もっと明確なリーダーシップを示しているのは台湾の蔡英文総統です。特に、自宅療養者などに対する措置は徹底しています。時事通信は、自主隔離を義務付けられているのにクラブに遊びに行っていた男性に、なんと100万台湾ドル(約360万円)という高額の罰金が科されたと伝えています。
どうして、遊びに出かけたのがわかったのでしょうか。台湾政府は現在、すべての外国人の入国を禁じ、帰国した市民全員に2週間の自主隔離を義務付けていますが、隔離下にある人々は携帯電話のGPSとメッセージシステムで監視されており、自宅を離れた場合には警察に通知がいくことになっているのです。隔離対象者が公共交通機関を使った場合、100万台湾ドルの罰金が2倍になる可能性もあるとのことです。
蔡英文総統は「台湾は決して傍観せず、各国と防疫協力を強化する」と宣言し、対策費を1兆500億台湾元(約3兆7100億円)規模に拡大し、感染が深刻な国の医療関係者に対しマスク1000万枚や医薬品、技術を提供する用意があると表明しています。
これほどの動きができる背景には、台湾のコロナ対策のトップに公衆衛生学の専門家がいて、中央感染症指揮センターを司令塔として動いているからでもあります。また、対立関係にあるとはいっても、一方で深い経済関係を持つ中国に対してさえ、何の忖度をすることなく早々と入国禁止措置をとり、これも大きな感染防止効果に結びつきました。
台湾のコロナ対策を率いるのは陳建仁副総統。公衆衛生学の専門家にして、2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)対策を指揮したエキスパートです。当然、蔡英文総統の支持率は60%にまで跳ね上がりました。
日本も感染を拡大させないためにはロシアや台湾のようなリーダーシップが必要なのです。緊急事態宣言を出すかどうかでふらふらし、宣言すれば出てくるだろう批判ばかりを話題にしている会議は、いまは不要です。この緊急事態に会議で時間を空費しているのは、政治家も官僚も頭の構造が平時型だからです。
ここは意識して有事型に発想を切り替え、超法規措置を含めて乗り切って欲しい。超法規措置はコロナ終息への展望が出たら解除しますし、不備な法制度は同時進行で整備するだけのことです。まずは感染拡大を阻止し、最低限の生活を支えるという命の問題に持てる資源を集中するのです。超法規措置で生じた問題の解決はそれからでよいのです。
そんなことくらいで、独裁国家になるなどと騒ぐなかれ。日本は、そんなに未熟な国だったのでしょうか。(小川和久)
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