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またも韓国か。コロナ後の経済と秩序の回復を阻むこれだけの要因

猛烈な感染力で世界中の人々を恐怖に陥れている新型コロナウイルスですが、この難敵が人類から奪うのは命や健康だけではないようです。元国連紛争調停官で国際交渉人の島田久仁彦さんは今回、自身のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』で、事態収束後に起こりうるさまざまな問題を提示するとともに、それらを解決するために私たち一人一人が心がけるべきことを記しています。

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COVID-19が永遠に変える国際秩序と近づく大転換の足音

「COVID-19の拡大は世界秩序を永遠に変えることになる」

これはあのヘンリー・キッシンジャー博士が今回の新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延(パンデミック)を捉えて発した警告です。同時に「私たちは新しい時代への準備をしなくてはならない。我々が生き残り、再び立ち上がるためには、国際協調の復活が不可欠だ」とも述べています。

中国・武漢からスタートし、アジア全域、そして欧州を経由して、南北アメリカ大陸、アフリカ、中東へと広がった新型コロナウイルス感染症(COVID-SARS-2/COVID-19)。武漢をはじめとするアジアには2周目の感染が始まっているという恐ろしい情報もありますがその真偽は不明ですが、世界はまだ【解決策】を見いだせていません。

しかし、日本では“遅ればせながら”4月8日0時に7都府県を対象に緊急事態宣言が発出された頃、IMFは「2020年の世界の経済成長率は、リーマンショックの次の年2009年に記録したマイナス0.1%を大きく凌ぐマイナスを経験する」と発表しました。それは、このメルマガでもお話ししましたが、リーマンショック時に大打撃を被ったのは広義での金融セクターで、その煽りを経済全体が食らったショックだったのに対し、今回のCOVID-19による世界経済への大打撃は、経済全セクターを襲い(例外は、恐らく不動産賃貸業)、移動の自由を奪い、雇用を奪い、そして生命を奪い去るという大危機で、感染の爆発的な広がりが収まったとしても、なかなか回復の道筋が見えづらいショックだからだと言えます。

また、恐ろしいことに、いわゆる医療先進国の医療体制も、今回のCOVID-19への対応は、医療従事者の生命を奪い、無残なまでに崩壊させ、各国の危機管理能力の脆弱さを露呈する結果となりました。欧米諸国が都市封鎖を含む措置を取る中、日本は法的な理由か倫理的な理由で都市封鎖にまで至っていませんが、対応が国ごとに異なり、また移動の制限が100%課せられていないborder-lessな世界で、どこまで封じ込めが可能か未知数です。

危機管理の立場から言うと、個人的には、キッシンジャー氏がいうような国際協調の復活を成し遂げるのであれば、一時的な経済的ダメージは被っても、協調アクションとしての都市封鎖と移動の制限(外出制限)の徹底は必要だと考えています。それにより比較的短期間で感染の封じ込めを成し遂げ、そのうえで財政と金融の強力な政策協調が国際的に実現すれば、ポスト・コロナの世界経済は、急速な回復が望めるのではないかと考えています。すでにIMFは85か国から緊急支援の要請を受け、1兆ドルをそのために準備済みとのことですが、このようなバックアップ体制の整備は大きな励みになるのではないかと感じます。

しかし、そのような中でも救いようのない状況に陥りそうなのが韓国経済です。日韓関係は、ご存じの通り、一向に改善の様子が見られませんが、そのような中でも、3月27日には韓国のチョン首相が「(国際)経済安定のために韓日通貨スワップが必要」と発言し、それがデフォルト寸前の韓国経済の苦境を物語っています。

以前よりこのメルマガでも何度か触れていますが、韓国経済の問題は、貿易依存度が非常に高い経済構造で、実際にはGDPの4割以上が貿易から得られていることが挙げられます。加えて、外交の失敗の繰り返しを受け、信用がなくなり、外国資本の流出に歯止めがかからず、それがウォンの暴落を呼び、韓国の外貨準備高の著しい低下・減少という3つの理由から成り立っています。

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そこに【長引く米中貿易戦争によって引き起こされた世界経済成長の鈍化】、【最大の輸出相手国である中国がCOVID-19による景気悪化により輸入を控えていること】、そして【韓国を襲ったCOVID-19の感染拡大による経済活動の著しい鈍化】が重なり、韓国経済の浮上のきっかけが見えてこない四面楚歌の状況と言っても過言ではないでしょう。

ゆえに韓国の信用力を著しく損ない、国際市場に打って出て外貨獲得の担い手で、韓国経済が過度の依存をしていた半導体部門と自動車部門が揃って米欧市場からの締め出しを食らい、中国のスランプも災いして、日本円にして20兆円ほどの経常赤字を記録しています。

そこに韓国経済特有の構造の偏りが追い打ちをかけています。それはサムスン、ヒュンダイ、LG、SKの4大財閥がGDPの6割強を占めるという異常な構造で、言い換えるとこの4大財閥のパフォーマンスがそのまま韓国経済にパフォーマンスに直結するという形態です。すでに述べたように、これらの4大財閥の欧米諸国からの締め出しが行われており、大変なマイナスを経験しています。

そして、何よりも外貨準備高が非常に不安定であることでしょう。2020年2月末現在では4,091億ドルレベルに達していて、表面的には“安定”しているように見せかけていますが、そのバックにはアメリカFRBとの600億ドル規模の通貨スワップ合意がありますが、この600億ドルは現時点ではまだ名目上のお金であり、まだ米国から移転されていません。ゆえに、先述の通り、“大嫌いな日本”に対して、この期に及んで通貨スワップをお願いする!と言ってきていますが、日韓通貨スワップについては、残念ながら日本側には全くメリットがありません。これまでにもスワップ協定を何度か結んできましたが、その都度、韓国は歴史問題や竹島問題を持ち出して日本との信頼を裏切ってきています。昨今の麻生副総理兼財務大臣の発言にもあるように「だれが悪口を言われてまで頭を下げて貸さなくてはならないのか?」という感情が高まり、日本としては韓国を信用・信頼できないというのが現実でしょう。つまり、韓国経済にとっては、ポスト・コロナの世界経済において、浮上のきっかけや材料はないと言っても過言ではなく、言葉は過ぎるかもしれませんが、【COVID-19で韓国は地獄に落ちる】のではないかとさえ思ってしまいます。もちろん、それは世界経済全体を考えると、決して良いことではないのですが、止めるのは不可能な気もします。

ポスト・コロナの世界経済の回復の足を引っ張る可能性があるのが、ロシアとサウジアラビアが仕掛けた原油増産による原油価格を巡るチキンレースです。先週は一時、WTIでの原油先物価格が1バレル当たり20ドルを下回る水準になり、これはOPEC加盟国にとっても、ロシアにとっても、それぞれの経済を大きく傷つけるほどの大打撃を与えています。しかし、一度仕掛けた喧嘩ゆえ、振り上げた拳を降ろすきっかけを失っています。

しかし、ここで一番の大打撃を被っているのは、ロシアがOPEC Plusでの協調減産に反対した際にターゲットに定めたアメリカのシェールオイル企業です。通常採算がとれるラインは1バレルあたり30ドルから40ドルと言われていますが、20ドルあたりをウロウロしている状況では新規開発も操業もストップせざるを得ず、COVID-19の米国内での感染拡大もあり、とてつもない被害を被っています。ゆえに、アメリカ政府はカナダ政府と組んで、ロシアとサウジアラビアに対して「OPEC Plusが1,000万バレル単位での減産に合意しなければ、関税を課す」と脅し、それを受けて4月9日にはOPEC Plusの緊急会合が開催される見通しですが、解の見込みは低いかと思います。

それはなぜか。サウジアラビア(世界第2位の産油国)とロシア(世界第3位の産油国)は、「アメリカ(世界第1位の産油国)も協調減産に参加するなら、協調減産に応じる」という姿勢を打ち出していますが、これまでのところ、アメリカが協調減産に参加することはなく、ただ両国に対して関税という脅しを使って減産を迫り、上昇する原油価格にただ乗りするのではないかとの不満が大きくなっているからです。

実際に米、サウジアラビア、ロシアのトップ3だけで全世界の産出量の4割ほどを占め、協調減産に踏み切れば、原油価格の上昇が見込まれますが、先行きは見えない状況で、それがCOVID-19の世界的な感染拡大で冷え切っている消費者や企業の心理と相まって、ポスト・コロナの世界経済の回復スピードを遅らせてしまう懸念があります。

それが各国で高まる不安と不満に火を付け、これまで国際協調の下、抑えてきた争いの炎が再点火され、紛争が各地で勃発することにもつながりかねません。

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そのような中、COVID-19の感染拡大は、国際社会における軍事力による抑止力さえ奪っています。その顕著な例が、米海軍の空母4隻で広がる感染拡大です。空母セオドア・ルーズベルトだけで200人強の感染者が出て、現在グアムで5,000人弱の乗組員全員に対する検査と船内消毒でしばらくは戦略的な展開は不可能とされています。他の空母についても感染拡大は止められず、現時点で世界展開するアメリカ海軍の3分の1に相当する戦力が動けず、著しい作戦能力の低下が見込まれています。

オバマ政権時代より【アメリカは世界の警察官ではない】との外交・安全保障体制が取られ、それがトランプ政権でより顕著になってきている中、世界で唯一すべての海に基地を持ち、展開している米軍が、即応能力を著しく削がれている状況は、「アメリカの戦力による世界の安定維持という現状」に大きくマイナスの変化をもたらすことになります。

そこに目をつけているのが、中国です。米中貿易戦争を戦うと同時に、南シナ海・南沙諸島海域で米中の艦船がにらみ合いをし、緊張の下での安定をここ数年保ってきていますが、今回、アメリカの即応力が削がれている状況で、しばらくおとなしくしていた中国海警の艦船が暴れています。例えば、今週初めには南沙諸島海域で操業中のベトナムの漁船に体当たりをして沈没させていますし、これまでアメリカ海軍から猛烈なプレッシャーを受けていた台湾海峡にも連日出没し、台湾政府に対して圧力をかけています。また、日中関係は最近改善していると言われていますが、連日、沖縄・尖閣諸島海域に侵入して圧力をかけています。

ポイントは、海軍の艦船ではなく、あくまでも日本の海上保安庁に当たる海警を用いている点です。

海警の“取り締まり”と称した行動で、南沙諸島海域諸国(ベトナム、フィリピン、インドネシアなど)の出方を探りつつ、台湾海峡や尖閣諸島周辺では、アメリカの出方を探っています。もし、どこからも目立った反撃を食らわなければ、次は海軍が出てきて、中国の地域における覇権拡大への動きを取ることになるでしょう。

残念ながら、COVID-19の猛威はアメリカ、日本、東南アジア諸国の即応性を削ぎ、効果的な外交・安全保障上の応対が出来ていない状況です。このことにより、地域安全保障体制のバランスが、今後、中国によって大きく崩され、対応や体制の見直しを近く迫られることになるかもしれません。これもまた、COVID-19がもたらす大きな国際情勢、そして国際協調への挑戦です。

世界中でワクチンの開発が進み、治療薬の開発も急ピッチで進められており、国際協調の芽は確実に大きく成長しているようにも思えますが、同時に、Yellow Perilというアジア人蔑視の思想が欧米で蔓延し、「まずは我が国」という自国中心主義が、トランプ大統領やその信奉者のみならず、彼ら(彼女たち)を嫌っていたはずの国民にまで広がっていることに懸念を抱きます。ネットを通じた連帯は世界的な広がりを見せていますが、実際の社会行動になれば、その協調もどこかに行ってしまうような気がします。

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そのような中、南アフリカの友人から非常に勇気づけられるような話も聞きました。ワールドカップ時に日本でも報じられたギャングの恐ろしさを覚えていらっしゃるかもしれませんが、その“恐ろしい”ギャングたちが、COVID-19の猛威を受け、争いや襲撃をやめ、それぞれが持つ麻薬や武器調達のためのネットワークを、コミュニティーへの支援物資を運び人々に届けるネットワークとして用い、それぞれが協力しているというエピソードです。同じような話は中東でテロリスト扱いされているハマスやヒズボラの活動についても聞きます。

【今、何が一番必要で、そのために自分たちにできることは何か】

もし、このようなメンタリティーと思考を私たち一人一人が持ち、具体的に行動に移すようになれば、国境や宗教、人種などの壁を超え、再び国際協調の下、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によってもたらされた全地球的な試練に打ち勝ち、ポスト・コロナの世界秩序に安定を取り戻すことができると信じます。

そのためには、皆さん、まず【自分が感染源にならないこと】が重要です。しっかりと手洗いを徹底し、しばらくの間、外出はしないでおきましょう。

それが自分を守り、家族を守り、国を守り、そして世界を守ることになります。

皆さん、どうぞ元気でいて下さいね。

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image by: Shutterstock.com

島田久仁彦(国際交渉人)この著者の記事一覧

世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

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