死刑が区切りではない。重度障がい者と共にある社会に必要なこと

 

これが今にも続く学びの場の可能性だと、半世紀前の長沢先生の「熱さ」に嬉しくなってしまった。さらに長沢先生は施設にいる方々が「自分のうちにある可能性をできるかぎり実現させるという意味での教育を受ける権利を持っているということです」とし、職員の心得を「子どもたちをほんとうの意味での教育者の目をもって見なければならないということです」と説く。

ここで明確に説かれた「学び」に爽快感を覚えながら、最後に示された「ほんとうの意味」については再度、熟慮する必要がある。この意味を解き明かし、行動に移すことが半世紀も求められながら、いまだに完成していない状況にあり、それが冒頭の「偏見」を生み出す素地を作ってしまったのではないかと思う。「保護」が「隔離」になってしまっていることで被告の「障がい者は必要ない」との思想に結びついたのだと想像する。

そして被告は障がい者施設で働き、被害者となった障がい者を知っていたかもしれないが、「ほんとうの意味」で知ることはなかった。長沢先生が言うように「成長している」存在として、「ほんとうの意味」で受け入れることはなかったのだろう。

福祉の中で「措置」との言葉を使ってきた日本社会の反省を踏まえつつ、どんな人へも「ほんとうの意味」での「教育」の思想を持ち、支援者も要支援者も関わりあっていくのが、新しい道筋であり、相模原事件から得る教訓であると思う。これからも「ほんとうの意味」を探っていきたい。

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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