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「勉強だけしてればいい」と育てられた子が中学で陥ったある地獄

失敗続きの我が子をみて、「苦手は捨て得意な面だけを伸ばそう」と思い切る教育の発想転換ですが、時としてそれはマイナスに働いてしまうこともあるようです。今回、無料メルマガ『幸せなお母さんになる為の子育て』の著者・パピーいしがみさんのもとに届いたのは、「中学生の息子が学校に馴染めないのは幼少期の誤った教育にあるのでは」と切羽詰まったお母様からの相談。パピーさんが、母親の「ある勘違い」を指摘しつつ送ったアドバイスとは?

自信を失い不登校に?

こんばんは。パピーいしがみです。

さて…今日のメルマガですが、以前、とても悩んでお返事したご相談内容についてお話しさせて頂こうと思います。

私が「運動は大事ですよ」「乗り越えることがプラスになりますよ♪」とお話ししているのはこのメルマガをお読みの方でしたらご存じだと思います。ところが、苦手な事はやらない乗り越える事はしてこなかった。「勉強だけ頑張ればいい!と育てていた子が、中学になってその勉強さえも挫折してしまった…と、そんな相談を頂いたのです。

今日はそんなご相談の内容と、ご報告をご紹介します。

パピーさん、初めまして。中学1年生の男の子の母です。ハンドルネームはミーコとさせてください。今回、どうしてもパピーさんにご相談をさせて頂きたいと思って、講座を申し込みました。問題は私にある事はよく分かっています。でもパピーさんなら何とか解決できるアドバイスを下さるのではないか?とすがる思いでご相談をさせて頂きました。

 

私の悩みは、息子が自信を完全に失い「学校に行けない」と言い出した事です。子供が2歳ぐらいから、私は早期教育に取り組み、英語や知育教室など、いくつもの教室で学ばせました。3歳からはピアノ、バイオリン。4歳からはスイミング、体操もやりました。

 

ですがピアノ、バイオリンなどは「練習がイヤ、上手くできないから止めたい」と、1年ほどで止め、それじゃあ体力を…と思って始めたスイミングでも、後から入ってきた子に級を抜かされ「もう行きたくない」となり、「それなら体操は?」と思って始めたものの「手の皮がむけて痛いからもう辞めたい」と。

 

そして私は「やりたくないのなら」と習い始めてはすぐに止める…という事を繰り返してしまいました。その時の私は「苦手な事を無理するより、得意な事を頑張ればいい」と思っていたからでした。実はこの言葉、さまざまな子育ての本の中には何度も登場していましたし、私も親にそう言われて育ち、鵜呑みにしてしまっていたのでした。

 

習い事だけではなく、幼稚園での凧揚げも、コマ回しも、竹馬も。小学校の縄跳びも、逆上がりも…「できない・やりたくない」と言えば、「苦手な事より得意な事を伸ばそう」と、結局、逃げる事ばかりを選択してきてしまったのです。その言葉は私にとっても、親としての努力をしなくていい都合の良いフレーズになってしまっていました。

 

でもパピーさんは、過去のメルマガを読んでも「苦手な事を無理するより、得意な事を頑張ればいい」などとは一度も言われておらず、それどころか「簡単に諦めない」「親も一緒に乗り越える」と何度も繰り返し言っておられます。今になって、私の子育てが間違いだったと分かり、愕然としています

 

「得意な事を頑張ればいい」

 

子供にとって得意な事は勉強だと私は思っていました。どんなに運動ができなくても、勉強を頑張って自信をつけてくれれば、それでいい…と思っていて有名塾に通い、勉強時間を増やし、難関私立中学を受験して、めでたく合格しました。

 

しかし、喜びもつかの間で、入学後1ヵ月、2カ月…と月日が経つごとに、息子の元気が失われていきました。「どうしたの?」と聞くと「周りが優秀過ぎて、頑張っても付いていけない」と言い出したのです。塾にも通っていますし、睡眠時間を削ってまで頑張っています。

 

「得意」だと信じて頑張ってきたものが、簡単に打ち砕かれ、たった一つの自信も失い、夏休みを過ぎた今、「学校に行きたくない。僕には得意なものが何もない」と言うようになってしまい、勉強にも全く身が入りませんし、頑張っていた塾も「無駄だからやめたい」と言っています。

 

あまりの自信の無さに、このまま不登校になってしまうのではないか?たった一つしか残されていなかった勉強でさえ挫折してしまったら、この子はどうなってしまうのか?と毎日、青白い顔を覗いては心配する日々です。今、こうなって「苦手な事を無理するより、得意な事を頑張ればいい」は嘘だったんだ。妄信した自分が馬鹿だった、私が子供をダメにしてしまったと悟ったのでした。

 

今、パピーさんのテキストを読んで思う事は、こんなになる前に気付かなかった自分の愚かさと、都合のよい言葉を妄信して、親としての努力を怠ってしまった自分への後悔ばかりです。こんな状態になってパピーさんに泣き付き、ご迷惑だとは思いますが、何とか子供を復活させてあげられる事はできないしょうか?

 

何か一つでもアドバイスが頂けたら幸いです。よろしくお願いします。

このメールを頂いて、私の本音は「これは困ったぞ」でした。と言いますのは、常に苦手な事を避けてきた…とすると、子供にとって今回の挫折はあまりにも大きすぎて、乗り越えることができるかどうか何とも言えなかったからです。

幼稚園の頃から「嫌だったら止める」を選択してきてしまった子が、たった一つ残された勉強でもダメだったと思ったら、生きる希望を無くしてしまうかもしません。

今までいくつもの相談に応じては来ましたが、これは私にとってかなりハードルが高いと感じた内容でした。解決方法は私にも分かりません。でも親が諦めてしまえば子供だって希望を失います。

アドバイスになるかどうかは分かりませんが、こんなお返事をしました。

ミーコさん、こんにちは。パピーいしがみです。メール拝見しました。ご相談内容を拝見した時、どうお返事をしたらよいか、非常に悩みました。正直に言って、お役に立てるかどうかも分かりません。

 

ただ、一つ勘違いをされていたようなのでそこは改めて頂いた方が良いと思います。ミーコさんの言葉に“「苦手な事を無理するより、得意な事を頑張ればいい」は嘘だった”と書かれていましたね。確かに私は「簡単に諦める」ことはお勧めしません。でもあまりにも難しい事や、苦手な事であれば、そこに執着するよりも、自分の得意な事を伸ばした方が良いとは思っています

 

ですが、幼稚園時代の遊びや、小学校低学年の運動などは、決して無謀な要求ではなく、頑張ることで乗り越えられることも多いのですね。私としては、そこは簡単に諦めるのではなく、親が一緒に取り組んで頑張った結果できるようになった♪の経験をしてほしかったな…と思う部分でした。

 

「苦手な事を簡単に諦める」が日常になってしまうと、どんどん可能性が狭まってしまい、子供もチャレンジする気持ちが萎えてしまうので、せめて小学校低学年ぐらいまでは、親と一緒に乗り越えて乗り越えた先に喜びがあると教えてほしかった…と感じた事も確かです。

 

ですが、いまさらそんな事を言ってもどうしようもないし、ミーコさんがとても悩んでおられることも分かります。それに、今、諦めたら、子供は将来の希望を失いかねません。それだけは避けたいし、なんとか元気になって欲しいのは、私も同じ気持ちです。

 

それで、息子さんが落胆してしまい、ミーコさんも落ち込んでいる事は分かりますが、まずミーコさんには「今まで簡単に諦めてしまったのだから、ここだけは諦めずに一緒に乗り越えるんだ!」と意識を持ってほしく思います。子供の落胆と共に、親も肩を落としていれば、一緒に乗り越えるどころか、さらに子供を不安にさせるだけです。こんな時だからこそ、親は元気を出して、子供を励ましてほしいと思うのですね。

 

一番最初にしてほしい事は、まず、しっかり現状把握をする事です。息子さんは「周りが優秀過ぎて、頑張っても付いていけない」と言っていたみたいですが、難関私立中学に入る子供達ですから、優秀な子がいて当たり前です。でも、すべての子どもが上位にいるわけではなく、優秀な子供たちの中でも1番がいれば、最後の子もいる。そこで今、息子さんがどのくらいに位置しているのか?を把握してほしいのですね。

 

今まで勉強を頑張ってきた子ですから、小学校ではきっとトップクラスにいたでしょう。小学校では上位にいたのに、中学に入ったら上位ではなくなった…、それは子供にとっては大きな挫折にも感じるとは思うのですが、あからさまなビリでなければ、「○○中学だもの。小学校とは違うよ(^^)。○○中学で□□位だったら胸張って良いんじゃないの?」って言ってあげてもいいと思うのです。又「あなたが○○中学にいる、って言うだけでお母さんは満足だよ(^^)」なんて言ってあげたら子供も安心するかもしれません。

 

それと、難関中学の先生であれば、息子さんと同じように、自分の成績が思うようにならなくてガッカリしてしまう子供を何人も見てきているとも思いますから、先生に今の息子さんの様子をお話しし、力になってもらう事もできるのでは?と思います。

 

又、もし本当に学校に行けなくなってしまうようであれば、少しレベルの低い学校に編入するという事もできるかもしれませんが、それは最終段階と考えるとして、現段階では「もっと頑張れ」とねじを巻こうとしたり、さらに勉強に負荷を掛けたりするのではなく、良く頑張ったよ」「お母さんは誇らしいよと子供の今までの努力をたたえ、それこそ「卒業できればいいんだ」ぐらいの気持ちで接してあげたらどうだろうか?と思うのですね。そして親だけでなく、学校の先生、塾の先生のお力も借りて、何とか本人の落胆を軽くしてあげるという事が大事だと思うのです。

 

ミーコさんは「たった一つしか残されていなかった勉強でさえ挫折してしまったら、この子はどうなるのか?」と書かれていましたが、まだまだ中学生1年生。今から新しい事を学んだり、習得できる事はたくさんあります。ここで外部との繋がりが途絶えてしまうと、本当に危険だと思いますので、まずはお母さんが明るく振舞い「心配しなくても大丈夫」の姿勢で安心させてあげて欲しいと思いますがいかがでしょうか?

この後、何度かミーコさんとはメールのやり取りをして分かったのですが、ミーコさんは、お子さんの勉強にかなり期待をされていて、子供も強いプレッシャーを感じていたそうです。お聞きしてみると、息子さんの順位は、上位1/3には入っているらしく、もし私だったら「すごいじゃん♪」と拍手したいぐらいだったのですが、ミーコさんとしては「もっと上に行ける」「もっと頑張れるはず」と、喜ぶどころか、さらなる高みを望んでおられたようです。

ですから私が提案した「○○中学だもの。小学校とは違うよ(^^)。○○中学で□□位だったら胸張って良いんじゃないの?」や「あなたが○○中学にいる、って言うだけでお母さんは満足だよ(^^)」の言葉は考えたことも無く、とても驚いた…と言われていました。

ですが、お子さんが「どんなに勉強しても僕にはムリ」「学校にいけない」「塾もやめたい」と言い出し、このまま不登校になってしまうかもしれない…となった事で、やっとご自分が子供に与えていたプレッシャーが原因だったのだ、という事がお分かりになったそうです。

塾の先生に相談をし、塾の先生が子供と話をしてくれた時、息子さんは「お母さんの期待に応えられないと泣いていたそうです。先生も「君は○○中学に入れたんだからすごい事なんだよ。お母さんには先生から言っておくから安心しなさい」と言われ、塾の先生に「お母さん、これだけ頑張っている息子さんをもっと褒めてください。○○中学でこの位置で頑張ってるってすごい事なんですから」と言われたそうです。

ミーコさんは、やっと、ここまで追い詰めてしまったのは私のせいだ!と分かり、それからは、過度な勉強の強制をやめ「卒業できさえすればいい」「学校に行ってさえくれればいいと方向転換をしてくださいました。

中学では先生に勧められて(担任の先生が顧問だった)吹奏楽を始めるようになりました。ちなみに吹奏楽って、中学生で部活がある学校は珍しく、もちろんほとんどの子どもが0からのスタートなので、息子さんにとってもみんなに追い付くのはそれほど大変ではなかったみたいです。そしてミーコさんの息子さんは、卒業まで吹奏楽を続け、中学では不登校にも落ちこぼれになる事もなく、高校もそれなりの学校に入ることができました

後にミーコさんからはこのようにご報告頂きました。

パピーさま。どうも御無沙汰しています。ミーコです。中学に入って、息子が不登校になる寸前で、ご相談に乗って頂き、人生最大のピンチを救って頂きまして、本当にありがとうございました。

 

あの時は「苦手な事を無理するより、得意な事を頑張ればいいを妄信し、自分は被害者だ…ぐらいな気持ちでいましたが、私の偏った「勉強さえできれば」が子供を縛り上げ、子供を追い詰めていた事に気付けたおかげで、子供はなんとか中学を卒業し、志望する高校にも入ることができました。

 

パピーさまに「まだまだ中学生1年生。今から新しい事を学んだり、習得できる事はたくさんあります」と言われたように、吹奏楽という新しい世界を知って、中学でも仲間ができ、高校生になった今も吹奏楽部に入り、そこでも気の合う友達ができました。

 

幼稚園でも、小学校でも友達らしい友達ができなかった子なのに、今は少々熱があっても「友達と約束したから」と自転車をこいで通学しています。その顔は晴れやかでやる気に満ちています。小学校では思いもよらなかった姿に「本当に良かった」と心の中で手を合わせています。

 

私は何と視野が狭かったか、そして間違った子育てをしていたかをまざまざと感じさせられました。小学校時代は運動不足で太っていて、からかわれたりいじめられたりすることも多く、友達もいませんでした。いつも下を向いて歩いていた子が、今は無駄な贅肉が取れ、元気で颯爽とした青年になりました。

 

中学校でも吹奏楽の練習や大会に何度も足を運びましたが、一つの曲を何度も練習し、大会でも緊張の中で演奏をできたこと。それは何物にも代え難い体験なのだと知ることができました。練習はもちろん簡単ではありませんが、その簡単ではない事を仲間や友達と一緒に乗り越えることで、一緒に乗り越えた仲間や友達との絆が強くなり、3年生の大会で金賞を取った時には、みんなで泣きながら抱き合い、その姿を見て私も号泣でした。

 

勉強だけしていたとしたら、こんな感動も、一緒に歓び会える仲間も、涙を流して喜ぶことも経験できなかったんだな…と思うと、中学1年の秋、そこに気付く事ができて本当に良かったと、感謝の気持ちでいっぱいです。そして「あ、これが今まで経験してこなかった新しい学びなんだな」と再確認したのでした。

 

あの時は「残された取り得は勉強しかない。勉強でも自信を失ったらどうなってしまうんだろう」と目の前が真っ暗でしたが、私が勉強への執着をやめ、子供が吹奏楽という新しい世界を見つけたら、子供はどんどん変わって行きました。

 

諦めていた勉強面でも、友達と一緒に学習したり、ノートの取り方を教えてもらったりして、結果的に勉強だけをやっていた時よりも、成績が良くなっていたのは驚きでした。つくづく子供は親だけが育てているんじゃないんだな、いろんな経験が子供に影響を与え、つまづいたり乗り越えたりして成長していくんだな、と思い知らされました。パピーさまが「失敗させなさい」「沢山の経験をさせなさい」「親も一緒に乗り越えなさい」と言われていた意味が、やっと理解できてきた私です。

 

今は、あれこれ指示をするのではなく、子供が頑張っている吹奏楽の大会に夫婦で応援に行くのが楽しみになっています。きっと数年後は大学受験もすると思いますが、もう親が出る幕はなくこちらも応援に徹することになりそうです(^^)

ミーコさんには、中学2年生になる前に「なんとか不登校にならず学校に行けています」「担任の先生に吹奏楽部に誘ってもらって新しい楽しさを感じているようです」とご報告を頂いていましたが、高校受験もうまくいって、高校でも吹奏楽部で新しい友達と頑張ってる…と聞いて、「良かった~」と胸をなでおろしました。

子供は親だけが育てているんじゃない、いろんな経験が子供に影響を与え成長していく」はまさにその通りで、時には先生の言葉や友達。そして新たな興味がさらに自分を大きくしてくれます。息子さんも自分の進む道を自分で考えているようですし、これからが楽しみです♪ミーコさん、貴重なご報告、ありがとうございました。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 石神明生 【発行周期】 毎週日曜

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