放たれないアベノミクス第三の矢。永遠に日本が改革されない訳

 

これからの日本が進むべき道

そこをひっくり返すだけの力を増田氏が発揮できるのか、この人にとっては一世一代の大勝負になります。地方消滅も大変ですがこちらはもっと大変であり、日本が消滅するかどうかの真剣勝負です。その意味で危機を直視できるのであれば、この日本郵政の問題には希望があります。

反対に、増田氏が官僚機構の表と裏を駆使して危機を先送りするようであれば、それこそ日本経済は毒が全身に回ってしまうのではないでしょうか。

この2つのニュースが示しているのは、結局のところ安倍政権の7年間で「アベノミクス第三の矢」はほとんど放たれなかったということです。円安誘導による株高を演出することは確かにできていますし、北米市場に依存する体質の染み付いた日本の多国籍企業にはメリットはあったかもしれません。

ですが、国内の改革は遅れています。入試改革は説明不足で潰れてしまい、郵政民営化は骨抜きの中で危機が進行していました。気がつくと、優良な多国籍企業は研究開発、デザイン、マーケティングといった高付加価値労働はどんどん国外に流出させています。

そして、日本国内は世界の歴史の中でまれに見るような「巨大な高学歴集団」を擁しながら世界と言葉が通じず、また前世紀の古い仕事の仕方をしていることで、全くその能力が活用されずに低生産性にあえいでいます。更に言えば、かつては先進国、経済大国と言われた経済が観光業に依存するというスカスカ、ボロボロの状態になっているのです。

今強く感じるのは、それでも安倍政権が「一番マシ」という絶望的な状況です。教育改革も、郵政民営化も妨害したのは旧民主党勢力でした。また、現在取り沙汰されている自民党内の「反安倍」とか「ポスト安倍」と言われている人々は、安倍政権よりも「もっと守旧派」だったりするのです。

今年は東京五輪があり、イベント絡みの公共投資が一巡します。世界経済についても、もしかしたら踊り場か、あるいはマイナスのトレンドに陥るかもしれません。そんな中、とにかく改革を進めて、日本の持っている分厚い人材集団が21世紀の国際社会に何とか少しでも適応してその能力を発揮できるように、そして日本の個人金融資産がしっかりと未来へ向けて投資されて日本が再び先端分野での貢献ができるように、前へ進んでいって欲しい、心からそう思うのです。

image by:首相官邸

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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