MAG2 NEWS MENU

「大谷翔平選手の筋トレは“喝”?」プロトレーナーに聞いてみた

今シーズンの二刀流復活が楽しみなエンゼルスの大谷翔平選手が、バルクアップした姿でキャンプに登場し、TBSの番組で球界の大御所から「喝」が入るなど、議論を喚んでいます。阪神のキャンプで特別講師も務めるプロトレーナーの桑原弘樹さんは、プロ野球選手の筋トレをどう考えているのでしょうか。自身のメルマガ『届け!ボディメイクのプロ「桑原塾」からの熱きメッセージ』で、メディアの取材に答えた内容を再録。「実績を残した人の経験則や意見は否定できない」としながらも、プロ選手の筋トレが悪というのは古い考えだと指摘します。

プロ野球選手の筋トレは「喝」?

Question

大谷選手がバルクアップしているというニュースがありましたが、プロ野球選手に筋トレを指導されている桑原さんはどう考えますか。テレビで某大御所が筋肥大に対しての喝を入れていましたが、野球という競技に筋肉はどの程度必要なのでしょうか。筋トレを否定する現役の一流プレイヤーもいるので、なかなか筋トレを無条件に勧めていいのかに悩んでおります。(48歳、男性)

桑原塾長からの回答

実は同じ内容の質問で取材を受けましたので、ご参考までに私のコメント部分をそのまま掲載させていただきますね。

野球は運動依存トルクが関節トルクよりも遥かに比率として高い競技だそうで、その比率は8:2くらいだと聞いた事があります。簡単に言えば、筋肉への依存よりも体の使い方による出力の方が大きいという解釈です。これは速い球を投げるとか、強い打球を打つという点に関しての話なので、トータル的に野球という競技を考えた場合は、より筋肉への依存度は高まるかもしれませんが。

つまり野球という競技が未熟な人は、筋肉をつけるという行為よりも野球の動きをとことんやる方がパフォーマンスアップに繋がるということです。ただし、プロのしかもトッププロともなれば、野球における身体の使い方という伸びしろは逆になくなってきているでしょう。そうなるとより伸びしろがあるのは筋肉であると考えるのは自然な事だと思います。

また筋肉は単に出力のためではなく、動きの制御という点でも重要な役割をしています。更には怪我の防止も筋肉の大切な役割なのです。ということで、最優先という位置付けではないものの、筋トレがマイナスになるという発想は少し違っていると思います。

そしてそれほど簡単に筋肉はついてくれませんから、野球の練習の合間やオフに行う筋トレは思う存分やってみるといいのではないでしょうか。

プロ野球選手の筋トレがマイナスというのは古い考え

以下、YAHOO NEWS内のTHE PAGEからの私のコメント部分の抜粋です。

スポーツ・ニュートリションの第一人者で、フィジカルトレーナーとしてもプロレスラーの武藤敬司の指導から、今春キャンプでは阪神タイガースの特別講師も務めた「桑原塾」主宰者の桑原弘樹さんは、こんな指摘をした。

「大谷選手の実際の体もトレーニングも見ていないので詳しいコメントはできませんが、映像で見る限り、あれくらいでマッチョというのかなという疑問が浮かびます。

偶然ですが、数年前に大阪のゴールドジムで日ハム時代の大谷選手がトレーニングをしている風景を見かけたことがあります。体は大きいが、まだ肉体的にはノビシロがあるなという印象を受けました。

段階的にトレーニングをされているようですが、映像だけで正確な判断はできませんが、ようやく体が出来上がってきたなあという感想を抱きました。誤解を恐れずに言うと、三頭筋がムキっと出ただけで、マッチョだ、筋肉マンだと大騒ぎするほどではありません」

専門家から見ると無謀な肉体改造には見えなかったようだ。   さらに桑原氏は、「大谷選手が、メジャーの最先端の発想、理論、環境の中でトレーニングをやっている以上、相当な裏付けがあると考えていいでしょう。たまたま腕をまくって上半身が強調されただけだと推測します。   後述しますが、張本さんの時代とは違い、今は、トレーニング環境もスポーツ・ニュートリションと呼ばれる栄養摂取の部分も進化しています。   休養やシーズン中にどれだけの負荷を加えられるか、野球の技術練習との連動も含めて、トレーニングのすべてをトータルでコーディネイトする考え方が進んでいます。   張本さんに喝と怒られるかもしれませんが、20年、30年前と、比較すること自体がナンセンスなのかもしれません」と続けた。   「膝に負担がかかる」「ケガをする」という意見にも違和感を覚えたという。

「ウエートトレをして体が大きくなれば膝を痛めるという考え方にも誤解があります。上半身に筋肉をつけたことで膝を痛めるわけではありません。体重が極端に増えれば話は別ですが、レッグエクステンションという膝の周りを鍛えるトレーニングメニューもあるくらいです。

海外の文献では、ウエートトレの目的に“プリベンション・インジュリー(ケガの予防)”とあるように、ウエートトレによる筋肉肥大は出力のアップだけでなく、筋肉の制御、ケガの予防という効果があるのです。

制御とは動きを止める筋肉のパワー。私は専門家ではないので詳しくはわかりませんが、打撃における壁や、投手がステップ後に反動の力を使うような場合、守備における踏ん張りなどで使う筋肉です。

筋肉肥大に取り組んだ選手がケガをすると、そのせいになり、逆に、それをしていない選手がケガをしても筋トレしていないせいだとは言われません。まだまだ野球界においては固定観念が拭いされていないのかなとも感じます」

また桑原氏は張本氏が指摘した「走り込み必要論」についても、こんな問題提起をした。

「走り込むことで心肺機能の向上や、遅筋と呼ばれる筋肉は鍛えられますが、過度な走り込みにはマイナス面もあります。活性化酸素がたまり、抗酸化作用が落ち、疲労が蓄積してパフォーマンス、集中力が下がるという現象が生まれるのです。

また速筋の肥大化にも逆効果が出ます。それらを防ぐためには、活性化酸素を取り除くため抗酸化力を上げるアプローチが必要になってきます。休息と栄養。つまり補助する意味でサプリメントの摂取もいるでしょう。

ウエートトレの倍を走るのではなく、走りこむことや、長時間の野球練習の負荷を与えると同時に抗酸化力を落とさないことが必要で、体内のグリコーゲンをどうカバーしていくか、など、現代のトレーニングの概念は、それらを含めて多岐にわたり広がっているのです」

故・金田正一氏は、ロッテ監督時代に、「走れ」「バケツ一杯の野菜を食え」と推奨していたそうだが、抗酸化力を高める食材の代表が緑黄色野菜だそうで、あながち、古い人の経験則も間違いではないよう。桑原氏も「実績を残した方々の意見は否定できない」という。   ただ、現在のトレーニングでは、それらの根拠が理論で説明され、選手に目的を意識づけさせるようになっている。   これまで100人以上のアスリートをサポートし、年間300回以上のワークアウトを実践しているフィジカルの専門家の桑原氏は「大谷のマッチョ化は間違っていないのか?」に対する答えをこうまとめた。

「結局は、野球で、いかに結果を出すかがすべてなんです。イチロー選手のように筋肉の柔軟性、可動域、疲労回復に重点を置く考え方もあると思います。

同じ陸上選手でもマラソンランナーと100メートルのスプリンターで必要とされる筋肉とその付き方が違うように野球競技でも、ポジションやプレースタイルによって個人差はあるでしょう。

ただ出力が大きくなると靭帯などの腱、関節への負担は増します。そこへのケアが追いついているのかという点での不安、懸念はあります。瞬間的なパフォーマンスはアップしますが、選手寿命を考えると、慎重に考える必要はあります。

元々、腱というのは強い部位ですが、そこ自体は鍛えることができません。それらのケアも含めてトータルでワークアウトを考えていく必要はあるのですが、私は、ウエートトレがマイナスになるという、古い球界の考え方は、そろそろ変えていくべきだと考えています。

大谷選手の肉体の写真1枚がいろんな人の目を奪う状態になっていることは、僕からすれば今シーズンの活躍が楽しみという印象でしかないのです。

image by: ウィキメディア・コモンズ経由で

桑原弘樹この著者の記事一覧

桑原塾塾長 桑原弘樹は、国内大手食品メーカーでサプリメント事業を立ち上げ、全商品の企画開発に携わる一方、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部PDAなどの立場で、国内外問わず多くのトップアスリートに直にコンディショニング指導を行ってきた。サプリメントは作るだけにとどまらず、「日本で一番使っているのでは」と豪語するほどのユーザーでもあり、年間300回のワークアウトも欠かさない。サプリメントやダイエットなどの分野で、多くの情報が散乱する昨今。サプリメントを作り、自ら試し、活用法を指導してきた、桑原塾長が、本物で価値あるボディメイク情報を提供すべく、スクランブル発進する!!!

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 届け!ボディメイクのプロ「桑原塾」からの熱きメッセージ 』

【著者】 桑原弘樹 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 火曜日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け