放たれないアベノミクス第三の矢。永遠に日本が改革されない訳

 

増田氏に日本郵政グループの改革はできるのか?

次の日本郵政の問題ですが、増田寛也氏の社長就任というのは恐れ入りました。増田氏といえば、穏健保守で微妙に小沢系だった時期もあり、その一方でそもそもは建設官僚だった人です。近年は消滅自治体の問題で、人口減ディストピア評論の先駆けのようなこともしていました。ということは、抜擢人事というよりも、世論にそれなりに人気のある人物を投入して、「難局の交通整理」をさせようという官邸の意図があるのではと考えられます。

日本郵政については、2つ大きな疑惑があります。まず、グループ全体として、経営が大丈夫なのかという問題です。「かんぽ生命」の不適切営業というのは、郵便局の経営が危ない中で保険販売の収益に期待したあまりの暴走という疑惑と、民営化以前の「簡易保険」契約が収益を足を引っ張っているという疑惑です。

もしもその両者が絡み合って、今回のような大量の不適切契約に発展しているのであれば、その上でこの不適切契約を元に戻すコストをかけるのであれば、経営への負荷は相当になる危険があります。

そんな中で、個々の郵便局の収益を保証し、郵便事業の慢性赤字体質を改善し、生保の収益性を向上してグループ全体が存続できるようにするには大変な改革が必要になります。場合によったら、グループ全体で大規模な人員整理を行うとか、郵便局の統廃合を行うとか、契約者に対する不利益変更を宣言するとか、勿論できるできないという問題はありますが、とにかく痛みを伴う改革が必要になると思われます。

勿論、その痛みというのは日本郵政グループの中の問題ですが、仮に全体が大きく動揺するようですと日本経済にも影響が避けられません。その中で私が恐れているのが、ゆうちょ銀行も含めて精査した場合に経営が相当に悪いという可能性です。

その場合に、絶対にやってはいけないことは外資との提携、売却です。民営化が進行中とはいえ、日本郵政グループというのは日本の金融サービスにおける中核を占めている存在です。その改革が自分たちではできずに外資や外圧に依存しないとできないということでは、本当に日本経済は消滅してしまいます。

そうではなくて、キチンと自力で改革ができるということが極めて重要です。どういうことかというと、民営化による競争原理を入れて行くということ、そして個人金融資産を「政府におんぶにだっこ」のローリスク、ローリターンのマネーから、自己責任でミドルリスクでミドルリターンのマネーに変えていくということです。

そうすることによって、日本郵政グループの再生も初めて成立するし、またそのようにカネが生きた形で投資されるようになれば、日本経済の立ち直りにも貢献ができるでしょう。実は、郵政民営化というのは、そのような主旨の改革であったはずなのですが徹底的に骨抜きにされ、その結果として危機を迎えているわけです。

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