲田大学での講演を妨害され阻止されたことがありましたが、それを問題視するメディアはありませんでした。日本のとくに左派メディアは自分の主張に合わない言論への弾圧は看過して容認するのです。

慰安婦像が公金で「芸術品認定」されれば、ソウルや釜山の日本大使館、総領事館の前に設置されている慰安婦像も「芸術品を公道に置いているだけだ」という言い訳が使われてしまう可能性があります。

いうまでもありませんが、在外公館に対して、「安寧の妨害または威厳の侵害」を働く行為はウィーン条約違反であり、日本政府はこれを根拠としてソウルや釜山の慰安婦像撤去を求めています。

しかし、愛知県が公金によって慰安婦像を芸術品と認定することとによって、ソウルや釜山の慰安婦像、さらには徴用工の像に対して「これは芸術品であり威厳の侵害にはあたらない、それは日本の公的機関も認めている」という方便を与えてしまう恐れがあります。そういうことを、大村知事は考えていないのでしょうか。

私は展示物を見ていませんが、国民統合の象徴である天皇の写真を焼いて足で踏みつけるという映像が本当ならば、あまりにも異常な内容でしょう。

いま、香港や台湾では「表現の自由」を隠れ蓑とした、中国共産党によるプロパガンダが大問題になっています。

とくに台湾では、中国の動画サイトが進出し、台湾のウェブサイトを偽装してフェイクニュースを流して台湾国内を撹乱し巧みに世論操作を行う動きが活発化しています。テンセントやアリババといった中国企業傘下の動画サイトも台湾への進出を狙っており、台湾当局は「言論の自由が破壊される可能性がある」と警戒を強めています。

中国動画サイトが相次ぎ進出、「言論の自由の破壊の可能性」台湾政界が警戒

動画に書き込まれるコメントも、中国寄りのものばかり。台湾では使わない表現方法から中国人の書き込みであることが発覚しています。民主主義国家の台湾は表現の自由がありますが、その表現の自由を中国共産党は逆手にとって、フェイクニュースを台湾に次々と流しているわけです。そういう点では、ありもしない「強制連行」の象徴である「慰安婦像」を、表現の自由を理由に日本で展示するのと、同じようなものです。

こうした中国からのフェイクニュースが、台湾人による台湾人のための言論を封じミスリードすることになりかねないという点で、「言論の自由が破壊される」と台湾政界は危機感を強めているのです。

「表現の不自由展」は強制連行された慰安婦という「ウソをつく自由」と日本の天皇を「侮辱する自由」を「表現の自由」だと言い募っているわけです。

目下の香港の反中デモも、台湾のフェイクニュースをめぐる攻防も、まさしく「ウソの表現の自由との戦いなのです。物事の真偽よりも「表現の自由」ばかりが強調され、結局、フェイクニュースによって「言論の自由」が毀損されている。そのことを日本人はあまり理解していません。

表現の自由は重要ですが、これを悪用して政治的プロパガンダやフェイクニュースで国内を撹乱する動きには警戒しなくてはなりません。そうした自覚を国民がしっかり持つことが必要なのです。「表現の不自由展」再開も、そうした観点から見れば、何を既成事実化したいのかそれによって誰が喜ぶのかが見えてきます。

image by: Yeongsik Im / Shutterstock.com

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年10月8日号の一部抜粋です。

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