「共に生きる」ために。障がい者を「体感」し言葉をつくる意義

 

この後にはワークショップと分科会の構成としたが、私自身、こだわりたかったのが、多くの当事者を参加させることだった。行政が区別するところの「身体障がい」「精神障がい」「知的障がい」の方々が来て楽しめる、さらにそれ以外の人も同じように交わって学べる場にするための工夫を考えた結果、障がい者を「体感」できる「バリフル・レストラン」の体験ブース、人の語りが本になる「ヒューマンライブラリー」、体を使って音楽を作り上げる「音楽コミュニケーション」の3つを用意するに至った。

時間や会場の関係上、同時並行で行っていたので、複数を体験することはできなかったが、開催前からすべて定員以上の申込があり満員御礼となった。この3つはそれぞれの障害にも対応している格好で、特に知的障がい者や重度障がい者に楽しんでもらおうと考えたのが音楽コミュニケーションだった。ワークショップの後には東京大散策ツアーも用意して、初めて会った障がい者同士も交流を楽しんだ様子に、私は悦に入った。

分科会は「社会教育が取り組む生涯学習支援」「『高等』教育におけるインクルージョン」「カフェを介した『共生の学び』の実践」「エンパワーメントに向けた学びのアウトリーチ」「当事者研究がもたらす学び」の5つ。

障がい者の学びでは、これまで「社会教育」や福祉事業のカフェなども学びの場として語られてきており、この分野での学びの継続性を発展しつつ、シャローム大学校のような「高等」教育としての学びの視点や、重度障がい者向けの訪問型を推進するアウトリーチ事業、そして精神障がい者らの当事者研究が治療の概念から学びに向けたベクトルで考えるのも、今回の新しい取り組みだと考えている。

各分科会後、クロージングセッションで当事者研究のコーディネーターを務めた東京大学の綾屋紗月さんは現在の当事者研究の広がりについて「当事者研究ではそこに言葉が生まれる、その言葉から、また新しいつながり、そして言葉が生まれる」との趣旨の発言した。やはり、コンファレンスは新しい言葉を生む場所なのだと思う。コンファレンスの内容の詳細については適宜伝えていきたい。

image by: shutterstock

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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