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新型コロナは口実か。中国孤立化計画はトランプ再選で動き出す

新型コロナウイルスの「流出源」を巡り対立が続いていたアメリカと中国ですが、ここに来てトランプ大統領の発言がトーンダウンしたことが報じられました。なぜ米国はこのタイミングで対中姿勢を変化させてきたのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では、日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんがその裏側を分析するとともに、今秋の大統領選でトランプ氏が再選された後に取るであろう対中強硬策について解説しています。

トランプ大統領の対中政策はどうなるか?

米国のトランプ大統領は、新型コロナウィルスの感染拡大が中国の責任で起こったとして、中国に制裁を加えるとした。その考察。

米国および世界の状況

NYダウは、2月12日29,568ドルまで上昇して史上最高株価になった。3月23日18,591ドルまで下げて、先先週5月1日は23,723ドルで、先週は、上昇して5月8日24,331ドルと再度24,000ドルを回復した。

経済的なダメージを最小化するために、ドイツの大規模緩和など、世界的に都市封鎖を緩和することで、世界の株価も堅調に推移している。

4月雇用統計で労働者が2,050万人減と大恐慌以来の落ち込みなのに、株価は上昇。市場は楽観的な見方に傾いているし、徐々に企業決算が出てきているが、IT系企業の決算は好調であったことで、今の所は楽観視したようだ。

しかし、今の米国株価はバフェット指標では135%と依然高い水準にある。このため、バフェット氏は航空株を全部手放して、現金ポジションを過去最大にしている。バフェット氏はまだ買えないと見ているようで、株価は再度大幅に下落すると読んでいる。

欧州では違う動きが出ている。ドイツ憲法裁判所で、ECBの量的緩和を違法と判定したことで、金融緩和が進まなくなる可能性が出ている。そうすると、イタリアとスペインの国債の金利が上昇して、国家財政が立ちいかなくなる可能性もある。このため、反ドイツ感情が出て、欧州はバラバラになる可能性もあり、ユーロが下落している。ラガルドECB総裁は、今後も量的緩和を続けるとした。

このため、逆にEUからドイツ、オランダ、オーストリア、デンマークなどが抜ける可能性もある。北欧諸国がEUから抜ける方が、容易であり、実現可能である。

FRBと米政府は、大統領選挙まで金利ゼロと大規模な財政出動、中間層の減税などで金融相場化して株価を維持し、かつ支持率UPのために国民に金をばら撒くようだ。米国債務は25兆ドル以上になったし、今後も積み上がることになる。

また、米国では大統領選挙までは、無料で医療サービスが受けられることになり、国民皆保険制度の議論もないようである。今は、働くより国家から貰う給付金の方が多いので、米国民は働く必要もない。進んで失業している。

今の米国は、ローマ市民に施しをしたローマ帝国と同じことをしている。しかし、このような体制は長続きしないし、次に米国民は、もっとよこせと騒ぐことになる。

もう1つ、トランプ米大統領は、対イラン軍事行動制限に拒否権を発動したが、上院は拒否権を覆す採択で賛成が2/3以上なく、覆せなかった。まだ、米・イラン結託のホルムズ海峡封鎖の可能性がある。

日本の状況

日経平均株価は、2018年10月02日に24,448円でバブル崩壊後高値になり、3月19日16,552円まで下げて、先々週の5月1日は19,619円で、8日は20,179円と2万円を回復した。先週は、海外の経済活動再開の動きが好感され大幅高になった。

日本は、5月末まで緊急事態宣言の延長になるが、経済的なダメージが大きいので、途中で解除することも考量するとした。特に地方では新規感染者が出ていないので、早期に解除の方向のようである。

日本も給付金などの大幅な補正予算の支出で、国の債務が1,114兆円まで膨らんでいる。景気拡大期に赤字予算にしたことで、財政的な余裕がなくなっている。しかし、ここは、国民生活を守るために給付しないといけない。

この面からも検査構築費用の方が財政的な負担が少ないので、検査体制を構築して、早く緊急事態宣言を解除して経済活動の正常化をする必要がある。

米国の対中戦略

新型コロナウィルスの流行に米CIAが警告したにも関わらず、トランプ大統領が無視したことで、感染拡大した。これへの批判をかわすために、トランプ大統領は、中国のミスで米国の新型コロナ被害が大きくなり、真珠湾よりひどいことになったと、賠償を求めて対中強硬姿勢になっている。責任は中国にあるということだ。

この根拠として、トランプ大統領は新型コロナウィルスが武漢ウィルス研究所から漏れたと主張するが、米軍と米情報機関は証拠がないと、米政権とは立場を異にした。このため、ポンペオ国務長官も意見を変え、確証がないと言い始めた。

この対中強硬策で、トランプ支持率は45%に上昇したが、バイデン支持率に負けている。しかし、貧困白人の米国民は、フェイクであろうと中国が悪いというトランプ氏の意見に賛成のようである。支持に熱気もあるので、熱気がないバイデン氏より優位になっている。

トランプ大統領は、支持者の期待に応えるべく、中国に制裁的な処置を行うとしているが、何を行うのか検討中として、明らかにしない。

そして、元補佐官のマイケル・フリン氏を再度、安全保障担当の補佐官にするために、司法省は、フリン氏への起訴を取り上げた。対中強硬策を策定するために、フリン氏が必要だということのようである。

恐らく、対中政策で、バイデン対トランプの大統領選での戦いになるが、白人の民衆は、トランプの反中国の立場に賛成である。バイデン氏が中国融和政策であると、トランプ大統領の再選も見えてくる。

しかし、中国への制裁で、世界経済面で、どのような影響が出てくるのか心配であるし、米中貿易戦争になると株価下落になる。

トランプ大統領の対中制裁であるが、株価を下げるわけにもいかないので、どのような対中政策にするのか疑問がわいてくる。

事実、ムニューシン米財務長官とライトハイザー米USTR代表は7日夜、中国の劉鶴副首相と電話で会談し、米中貿易交渉の「第1段階の合意」履行を確認した。株価が落ちて、急遽電話会談を開いたようだ。

トランプ米大統領も、中国から世界への感染拡大について「中国が故意に起こしたとは思わない」と「第1段階」合意の履行で一致したのを受け、トーンを弱めた。

ということで、再選までは株価を維持するために、対中強硬の手を打てない。このため、再選後の戦略的な対中政策の策定が必要になっている。トランプ政権の2期目は、株価を気にしないで戦略的な取り組みをすることになる。

マイケル・フリンの戦略は、中国包囲網を作ることであった。中国孤立化戦略であり、日本が戦略を立てて、米国に進言していたことでもあるが、フリン氏の失脚で実現しなかった。

このコラムでも述べていた戦略であるが、トランプ大統領は、中国と貿易交渉で合意して、戦略的な中国政策を止めた経緯がある。このため、日本も中国との関係を再構築せざるを得なかったし、ロシアとの関係も宙に浮いてしまっている。

新型コロナウィルスの世界の状況

アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のまとめによると、世界全体の新型コロナウイルスの感染者の数は、日本時間の10日午前6時の時点で400万4,224人となり、400万人を超えた。

国別では、アメリカが130万5,199人、スペインが22万2,857人、イタリアが21万8,268人、イギリスが21万6,525人、ロシアが19万8,676人などとなっている。ロシアの増加が目立っている。

また、死亡した人は世界全体で27万6,815人で、国別では、アメリカが7万8,469人、イギリスが3万1,662人、イタリアが3万395人、フランスが2万6,313人、スペインが2万6,299人などとなっている。英国の死者数が増加して、入院患者の30%が亡くなるという。

感染症予防の日本の習慣

ウイズ・コロナの社会がどうあるべきかという模索が始まっている。当分、新型コロナウイルス感染症は社会に存在し、その感染爆発を抑えて、社会活動は正常に行うしかない。

このウイルスとの戦いは数年続くことになるので、クラスターができないように社会的距離を取り、密度の高い電車などの中ではツバを飛ばさないようにマスクをするなど他人へ移さないことである。

社会的な礼儀や作法が変わることになる。握手やハグなどはしないなど、日本の古来からの作法が再度、世界に広がることになる。

日本は古来から伝染病が多かったのか、人と人の距離の取り方が確立していた。挨拶でも頭を下げることで済ましていた。外出から家に戻ったら手を洗うこと、うがいをすること、玄関で靴を脱ぐことなどがあり、外でも大声を出さないこと、伝染病になったらマスクをするなど、感染症予防の習慣が自然とできている。

もう1つが、アカモク、メカブ、モズクなどのヌルヌルした海藻を食べていたことで、スペイン風邪では、致死率が日本だけ突出して少なかったというが、新型コロナウイルスでも致死率がダントツに少ないことに起因しているようだ。要するに、日本人の自然免疫が強いことによる。これも伝染病に負けない食習慣を日本は作ってきたのであろう。

日本の位置が温帯であり、夏に疫病が流行して、冬になると収まるので、このような習慣で日本人は、感染病を乗り越えて生きてきたのだ。

この習慣を取り戻して、それでも新規感染者数が増えたら、再度、緊急事態宣言を出し、収まったら解除するようなことになる。その準備もしておくしかない。今回の世界的な都市封鎖で分かったことは、人との接触を抑えれば2週間程度で、新規感染者数は減る。

風邪の症状があり、調子が悪ければ、直ぐに町医者で簡易検査して、陽性なら「アビガン」「イベルメクチン」などの治療薬の投与で治す。80%は軽症で治るが、もし、重症化したら、その原因であるサイトカインストーム=免疫異常の治療薬であるリュウマチ薬の「トシリズマブ」を投与することである。

誰が重症化するのかを見極めるのは難しいので、50歳以上には検査で陽性なら、必ず「アビガン」「イベルメクチン」治療薬を投与するべきである。重症化が心配なら大病院でCTで肺炎の状況を見ることだ。

これが確立したら、それでほぼこのウィルスへの対処体制完了であるから、日常に戻して日本古来からの礼儀作法と食事で感染防止をすることである。日本は古来からの伝統を守ることが感染症予防にもなっているのである。

ハイインフレを覚悟する

今は、財政出動で、困窮者や事業者に給付を行い、事後直ぐに営業を再開できるようにして、景気の回復を早める必要がある。税収が落ちて、支出が多くなり、大量の国債の発行で凌ぐしかない。その国債を日銀が買うことになるが、市中での通貨量は大幅に増えて、悪性インフレが起きる可能性がある。

日銀はほかにも社債やCPなども買い入れて、通貨量が激増することになる。同じことをFRBも行っているので、円ドルは同じ歩調になり、円ドル間ではあまり変動がないかもしれない。

しかし、ドル円共に通貨量が増えるので、世界景気が回復すると資源・食糧価格が上昇する可能性がある。国債発行額がGDPの2倍程度では、インフレは起きないが、5倍以上になるとわからない。特に日本の場合は、食料とエネルギーの自給ができないので、通貨下落で日本は苦労することになる。

日本も米国も通貨の下落でハイインフレとなる。しかし、米国は食料とエネルギーを自給できるので、我慢ができる。日本では、耕作放棄地などでの食料生産と太陽光や原子力などでの発電とEV車などが必要になる。

しかし、ハイインフレになると、1,114兆円の国債の重みが軽くなる。年金も社会保障費、税収、給与もインフレに連動しているので、貯蓄のない国民には迷惑にならない。また、銀行も企業も借金が多いところは助かることになる。現金や銀行の貯金などが大きく目減りすることになるが、株などの資産に変えておけば助かるので、国民も準備するべきであるが、株価下落の可能性もまだあるので注意は必要でしょうね。

さあ、どうなりますか?

image by: noamgalai / Shutterstock.com

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