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米で加速する「断韓」の動き。韓国GSOMIA継続も深まる日米との溝

期限直前になって条件付きでGSOMIAの継続を発表した韓国。アメリカからの強い継続要求を呑んだ形ですが、ここに至るまでに広がった日米両国と韓国の溝は、北東アジアの情勢に大きな影響を与えそうです。メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』の著者で国際交渉人の島田久仁彦さんは、独自の情報網から現在の朝鮮半島情勢を分析。北朝鮮のゆさぶりやその背後で存在感を見せてきたロシアと中国の動きに加え、南北両国でのクーデターの噂についても見解を示しています。

Hotspotと化した朝鮮半島:GSOMIA継続でも消えない消滅の懸念

11月23日午前0時の日韓GSOMIA破棄期限の直前、急転直下、韓国大統領府はGSOMIAの継続を発表しました。いつも通り、“国際情勢のために”とか“米韓同盟のために”といった自画自賛的な内容が並び、また日本が韓国に対して発動した輸出管理や徴用工問題を巡る対応を非難するという点は変わりませんでしたが、一応表向きには混乱は免れたのではないかとの論調が目立ちました。

日本はその判断を『韓国が常識的な範囲に留まった』と評価し、米国も『韓国の判断を歓迎する』と発表はしましたが、日米韓の間にできてしまった決定的な溝は埋まりそうにはないと思われます。

GSOMIA騒ぎが一段落したかと思われた直後、日韓の言い分の違いが明らかになり、まだまだ混乱は収まっていない気配です。日本が韓国に突き付けた輸出管理について、日本は緩める意思はないようですし、韓国も「GSOMIAはいつでも破棄できる」と息巻いています。

トランプ政権は一応韓国政府の判断を歓迎していますが、実際には韓国政府の対応には激怒しており、在韓米軍の縮小、そして完全撤退までに言及するなど、米韓関係は崩壊していると言っても過言ではないでしょう。聞くところによると、今回の騒動へのアメリカからの不快感と怒りは、在韓米軍に対する金銭的な負担額を2019年の5倍ほどの額に増加するようにアメリカ側が強く迫ったということからも、フラストレーションの大きさが窺えます。

また、その会合も開始早々物別れに終わり、アメリカの特使が激怒して会議をやめてしまうなど、GSOMIAの運命がどうであれ、もうアメリカが韓国に安全保障上の信頼を置くことはなくなったように思われます。

実際に米議会の動きは、GSOMIAの継続については良しとしつつも、これを機に米韓関係の根本的な見直しが必要との意見が多数を占め、これまでにないほど断韓の動きが加速しています。そして意外なことに、これまでアジア重視の姿勢を貫くイメージだった議会民主党の側に“韓国切り”の意見が目立つようになってきています。

調べたところ、この背後には、トランプ政権や共和党以上に、中国に対する警戒心が存在し、すでに韓国はRed Teamに入ったと判断している民主党議員が多く、18名に膨れ上がった民主党の大統領候補たちもこぞって中国への警戒と、朝鮮半島に及ぶ“赤い魔の手”への懸念を挙げているようです。

そんな動きを察知してか、ここにきて北朝鮮が賭けに出ました。米韓に対して揺さぶりをかけるつもりか、日米韓の同盟の溝を顕在化せるつもりか、11月28日に日本のEEZの外側に向けてミサイル発射実験を強行しました。

今回のミサイル発射の情報は韓国国防部から“GSOMIAに基づいて”日本にもたらされたとのことですが、今回のミサイル(飛翔体)発射については、日米ともに大騒ぎはせず、北朝鮮と、そして韓国の出方を見ているようです。

発射されたミサイルと思われる物体は、いったい何だったのか?また短距離弾道ミサイルだったのか?それとも最近流行りのSLBM(潜水艦から発射されるもの)だったのか?

今、日米ともに分析を進めていますが、今回何が発射されたのかという“答え”次第では、トランプ大統領の堪忍袋の緒が切れる事態を招きかねません。長距離弾道ミサイルなら問答無用ですが、もしその他の物体であっても、発射の背後に何者かの影響の強まりが存在するのであれば、話は別になるでしょう。

そこで気になる動きが北朝鮮とロシアとの間で最近行われた安全保障協議です。情報筋によると、「米からの攻撃を含む朝鮮半島有事の際にはロシアはどのような形で北朝鮮を助けるのか」という内容について細かく詰めたと伝えられてきました。

それに加えて、そこ(ロシアと北朝鮮の協議の場)には参加していませんが、どうもロシアは事前に中国政府とは詳細について詰めており、北朝鮮対応については、中国とは対立ではなく、混乱に乗じた協調を選択したようです。

つまり、これまでしばらくはつかず離れずの姿勢か、時には突き放すような対応を北朝鮮にとってきた中ロが、ここにきて、ガッツリ北朝鮮の後ろ盾につく政策判断をしたとみることができるかと思います。

その“中ロ協議”をベースに、GSOMIA継続で日米韓同盟に残留したように思われている韓国に、再度、北朝鮮カードとともに、朝鮮半島統一というカードを散らつかせて、強力にRed Teamへの参画を働きかけているようです。

そして、文政権内の対日米強硬派の中には、この“お誘い”になびきそうな強い動きがあるようです。日米政府ともに、実際には、韓国のRed Team化の可能性は想定内になっており、韓国無き北東アジア情勢の再編も、両国内で具体的な想定に入っているようです。

ここまでは韓国が直面する外交面での逆風についてお話ししましたが、どうも韓国内(文政権)も、独裁の極みと見られている北朝鮮の金正恩体制も、揺らぎを見せてきているとの情報があります。それは、同じく朝鮮半島情勢と呼ぶことができますが、どうも南北朝鮮両国内でクーデターの兆候が見られるとの情報が入ってきています。

これについて詳細はまだ分かりませんが、文政権の行き過ぎた反日により、韓国経済が瀕死の状態に陥っていることに韓国民が怒り狂い、文大統領とその側近たちを引きずり下ろす算段をしているとのことです。

GSOMIA破棄が世論の大半を占めていたとの数値が出ていますが、それに反する決定を下したことに、自分たちの判断をないがしろにされた!と怒る国民や、「何かアメリカか日本と取引したのではないか」との反政権勢力からの勘繰りがマッチして文大統領おろしや青瓦台の幹部や政権の閣僚への攻撃が日に日に増しており、聞くところによると、「これまでに例を見ないほどのレベル」とのこと。

とはいえ、クーデターの兆候が噂される段階で、すでに実行の可能性は低いと思うのが常なのですが、レーダー照射問題以降、軍部は大統領府から蔑ろにされているとの不満を募らせているようですし、対日・対米で矢面に立ってきた外交部長官も、自分を蚊帳の外に置こうとする青瓦台の姿勢に、嫌気がさしており、反撃の機会をうかがっているとのこと(そして、面白いことに彼女を次の大統領候補に担ぎ出そうとの動きもあると聞いています)ですので、これまで以上に現実味を帯びてきたようにも思えます。

この話題で興味深いのは、金正恩体制に対するクーデターの噂です。表に出た段階で徹底的に情報源を探し出し、見せしめのように残忍に処罰することで騒ぎを収めようとするでしょうが、先代以上に対米強硬路線を強める姿勢を取ったかと思えば、突然、トランプ大統領との個人的な友情を讃えて、アメリカとの融和の雰囲気を醸し出すという、北朝鮮内部でも予想不可能な動きの変化に、軍部も党も振り回され、不条理に粛清される状況に、統制の乱れが目立ちだしたとのうわさも出てきました。

そして、より気になるのが、何ら成果は期待されないにもかかわらず、最近になって、やたら北朝鮮内部で金正恩氏とトランプ大統領の再会談や、北京や極東ロシアへの訪問、そして実現可能性ゼロとまでこき下ろされたソウル訪問の“可能性”が提案されているようです。

単に外交的な動きと見ることも可能ですが、これまで安易な外国訪問を控えるように進言してきた周辺が、気持ち悪いくらい、金正恩氏を平壌から引きはがそうとしているようにも思われます。軍とお付きの数が国内よりは少なくなりがちな国外で、何らかの計画が練られているのかもしれません。かりにクーデターが実行されてしまうと、確実に体制の存続基盤は弱体化し、結果的に北朝鮮の存在もなくなる危険性があります。

「GSOMIAがなくなることで、韓国は中国とロシア、そして北朝鮮を利するつもりか!」そう、エスパー国防長官は文大統領を一喝したらしいと聞いていますが、今回のGSOMIAのキャンセル騒ぎは、もしかしたら、韓国の文大統領にとっては、強烈なブローとなり、辞任どころか、クーデターによって排除される道を作ったかもしれませんし、“利する”はずだった北朝鮮も、このまま対米・対日威嚇や瀬戸際外交を継続し、軍部や国民の生活を今以上に苦境に陥れるような事態になれば、金王朝が終焉し、北朝鮮のraison d’etreも無くなり、大きな力の空白が今後、朝鮮半島に生まれる可能性が予見されるようになってきました。

もし、このような恐怖のシナリオが現実化したら、どのような安全保障環境が我が国日本を取り巻くのでしょうか。今、北東アジア、そして日本を取り巻く安全保障環境は、おそらく大きな転換期に来ているものと思われます。

島田久仁彦(国際交渉人)この著者の記事一覧

世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

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