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ファッション界の人気コンサルが5年放置のYouTubeを再開した訳

行き詰まった日本の繊維アパレル業界への提言を続けるファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さん。長年糧を得てきた業界の凋落は、そのまま本人の生活にも影が差すものとなっています。坂口さんは、自身のメルマガ『j-fashion journal』で、そんな環境の中、さまざまな現代的手法を用いて試行錯誤してきた体験を振り返ります。そして、いままた5年前にチャレンジし放置していたYouTubeを利用した「教育動画コンテンツ」に活路を見い出しているようです。

YouTubeを再開した理由

1.5年前のYouTube実験

小学生が憧れる職業「ユーチューバー」。YouTubeに動画をアップして、視聴者数を増やして広告収入を得る職業だ。人気のあるユーチューバーは月1億以上も稼ぐという。

しかし、視聴率を稼ぐには、刺激的なコンテンツを連続して投稿しなければならない。その企画力と実行力、本人のキャラクターなどが必要になる。

私も5年前に初めてYouTubeに動画を投稿した。とりあえずどんなものか、実験したのだ。ビデオカメラを三脚に付けて撮影し、動画のデータをパソコンに送り、編集ソフトで切り貼りし、表紙の画像を作り、投稿した。意外に面倒だなと思った。

私が投稿したのは、学校の講義のような長い動画だった。ひいき目に見ても面白いものではない。投稿しても別に反応はないし、自分の顔を見て、声を聞くのも苦痛だった。もっとイケメンで美声ならいいのだが、誰がこんなものを観るのか、という感じだ。

無料の動画をアップすることの意義も見いだせなかった。それでも、25本程度はアップした。その後、海外出張時などで、3分程度の風景などの動画を上げたりしていた。静止画より面白いが、それだけのことだ。

2.有料メルマガ、クラウドファンディング、オンデマンド出版

一方で私は有料メルマガも発行していた。文章を書く媒体が減少し、執筆の仕事もなくなったため、自分に課題を課すために続けてきたようなものだ。こちらも読者が増えるわけでもなく、と言って、宣伝するわけでもなかった。

それでも、たまに、まぐまぐ経由でネットニュースになったり、そこから取材を受けることもあった。有料メルマガの内容は、ブログに転載したが、こちらも別にアクセス数が伸びるわけでもなかった

それでは「書籍を作ったらどうか」と考え、クラウドファンディングとオンデマンド印刷を組み合わせて、プロジェクトを立ち上げ、一応プロジェクトは設立した。書籍を作り、発行した。読んでいただいた方からは「面白かった」と言われたが、思ったほどに発展することはなかった

常に、実験を繰り返してきたが、何の成果も上げていなかったと言えよう。

3.教育を軸に活路を開こう

ここで自分を振り返ることにした。世間は自分をどのように見ているのだろうか。

多分、実務家としては見ていない。実際には現在もコンサルタントの仕事はしており、クライアント企業は存在する。それなりに貢献していると思うが、今後クライアント企業が増えるとは思えない。実際、同業者も減っているし、スポットコンサルサービスなども始まって、固定的な契約をする必然性は減っている。困った時に、ネットにつなげば、何らかの回答は返ってくるだろう。

加えて、産業構造が変化しており、繊維アパレル関連企業は構造的な不振に喘いでいる。とてもではないが、コンサルタントにお金を使う余裕はないのだ。通常業務では、ICT分野の課題が目立っており、オフラインの課題は諦めているようにも見える。

結局、残るのは、実績とキャリア、ブログ上の数百本の小論文ということになる。これが生きるのは教育分野だ。実は、私は26歳からファッション専門学校の講師、大学の非常勤講師などをしてきた。教育分野の仕事が最も長いのだ。

今から、普通の非常勤講師になっても意味がない。どうせやるなら、教育分野とビジネス分野のコラボレーションがやりたいと考えた。更に、コンサルティングという仕事も半分は経営者や担当者の教育であることに気がついた。これから取り組むべき課題は、教育である。そこから活路が開けるのではないか。

4.スマホで完結できる教育を目指す

教育を仕事にするといっても、大きな学校を考えているわけではない。小さい塾や勉強会でもいいのだ。但し、徹底的にネットを活用した教育に取り組んでみたい。できれば、スマホで完結する教育を考えたいと思う。そうすれば、現在よりも安価で充実した教育が提供できるのではないか。

製造業や流通業でこれだけコストダウンが図られているのに、教育分野だけは合理化されていない。授業も動画を活用することで、優秀な先生の講義がデータベース化できるだろう。

こんなことを考えている時に、ZOOMというオンライン会議システムに出会った。早速、実験を開始し、遠隔地の専門学校に講義を行った。更に、友人と新しい講座を計画している。ZOOMは会議の様子を録画することができる。自分一人で話せば、簡単に教材ができるのだ。それをYouTubeにアップするのも簡単だ。

久しぶりにYouTubeを見ると、年配の人達のまじめな発信も増えていた。YouTubeも新たな段階に来ているのだ。そこで、再びYouTubeへの動画アップを再開した。スマホで完結する教育の準備の意味も兼ねてのことだ。実際にカメラに向けて話してみると、それなりに独自の視点も失ってはいないようだ。ということで、再び実験の日々が続いている。

編集後記「締めの都々逸」

「何をやっても You宙ぶらりん それでも挑戦 続けてく」

時代を支配する思想が変化しています。同じ仕事でも意味が変わっています。問屋や小売店を中心にした流通システム、旧来のモノ作りの仕事を中心にキャリアを積み重ねてきた身にとって、自分はもう必要ないのではないか、という不安に直面することになります。

定年の年齢になれば、少しは経済的にも安定するのではと、淡い期待を抱いていたのですが、どうやら死ぬまで働くしかないようです。でも、安定しないからこそ、常に新しい分野に挑戦する動機にもなっているのです。そうだ、これが俺の人生なんだ、と開き直るしかありません。

image by: Shutterstock.com

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