MAG2 NEWS MENU

列島を襲う「大暖冬」。損害を被る人から恩恵を受ける人まで影響まとめ

記録的な雪不足が続いている。気象庁は9日、1月11日~2月10日の1カ月予報を発表し、全国的に気温が高くなり降雪も少なくなると予想した。日本気象協会によると2~3月も暖冬傾向が続く見込みだといい、各地に影響が出ている。雪のない札幌に、桜が咲く沖縄…この「大暖冬」で列島はどのような状況になっているか? その影響をまとめた。

大暖冬の影響を受ける日本列島

雪不足の影響をもろに受けているのがスキー場だ。ウェザーニュースによると、全国約400ヶ所のスキー場のうち、2020年1月8日時点で、滑走可能なスキー場は67.5%、滑走不可が32.5%となっている。雪不足が叫ばれた昨年ですら、88.8%が滑走可能(11.2%は不可)ということを考えると、異常な数字といえそうだ。特に北陸や西日本で申告な状況だという。滑走可能ではあるものの、それは一部のみで、全面滑走できないスキー場は非常に多くなっている。

そんな中、長野オリンピックの競技会場にもなった長野市の飯綱高原スキー場は、雪不足の影響からくる財務状況の悪化を受けて、今シーズン限りでの閉鎖を決めた。これまで長野市が運営をしていたが、引き継ぐ企業を募集していたものの現れなかった。1998年の長野オリンピックで、スキーモーグルの競技会場として日本を沸かせた飯綱高原スキー場は、ことし3月15日まで予定している営業の終了後、植樹をして国へ返還されるという。

雪不足の影響はスキー場だけではない。各地で予定されているイベントにも波及している。網走市によると、2月8日から始まる「あばしりオホーツク流氷まつり」は、記録的な雪不足の影響で会場の設営に必要な雪が確保できないとして、メイン雪像を含むすべての雪像の中止を決めたという。また日程も当初の4日間から2日に短縮する。

また、美幌町で1月26日から始まる予定だった「びほろ冬まつり」は、イベントそのもの中止が決定。冬の風物詩「さっぽろ雪まつり」でも影響が出ており、例年より5日も早く雪の運搬を行っているという。札幌市から片道2時間ほどかかる倶知安町や、京極町など例年よりも遠い場所から雪を運んでいて、雪の輸送にかかる費用も、当初の予算よりも大幅にかかってしまう見通しだ。

1950年に開始されて以来、ここまでの雪不足は初めてというさっぽろ雪まつり。今年は来月4日から11日まで、東区の「つどーむ会場」で今月31日から来月11日まで開かれる予定となっている。

しかし、「大暖冬」の影響はスキー場やイベントだけに収まらない。我々の生活をも一変させようとしている。

大暖冬に自然も驚いている

この「大暖冬」に驚いているのは人間だけではない。季節感が狂ってしまったのは動物たちだ。暖かい気温が続くことから、冬眠することを忘れてしまったのか、石川県金沢市をはじめ、各地でクマが出没。エサを求めて山から里に下りてきているという。シカやイノシシ用のわなに誤ってかかってしまうクマもいるそうだ。

植物もこの暖かさで様相がおかしくなっている。中日新聞によると、名古屋市中区三の丸一の外堀通沿いで13日、開花しているサクラが観察されたという。花の下には数個の膨らんだつぼみも。この日の名古屋市の最高気温は11.6度で3月上旬並みで、前日に比べ1.7度高かった。

桜が咲く一方、さらに季節をもう一段階勘違いしてしまったのが、夏に咲くはずのヒマワリだ。静岡県南伊豆町日野の「元気な百姓の花畑」で、季節はずれのヒマワリが菜の花に交じって咲いている朝日新聞が伝えている。例年だと、こぼれ種が芽を出しても12月ごろの霜などで枯れてしまうが、今年はそれほど寒い日がなく、春めくほど暖かい日もあった影響で数十本が花をつけたいい、管理する担当者も「こんなことは初めてだ」と驚いているという。

一方、我々の生活にはこんな影響も出てきている。雪不足のため農作物の雪室貯蔵ができず、農家が悲鳴を上げている。日本農業新聞によると、雪を利用した「雪室貯蔵米」を年間3000トン販売するJA北魚沼は、例年1メートルほどある積雪が今年はまだ数センチしかなく、雪の中に貯蔵できないという。

雪の保温効果を見越して土中で越冬させる野菜などは、雪がなければ土壌凍結が進んでしまい、作物が凍って傷む可能性がある。このまま雪が不足した状態では、どんどん作物がダメになってしまう。

大暖冬は経済にも波及

では、この「大暖冬」を経済の面から見てみよう。ユニクロを展開するファーストリテイリングは9日、今年8月期の業績見通しを発表し、純利益は1,650億円と従来の予想から100億円下方修正した。海外事業で見ると、韓国での不買運動などの影響があるが、国内では暖冬でヒートテックやウルトラライトダウンなどをはじめとした冬物衣料の売り上げが落ち込んだことが響いたようだ。ユニクロだけではなく、百貨店大手でも主力の冬物衣料品が低調だという。

衣料品に限らず、寒い冬向けの商品を扱う業態はなかなか売り上げを伸ばせていない。家電量販店では暖房器具が売れず、ガソリンスタンドでは灯油の売れ行きが悪いだけでなく、冬用タイヤへの交換も少ないという。

大暖冬の影響はマイナス面ばかりなのだろうか? しかし、その一方でこの暖冬の恩恵に預かっている人たちもいるのだ。

大暖冬がもたらす恩恵

「大暖冬」の影響で、例年とは違う冬を過ごしている人が多い中、それがプラスの方向に作用しているのがゴルフ場だ。北國新聞によると、富山県内のゴルフ場はこの暖かさでどこも賑わっているという。今年の冬、富山市中心部では13日まで積雪が観測されておらず、雪によるクローズ回数がゼロのゴルフ場もある。昨年12月の利用者数が例年比の3倍近くに増えたゴルフ場もあり、関係者は「10年に1度ともいえる良いシーズン」と雪のない冬を歓迎していると記事は伝えている。

他にも、ビールやアイスクリームなど、本来は冬に売り上げを落とすものが好影響を受けると見られている。

果たして、この「大暖冬」はいつまで続くのだろうか? この先1か月間も、全国的に気温は平年より高くなる見通しで、一年で最も寒い時季ではあるものの、暖冬傾向と雪不足はしばらく続くと見られている。

記録的な大暖冬にネット上ではどのような意見が出ているのだろうか?様々な声を拾ってみた。






※本記事内のツイートにつきましては、Twitterのツイート埋め込み機能を利用して掲載させていただいております。

image by:Shutterstock

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け