台湾がやったようなNSCを創設するための図上演習には、当然、バイオテロやバイオハザードも含まれてきます。当然ながら、演習のプロセスで、災害を中心に機能させるべきFEMAのような組織、疾病に対するCDCのような組織を設ける必要性が明らかになります。そこから、必要な機能、人員、組織形態、関連する法制度が描き出されていきます。最初は小さな組織でスタートし、徐々に機能を拡充していくのが普通です。これが物事の順序というものでしょう。
つまり、「はじめに組織ありき」ではなく、思想があり、機能が追求され、それを実現するための組織が輪郭を現す、というのが自然の流れなのです。ところが日本の場合、はじめに組織ありきで、そこに明確な根拠もないまま人員をはめ込み、法制度を整え、予算をつけるというプロセスを、知見のない官僚機構が机の上で描いてしまい、それが機能するかどうかのチェックすらなく打ち過ぎてしまうのです。
今回の新型肺炎の教訓のひとつは、世界で常識になっている思考パターンから日本の危機管理のあり方を洗い直し、新型肺炎に対処しながら、早急に必要な機能を備えていく、危機管理の思想の整理かも知れません。
省庁の抵抗を排してNSCを設置した安倍首相ですから、日本版のFEMAやCDC、そして病院船についても実現できないはずはありません。新型肺炎の克服を突破口として、日本の危機管理のあり方を国際水準に持っていってもらいたいと思います。(小川和久)
image by: 首相官邸
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