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習近平の「国賓待遇来日」は安倍外交の政策ミスと断言できる理由

これまでも「今までの外交努力が水の泡。習近平「国賓」で安倍首相に痛烈批判」等の記事で、習近平国家主席を国賓として迎える予定の安倍総理に対して苦言を呈してきた、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さん。北野さんは今回、自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、中国に接近する総理の姿勢を改めて批判するとともに、「ポスト安倍」についても言及しています。

北野は、日本政界の現状をどう思うか?

今日は、日本政界の現状について考えてみましょう。

民主党政権の悪夢

09年、民主党・鳩山政権が誕生しました。この政権は、極めて短期間で、日米同盟をボロボロにしました。

12年、野田政権の時代、日米、日中、日ロ、日韓関係は最悪になっていた。日中関係は、尖閣国有化で戦後最悪になった。ロシアは、メドベージェフが北方領土を訪問し、日本国民が怒っていた。韓国は、李が竹島を訪問。さらに、「日王が韓国に来たければ謝罪せよ」などといい、国民が激怒していました。

民主党はリベラルで、すべての国と仲良くするのかと思いきや、実際には、日米、日中、日ロ、日韓との関係が最悪になった。興味深いパラドックスですね。

民主党が政権についたこと、仕方なかったでしょう。自民党がしっかりしていれば、決して政権交代は起こらなかったはず。ですが、民主党の3年間は、ひどかった。国民には、この時のトラウマがあり、なかなか野党支持が増えないのだと思います。

安倍政権の外交的成功

安倍政権は、悲惨な日本外交を立て直す必要がありました。2013年、中韓の反日プロパガンダが成功し、日米関係は最悪でした。しかし2014年3月、ロシアがクリミアを併合したことで、オバマは安倍総理に接近します。日本を「対ロシア制裁網」に入れるためです。

2015年3月、AIIB事件が起こりました。イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、イスラエル、オーストラリア、韓国など、いわゆる親米諸国群が、中国主導AIIBに参加することを決めた。世界の人々は、「アメリカの衰退と中国の影響力の大きさ」を自覚しました。この時、日本はAIIBに入らなかった。それで、日米関係はよくなりました。そして、安倍総理は2015年4月、アメリカ議会で「希望の同盟演説」を行った。日米関係は、ものすごく良好になりました。

2015年12月、いわゆる慰安婦合意で、日韓関係もしばらく好転。2016年12月、プーチンが訪日し、日ロ関係は劇的に改善されました。こうして安倍総理は、2016年末時点で、民主党が破壊しつくした日米、日ロ、日韓関係を修復させたのです。

皆さんご存知のように、中国は2012年11月、「反日統一共同戦線戦略」をロシア、韓国に提案していた。安倍総理は、中国の戦略を無力化することに成功したので
す(この辺の詳細、山盛り証拠は、こちらの本『中国に勝つ日本の大戦略』(北野幸伯 著/扶桑社)でゲットしてください。

ブレる安倍外交

安倍外交は、2015、2016年、2017年、満点でした。それで私は、ずっと安倍政権を支持してきた。しかし、特に「安倍信者」ではなく、消費税増税、3K外国人労働者の大量受け入れなどに、ずっと反対してきました。

ところが、安倍外交は、2018年からかなりおかしな方向にいっています。2018年7月、米中覇権戦争がスタートしました。この頃から、日本は中国に接近。そのせいで、日米関係がギクシャクしています
日ロ関係も、安倍政権が、「せめて2島を取り返そう!」と急ぎはじめたせいで、再び悪化してきました。日韓関係は、皆さんご存知ですね。

というわけで、現状

これは、まさに中国の「反日統一共同戦線戦略」そのままの状態。そして、日中関係は、「まあまあ」。

北野の恐れ

私は、安倍総理が推進する「習近平の国賓訪日」にずっと反対しています。去年11年から、4つの理由を挙げて、大反対していました。

習近平の国賓訪日を中止すべき4つの理由、魂胆は「天皇の政治利用」(ダイヤモンドオンライン2019年11月22日)

正直いうと、これは安倍総理の「大戦略的ミス」といえます。第2次大戦がはじまった1939年、日本とナチスドイツは同盟国ではありませんでした。しかし、1940年に、正式な軍事同盟国になっています。同じように安倍政権は、米中覇権戦争が始まった後で、現代のナチスドイツにあたる中国に接近している。これは、大戦略的間違いであり、「致命的」ともいえます。

では、どうするか?普通であれば、「他の人に総理大臣になっていただく」ということでしょう。しかし、私が恐れるのは、安倍さんの後に総理になる人が、「さらに親中」であること。だから、「安倍総理を中国からアメリカの方に引き戻す」というプランを捨てることができずにいます。

現状を見るに、一番いいのは、安倍さんが、中国からアメリカに戻ってくること。二番目にいいのは、親米の人が新総理になること。最悪なのは、安倍さんの後に、親中派の新総理が誕生すること。

野党はどうなのでしょうか?国民のトラウマは解消されていないので、政権交代はむずかしいでしょう。しかし、野党は最近、一つだけいいことをしています。

習近平氏の国賓待遇 批判強める野党「覇権主義容認と誤解招く」

産経新聞 1/25(土)22:55配信

 

中国の習近平国家主席を4月に国賓として招く政府の方針に対し、疑問視する声が自民党の一部議員だけでなく、野党からも相次いでいる。背景には、中国共産党による一党独裁の下、少数民族弾圧や尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で船舶による挑発行為を強める習指導部への批判がある。野党は今後の国会論戦で、国賓として招く方針を維持する安倍晋三首相を厳しく追及していく構えだ。

この記事によると、立憲民主党、国民民主党、共産党が、国賓訪日に反対しているそうです。「桜を見る会」とか、もういいですから、この件をドンドン追及してください。野党が国賓訪日を阻止できれば、野党を見直す人もかなり出るでしょう。なにとぞよろしくお願いいたします。

image by: 首相官邸 - Home | Facebook

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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