分断する世界。新型コロナウイルスは「国連」をも終焉させるのか

 

感染の再拡大が絵空事ではない理由

しかし、経済回復を優先しすぎて、経済活動の再開を急ぎ過ぎると、逆にCOVID-19感染の再拡大を招く恐れもあるため、NY州のクオモ知事の発言にもあるように、経済活動の再開と外出制限の緩和については、かなり慎重に行わないといけないのも事実で、非常に決断のタイミングが難しいのも現状です。

この感染の再拡大は、残念ながらすでに韓国やシンガポール、タイなどで確認されており、都市封鎖が解かれた武漢市でも、中国政府当局は決して認めたがりませんが、感染の第2波が襲ってきているとの情報もあります。

つまり、再拡大は絵空事ではないということです。

その第2波の可能性を恐れさせるのが、急激に増加しているアフリカ諸国での新型コロナウイルス感染症の拡大です。数日で1万人単位のペースで感染が拡大している中、元々医療体制が脆弱なこともあり(例:サハラ以南の国の中では、南アに次いで豊かなナイジェリアでさえ、人工呼吸器は3台のみ)、コロナウイルス感染拡大の封じ込めは特に非常に困難と言わざるを得ず、死者数がすでに爆発的に増えています。そして、アフリカでのパンデミックは、容易にアジアや欧州諸国に逆流してくる恐れがあると言われています。

WHOのアフリカ事務所からは、喫緊の課題として支援要請が各国になされていますが、アフリカでのアフター・コロナの覇権争いに興じる中国や欧州各国も、自国内でのコロナとの闘いの最中ゆえ、名目上の資金援助はできても、人工呼吸器の提供や医療スタッフの派遣など、医療体制への根本的なサポートについては手が回らないとのことです。

つまり理論上、そして理想としては、グローバリズムに基づいた国際協調が必須とされ、また望まれていますが、実際に各国が選んだ方向性は、その逆の国内回帰と自国中心主義と言えるでしょう。今回のコロナウイルスの感染拡大は、各国内での連帯への求心力強化には繋がりましたが、その反動として、自国の国境外に対しては強い遠心力が働き、結果として分断の加速を招いていると考えます。

COVID-19感染拡大の終わりがまだ見えず、私たちの今後の生活がどうなるのかという光も見えづらい中、どのように世界の中で生きていくのか。まだだれも答えを出せない現状こそが国際情勢の裏側であり、また、第2次世界大戦後、デリケートな力の均衡の下、育ててきたグローバリズムと国際協調に対する最大の危機と試練に私たちは今、直面しています。

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