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NASAの「パーカー」が太陽最接近。人気ブロガーがワクワク解説

2018年8月に打ち上げられたNASAの太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」が、計画通りに人工物としての太陽最接近記録を塗り替え続けています。この壮大なミッション遂行の状況を「我が事」としてワクワクしながらチェックしているのは、人気ブログ「きっこのブログ」の著者で、メルマガ『きっこのメルマガ』を発行するきっこさんです。宇宙マニアのきっこさんは、数々の探査機に自分の名前を「搭乗」させ、「宇宙旅行」を楽しんでいるようです。

きっこの宇宙旅行

日本では、JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」ばかり注目されていますが、NASAの太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」も「太陽を周回しながら徐々にコロナに接近して行く」という人類初のミッションを成功させ、12月4日付の学術誌『ネイチャー』に、最初の観測結果を報告する4本の論文が発表されました。

あたしは、俳句マニアであり競馬マニアであるとともに宇宙マニアでもあるので、「パーカー・ソーラー・プローブ」も開発段階から注目していましたし、2018年8月の打ち上げからは頻繁にNASAのホームぺージでチェックしていました。

何故かというと、この「パーカー・ソーラー・プローブ」には、あたしも乗っているからです。正確に言うと「あたしの名前」なのですが、打ち上げ前にNASAが恒例の「あなたの名前を太陽へ」という募集をしたので、あたしはさっそく応募したのです。料金は無料だし、応募者全員の名前がもれなくマイクロチップに刻まれるので、応募しなきゃ損!まるであたしの年賀状プレゼントのようじゃないですか!(笑)

無料で、こんなにワクワクする体験ができるなんて、さすがはNASAです。ちなみに、この「パーカー・ソーラー・プローブ」には、世界から約110万人の応募があり、その名前がすべてマイクロチップに刻まれました。そして、そのマイクロチップを積んだ探査機が、人類初のミッションを成功させ、人工物として最も近い位置まで太陽に近づいたのです。この「成功」の報せを聞いた時、あたしは興奮して、なんだか自分の身体まで太陽に近づいて熱くなったような気がしました。

今回のミッションを簡単に説明しますが、太陽に近づくと言っても、太陽に向かって真っすぐに飛んで行くわけではありません。そんなことをしたら一瞬で燃え尽きてしまいます。太陽の表面温度は6000℃程度ですが、太陽の大気層外縁領域であるコロナの温度は100万℃以上もあるからです。普通は熱源から離れるに従って温度が低くなるのに、太陽は真逆なのです。この謎を解明するのも、今回のミッションの重要な課題です。

ロウソクの炎は、芯の周りは600℃程度ですが、炎の先端は2倍以上の1400℃もあります。あたしは単純に「太陽もロウソクみたいなものなのかな」と思っていましたが、ぜんぜん違うようです。そして、もっと恐ろしいのは、太陽の内部です。太陽の内部はコロナの10倍以上、1000万℃以上もあるのです。ま、普通に考えたら、人類が滅びるまでに太陽の内部を探査できる技術なんて開発できるわけありませんので、これは杞憂に過ぎませんが、それでも、1000万℃なんて想像を絶する恐ろしさです。

今の人類にできることは、100万℃を超えるコロナに限界まで近づき、これまでの観測では解明できなかった太陽の謎を探るための「近距離からの観測」をすることです。今回のミッションでは、最終的には太陽表面から約600万kmのところまで接近することになっています。東京から大阪まで直線距離で約400kmなので、その1万5000倍‥‥と言っても、ぜんぜん想像できませんよね。地球の直径は約1万2700km、太陽の直径は地球の109倍なので約140万km、だから、600万kmは、ザックリと太陽4個ぶんになります。丸い太陽を想像して、同じ大きさの丸を4個並べたところまで探査機が接近するというイメージです。

ちなみに、「パーカー・ソーラー・プローブ」は乗用車ほどの大きさの探査機なので、あたしは、自分が空飛ぶ乗用車に乗って600万kmのところまで太陽に接近したという空想をしました。そんなことしたら、あたしは一瞬のうちに蒸し焼きになって蒸発してしまいますが、これは空想なので、あたしは車のエアコンをつけて快適に宇宙ドライブをしているのです。その上、おしゃれなサングラスを掛けているので、目も眩しくありません。で、あたしの一番の興味、「600万kmまで接近したら太陽はどれくらいの大きさに見えるのか?」ですが、こんなに離れているのに、視界のすべてが太陽になるほど大きいのです。

そんな太陽ですから、初めに書いたように、真っすぐに接近したらひとたまりもないので、「パーカー・ソーラー・プローブ」は、「はやぶさ2」と同じく惑星の遠心力を利用したフライバイ(スイングバイ)による楕円軌道で、太陽に接近して行きます。フライバイで太陽に接近して、太陽の近くをかすめるように飛びながら観測して、そのまま一度、戻って来ます。そして、次のフライバイで、前回より少しだけ太陽に接近したコースを飛びながら観測します。7年間のミッションで、このフライバイを24回行ない、最終的には太陽表面から約600万kmのところをかすめ飛びながら観測するという計画なのです。

2018年8月に打ち上げられた「パーカー・ソーラー・プローブ」は、3カ月後の11月に最初のフライバイを成功させました。そして、これまでに計3回のフライバイによる太陽への接近を成功させ、数多くの成果があがったので、今回、第1回目の観測結果が報告されたのです。ですから、ミッションはまだまだ続きますし、太陽への接近距離もフライバイのたびにジワジワと近づいて行くため、これからも目が離せないのです。

ここまで前フリをしたのですから、今回の報告内容を紹介するのが筋なのですが、あまりにも専門的で、前段階から細かく説明しないと分かりにくいことばかりなのです。たとえば、コロナが高温になる原因として、これまでは「太陽磁場の振動がコロナの加熱を引き起こしている」と考えられて来ました。しかし、今回の接近観測によって届いたデータには、これまでの予測を遥かに上回る強力な「はぐれ磁気波」が観測されていたのです。『ドラクエ』をやったことのない人には分からない喩えで申し訳ありませんが、「弱いスライムしかいない場所だと思って行ってみたら、はぐれメタルがあちこちにいた」という感じだったのです。

この「はぐれ磁気波」の攻撃力はラスボス並みで、一撃で磁場の向きを逆転させるほど強力なので、コロナを加熱させるどころか、この「はぐれ磁気波」自体がコロナのエネルギー源になっていた可能性まで浮上したのです。つまり、今後の観測と研究によっては、従来の考えをすべてリセットして、新たな理論を構築しなくてはならなくなったのです…という感じなので、とても「前口上」のスペースですべてを紹介することはできません。どうせ取り上げるなら、もっと徹底的に、もっとディープに書きまくりたいので、詳しい内容は、時期を見て「トピック」で取り上げたいと思います。「磁気」だけに(笑)

そんなこんなで、あたしの名前も乗っている「パーカー・ソーラー・プローブ」は、これからも太陽の謎を解くためにミッションを続けて行きますが、実は、あたしはすでに火星にも降り立っているのです。「パーカー・ソーラー・プローブ」の打ち上げの3カ月前、2018年5月に打ち上げられ、11月27日に火星への着陸に成功した火星探査機「インサイト」にも、世界から応募された200万人の1人として、あたしの名前がマイクロチップに刻まれているのです。

さらには、来年2020年7月の打ち上げを目指して開発が進められている新しい火星探査車「マーズ2020」にも、あたしの名前が乗るのです。「火星探査機」じゃありませんよ。「火星探査『車』」ですよ。現在、火星では、2012年から活動している「キュリオシティ」という火星探査車が走り回っていますが、そろそろ新車に買い替える時期が来たのです。あたしの名前が乗った探査車が火星を走り回るなんて、想像しただけでワクワクが止まりません!

その上、「マーズ2020」の着陸地点は、火星の「ジェゼロクレーター」なのです!「ジェゼロ」とはスラブ系言語で「湖」のことで、ここは40億年前には湖だったのです!何でこんなに興奮しているかと言うと、「マーズ2020」のミッションの1つが「火星のサンプル採取」だからです。「マーズ2020」は、ここで火星の土壌のサンプルを採取して小型カプセルに入れます。そして、NASAに後続のミッションの予算が降りれば、そのカプセルをロケットに乗せて地球へ運んで来るのです。

つまり、人類が初めて手にする「火星のサンプル」は、この「かつては湖の底だった場所の土壌」である可能性が濃厚なのです。そして、それを掘ってカプセルに入れるのは、あたしの名前が乗っている探査車ということになるのです!これって、ワクワクすると思いませんか?ちなみに「マーズ2020」は、予定通りに2020年7月に打ち上げられれば、2021年2月に「ジェゼロクレーター」に到着します。

あたしは、「はやぶさ」と「はやぶさ2」が小惑星に打ち込むターゲットマーカにも署名しているので、あたしの名前は、これまでに、小惑星イトカワ、小惑星リュウグウ、そして火星に降り立っています。そして、今回は「太陽に大接近」したのです。次はどんなミッションが実現して、どんな惑星に行くことができるか、あたしの宇宙旅行はまだまだ続きます♪

image by: Shutterstock.com

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