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死亡者が貰えなかった最後の年金はいったい誰のものになるのか

老齢の年金は、死亡した月の年金分までが支払われますが、その最後の年金を貰うためには請求が必要となることをご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者のhirokiさんが、死亡月の年金は誰が受け取ることになるか、という疑問について詳しく紹介しています。

死亡した年金受給者が受け取れなかった最後の年金は誰が貰うお金なのか(未支給年金)

老齢の年金は一旦受給が始まると、受給権が発生した月の翌月から死亡した月分まで支払われます。受給権が発生した月というのはほとんどは、支給開始年齢に到達した月となります。老齢の年金請求が遅れても基本的には支給開始年齢まで遡って支給される(時効の5年を超えると貰えない年金が出てくる)。遺族年金や障害年金も他に支払われる事が無くなる条件が無い限りは、死亡した月分まで支払われます。

ところで、年金は前2ヶ月分を偶数月の15日に支払っています。たとえば、12月15日支払い(令和元年は15日が日曜だから12月13日支払い)の場合は前2ヶ月分である10月分と11月分が支払われるという事です。でも年金は死亡月分まで支払われると言いましたが、じゃあ12月中に死亡したら12月分の1ヵ月分の年金はどうなるの??って話ですよね。12月分の年金は2月15日に1月分と一緒に2ヶ月分支払うんなら、2月まで死亡者の銀行口座に振り込まれるまで待つのか。

もちろんそうはならないです^^;そもそも亡くなられたら、その死亡者の銀行口座は凍結されてしまいますので振り込みはできなくなる。じゃあどうするか。12月分の年金は貰い損をするのか。

死亡者にとっては申し訳ないですが…貰い損になります。でも死亡者が貰えなかったその1ヵ月分の年金を一定の遺族が請求する事はできます。本来は本人の年金を他の人の口座に振り込む事はできないですが、この請求により請求者の口座に振り込んでもらえる。この死亡者が貰えなかった最後の年金を未支給年金といいます。死亡した月分まで年金が発生するから、必ず未支給年金は発生してしまう。

死亡した日以降の年金はすべて未支給年金扱いとなり、遺族が請求しなければもらえない年金となります。この未支給年金を請求できる遺族の範囲は年金法で決まっていて、死亡当時生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、3親等以内の親族の順で一番順位が高い人が請求する事ができます。

生計を同じくしていたというのは、簡単に言えば住民票が一緒だったとかそういう意味。別居でも定期的な訪問や連絡があったとか、そういう関りがあった場合なども含みます。たとえば、死亡者と一緒に住んでたのが50歳の子と80歳の祖父母であるならば、遺族の順位としては子が上なので子の名で請求し、子が指定した銀行口座に未支給年金を振り込む。なお、「子」というのはよく18歳年度末未満の子である事という条件がありますが、未支給年金請求では年齢は関係ない。

簡単な例として、年金月額が20万円支給されてるとします。先ほどの12月死亡の人だったら、12月13日(令和元年)に10月分と11月分の2ヶ月分40万円振り込まれ、12月分の20万円が宙ぶらりんになってしまう。この12月分の年金20万円を請求者の口座を指定して、振り込んでもらう。未支給年金の振り込みはおおむね3 ~4 ヵ月はかかる。

なお、ちょっと発展になりますが、12月13日振り込み前に亡くなられたら年金振込前に亡くなってるので、10月分11月分の40万円も死亡者は受け取る事ができません。たとえば、12月10日に亡くなったとすると、10月11月分も受け取らないまま亡くなっているので、この場合は10月分11月分12月分の3ヵ月分の60万円が未支給年金となります。


※ 注意

未支給年金は一時所得となり、50万円を超える場合は確定申告が必要になってくるので税務署に相談しましょう。


ただ、振り込み直前に亡くなったりすると、口座の凍結が間に合わずに年金の振り込みがそのまま死亡者の口座に振り込まれたりします。

死亡後の年金はすべて未支給年金であり、遺族が請求しなければ貰ってはいけない年金です。だけどもう死亡者の口座に正常に振り込まれてるなら、その分に関しては請求要らないんじゃ?って思われますよね。

でももちろん正常に振り込まれていても、請求しないと請求者のお金にはならない。時効の5年以内の請求をしないなら年金機構に返金しなければならず、国庫に返る。なので年金受給者が死亡した場合は、市役所に死亡手続きでもいいですが、年金事務所や年金ダイヤルにすぐに電話連絡し、年金振り込みを一旦止める処理をする(死亡保留という)。

年金を止める事がなぜ必要かというと、死亡後もそのまま払い続けると年金の払い過ぎになってしまい、未支給年金が支給されるどころか逆に払われすぎた年金を返してくださいとなるから。だから、年金受給者が死亡した場合は支給されていた年金をまず停止しなければならない。

ただ、年金には振り込みが確定する締め日があって、たとえば12月振り込みが確定するのは11月20日締め日ごろとなる。締め日に翌月の年金振り込みが確定してしまう。締め日以降に死亡連絡を受けても、12月13日の年金振込が止められないので、口座を解約したり、凍結されるなどしなければ年金が振り込まれてしまう。

ところで何年か前にニュースになりましたけど死亡した親の年金が止まるのが困るからって、子が親の死亡を隠して親の年金を貰い続けたという詐欺事件がありましたが、悪質な犯罪となります^^;もちろん不正に受給し続けた年金は返してもらい、罪も償う事になる。

それでは今日はこの辺で。

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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