3.着物の紐と帯
着物を着付ける時には、数多くの紐を使う。肌襦袢を紐で結び、長襦袢を紐で結ぶ。女性はおはしょりを固定させるために紐を腰に結び。更にその上から紐を結ぶ。その上に帯を締めて、お太鼓を固定するために帯揚げ、帯締めを使う。私は紐の多さは着付けのマイナス点であると考えていたが、ヒモトレを経験して考えが変わった。
日本人は、紐で体を結ぶことで、体の安定性を運動性を確保していたのではないか。紐を結ぶ位置にも意味があり、体が求めている場所にこそ紐を締めていたのではないか。まず、紐があり、そこから、着物の着付けが定まったのではないか、という仮説さえ成立しそうな気がする。もちろん、硬くて幅の広い帯も腰を安定させる機能がある。日本人は着物の前に紐と帯の文化があった。紐と帯を活かす形態がきものだったのではないだろうか。
4.紐とゴムの違い
紐を結ぶのは面倒だ。そこで使われるのが、ボタン、ファスナー、ゴム等である。洋服では普通に使われるパーツだが、着物ではない。着物は、身体にストレスを与えない服である。この意見には反論も多いと思う。きものは疲れる。きものは窮屈だという体験に基づいたものだ。
しかし、本来の着物の着付けとは体を締めつけるものではない。ゆったりと体を包むものなのだ。従って、ボタンやフェスナーなどの固いものを使わない。固いモノが肌に感じるだけでもストレスになるからだ。ゴムも着物には合わない。弱くても締めつけ続けることで、体にストレスを与えるからだ。
実は、下着のゴムの弊害は広く知られている。フランスの医学者レイリーは、「中枢であれ末梢であれ自律神経のどこかに、強い弱いにかかわらず、持続的な刺激を与え続けると病的な自律神経反射をおこす」と提唱しており、ゴム紐のついた衣類で、体を絶えず刺激していると、血管や内臓の働きなどに変化が生じ、さまざまな病気を招くとされているのだ。
これはソックスにも言える。若い時には何ともなかったソックスのゴムが加齢と共に耐えられなくなってくる。ソックスを足袋に代えると、どこも痒くならず、とても快適である。
5.和食の次は和服を世界に!
和食が世界的ブームになったが、一方で魚の漁獲量が激増し、魚の価格が高騰している。世界中の人に美味しい和食を食べてもらいたいと思う一方で、日本だけで美味しい和食を独占しておきたかったなどとも思う。和食は健康に良いから世界に広がった。それなら、健康に良い衣服である和服が世界に広まってもいい。
和服は徹底的に体にストレスを与えない衣服である。だから、シルクが最も適している。シルクの柔らかさは体にストレスを与えない。また、シルクという素材はサナギを守る繭から作られており、抗酸化機能を持っている。
また、ボタンもファスナーもゴムも使わず、紐と帯だけで着付ける。しかも、その紐や帯を締める場所は、体にストレスを与えるのではなく、体を調整する場所である。健康に良い和服というコンセプトで世界に訴求できないだろうか。
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