なぜ日本版NSCは機能しない?危機管理の専門家が説く台湾との違い

20191121recp_1
 

新型コロナウイルス感染症への対応が後手に回り、国民生活に大きな負の影響を招いた安倍政権。危機管理の専門家として、第1次安倍政権時代にNSC(国家安全保障会議)を創設するための会議に出席していた小川和久さんも、日本のNSCが機能していないことを嘆いています。小川さんは、主宰するメルマガ『NEWSを疑え!』で、NSC創設のために参考にし、新型コロナ対策でも成果を上げている台湾版NSCとの成り立ちの違いを解説。早急に危機管理のあり方を国際水準に引き上げる必要性を訴えています。

コロナから学ぶ危機管理の思想

新型肺炎(新型コロナウイルス感染症)への政府の対応について、読者の方から次のようなメールが届きました。

「本当にバイオテロだったら何も出来ないのだなとがっかりしました。NSCの業務にバイオテロ/ハザードは含まれていないのでしょうか。システム的な構築・対応は誰が行うのでしょうか。あまりにも寂しいかぎりです」

もっともなことです。新型肺炎に対してNSC(国家安全保障会議)は機能しているように見えませんし、国会では米国のようなCDC(疾病予防管理センター)が必要だとか、病院船を持つべきだとかいった議論が行われるような段階にあります。日本版FEMA(緊急事態管理庁)が必要だという議論は影も形も見えません。

そこで今回は国家の危機管理について、必要な機能を備えるうえでの考え方の面から整理してみたいと思います。どの組織から始めてもよいのですが、国家の司令塔に位置づけられているNSC(国家安全保障会議)から始めてみることにします。

私は第1次安倍政権の2006年から2007年にかけて、「国家安全保障に関する官邸機能強化会議」で議員を務めていました。NSCを創設するための会議です。その議員の立場から、米国をモデルにNSCを創設した台湾とオーストラリアのリサーチを行いました。

ここでは台湾の例をお話ししますが、縦割りになっている関係組織の抵抗を排除するため、起きる可能性がある国家的危機について本格的な図上演習を重ねたのです。戦争、テロ、大規模災害、事故、大規模停電、感染症などについて、それぞれをテーマに難問を突きつけ、現在の組織の縦割りでは機能しないことを明らかにし、司令塔としてのNSCの設立にこぎ着けたのです。

図上演習の中で、「ほら、今のままでは機能しないだろう」と明々白々な証拠を突きつけられては、「いまの組織で大丈夫です。NSCなんていりません」という言い訳は通らなくなります。

日本に欠けているのは、このような取り組みです。だからNSCも日本版FEMAも、「そんな組織を作ることは、屋上屋を重ねるようなもので、必要ありません」という役所の抵抗を突破することができずにきたわけです。NSCについては、安倍さんがようやく実現にこぎ着けました。

print
いま読まれてます

  • なぜ日本版NSCは機能しない?危機管理の専門家が説く台湾との違い
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け