軍事アナリストが憂慮。ゴーン被告の逃亡を許した日本の根本問題

shutterstock_221275081
 

元日の新聞各紙の1面を埋め尽くしたのは、日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告がレバノンに逃亡したというニュースでした。これほど簡単に逃亡できてしまった根本的な理由は、日本社会に存在するある幻想のためだと指摘するのは、メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストの小川和久さんです。小川さんは、日本の国家権力はこの幻想のために隙だらけで、領土防衛やテロ対策など整備すべき問題が数多くあると警鐘を鳴らします。

「法律は守られるもの」という幻想

日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告がレバノンに逃亡し、そのニュースが元日の新聞各紙の1面トップを埋め尽くすことになりました。

ゴーン被告の逃亡劇については、直前にハリウッドの映画プロデューサーと会っていたとか、誕生日祝いにやってきた楽団の楽器ケースにひそんで出入国管理の目を逃れたとか、様々な情報が飛び交っており、これが事実なら数年以内に映画化されるのは疑いないところです。

それは野次馬の楽しみにとっておくとして、なぜ日本の法律・制度はかくも簡単にゴーン被告の国外逃亡を許したのかが問題です。新年第1号にあたり、本質的なところから考えてみたいと思います。

結論から言いますと、日本の司法制度、治安態勢には「凄み」が備わっていません。それが、犯行を許してしまっています。日本では、犯罪に走っても、法律を破っても、いきなり殺されることはありません。だから、犯罪を抑止する能力に欠けているのです。

たしかに、私のような人間にとっては法を犯して逮捕されたくないし、挙動不審で怪しまれた挙げ句に警察官にねじ伏せられたりしたくありません。大方の日本人にとっては、法律を破ること自体が「怖い」のです。そんなこともあって、倫理観の問題とは別に、法律を守ろうとするのです。

しかし、日本人とは違う価値観の持ち主だったり、命知らずのならず者、使命のためには命を惜しまない過激派やテロリストだったりしたら、どうでしょう。法律の存在はなんの障害でもありません。逃げることを前提にした犯行であっても、失敗した場合に殺されるかどうかが問題なのです。そうした角度から考えると、日本が法治国家であるためには、相手を法に従わせるための強制力を備える必要があります。

例えば、どんな行動に出るか判らないゴーン被告のような人物に対してはGPSの装着を義務づける。相手の生命に危険を及ぼす飲酒運転やあおり運転などは確信犯ですから、厳罰が適用されるようにする。

空港の警備にしても、テロリストが行動を起こすと、すかさず特殊部隊が銃撃によって制圧する態勢を整え、それを公表することで抑止力とするとともに、テロリストに「凄み」が伝わるような雰囲気を漂わせておく。

尖閣諸島については、国連海洋法条約という枠組みで安心するのではなく、その実効性を高めるための国内法、例えば中国の領海法のような法律を制定し、領海侵犯などを実力行使で排除できるように定める。

print
いま読まれてます

  • 軍事アナリストが憂慮。ゴーン被告の逃亡を許した日本の根本問題
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け