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宮城の水道3事業、運営権売却へ。危惧される水質悪化と料金高騰

宮城県は17日、宮城県の水道事業運営権を民間企業に売却する「コンセッション方式」を導入する条例改正案を賛成多数で可決したと産経新聞日経新聞などが報じた。上水道、下水道、工業用水の3事業を一括で売却するのは、全国初。2022年4月から導入する予定だという。


「コンセッション方式」とは

利用料金の徴収を行なう公共施設について、運営権のみを民間事業者に設定する方式のこと。施設の所有権は公共主体が有する。「コンセッション方式」を導入することで、安定的で自由度の高い運営が可能になり、結果的にニーズを反映した質の高いサービスが提供可能になる。

厳しさを増す自治体の水道運営

今回運営権を売却する上水道、下水道、工業用水の3事業は、現在は県が運営している。上水道は仙台市など県内25市町村に水道用水を卸売りし、下水道は26市町村を対象に市町村から流れてきた下水を処理。工業用水は68社に供給しているが、水道設備の老朽化や人口現状などで、自治体の水道運営は厳しさを増していた。村井嘉浩知事は11月の県議会定例会の本会議で、人口減少が急速に進むことが予想されることについて触れ、「民間のノウハウを生かすことにより、将来の県民負担の軽減につながる」と説明した。

水道料金の引き上げ幅を抑える狙い

県によると、この方式で20年間運営した場合、総事業費は3314億円になるが、コンセッション方式を導入すると247億円を削減できるという。20年後に2割増えると予想される水道料金の引き上げ幅を、1割程度に抑える狙いだ。

水道料金高騰と、水質の悪化

読売新聞は、1980年代から水道事業に「コンセッション方式」を導入しているフランスを例に、水道民営化により考えられるリスクを発表している。フランスは、上水道の30%、下水道の24%を民間事業者が経営しているが、民間企業参入後は水道料金が高騰し、水質が悪化したという。また、資金の90%近くを公的機関が拠出しているため、当時目指していた自治体の財政負担は減っていなかった。

不透明な価格設定

フランスでは、民間業者を監督する専門機関はなく、水増し請求や安全管理の手抜きの温床になっていた。実際に、経済的に正当化できる水準を25〜30%も上回る料金が設定されていたと、パリ市が02年に行なった監査で明らかになっている。これらの問題から不満が高まり、2000年から2014年にかけて、49の自治体で「再公営化」された。

成功例は? 

一方で「コンセッション方式」が成功している例もある。自治体と民間が資金を出し合い、水道管理会社を設立したドイツである。事業者の裁量は大きくないが、自治体との情報格差がなくなるため、監査などが実質的なものになり、不透明な動きはなくなる。また、「ベンチマーキング」という、事業者のパフォーマンスを他社と比較する制度も成功要因のひとつだという。ドイツは住民の関心も高く、非効率的で質の低いサービスは存続できなくなる仕組みができあがっていたとのことだ。

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source:産経新聞日経新聞読売新聞内閣府

image by:Shutterstock

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