管理費の滞納が増えたら?コロナ不況でマンションに起こりうる事

shutterstock_1714490599
 

多くの人の生活を一変させた、新型コロナウイルスによる感染症。現在、飲食店を始めとする事業者への家賃の支援策が政策課題となっていますが、今後は住宅ローンや管理費等の滞納が顕在化してくるとするのは、マンション管理士の廣田信子さんです。廣田さんは自身の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』で今回、追い詰められた住民に管理組合はどのような対応を取るべきか、これまで専門家として見聞きしてきたさまざまなケースを挙げつつ考察しています。

コロナで始まる管理費滞納に柔軟な対応を

こんにちは!廣田信子です。

今後、心配なのは、新型コロナウイルス危機による経済的な打撃で、住宅ローン、管理費等の滞納が始まることです。

今は、飲食店等の家賃負担の問題がクローズアップされています。手広く事業をしたところほど痛手は大きいはずです。その次にくるのは、住宅ローンの負担です。家計収入の減少が住宅ローンの返済に重くのしかかります。

管理費等は、厳しい家計状況の中では、一番、優先順位が低くなりがちです。通常時は、管理費等は後回しにされがちで、金額が嵩むほど解消が難しくなるので、早めにしっかり督促をするように…と言われますが、今回のコロナによる滞納もそう考えていいのでしょうか。

コロナ問題の終息も事業の先行きも見えない中、資金繰りに奔走している方に、厳しい督促をすることは、どうなんでしょうか。私は、やめてほしい…と思います。コロナ問題で滞納せざるを得ない事情がある場合は、猶予期間を設ける等の対応を考えていただきたいと願っています。

知人の友人に、サラリーマンをやめて独立して飲食店を始めたばかりの方がいます。預金をつぎ込んで借入もしています。一度、「ぜひ来てください」と言われていましたが、行かないうちに、こんな状況になってしまいました。

サラリーマンのうちじゃないと住宅ローンを借りられないからと、会社をやめる直前にマンションを購入したと聞いています。かなり、高額な買い物になったと思います。今、どうされているか…と心配です。

飲食店の厳しい状況は、緊急事態宣言が解除された後も続くと思います。事業と家族を守っていくのは、並大抵なことではありません。そんなとき、管理組合からの無機質な督促は、ものすごくこたえると思います。

管理費等は、いずれ支払ってもらえるものです。もし、残念ながら、事業の継続ができず回復できなかった場合は、ローンの支払いができなくなり、マンションは任意売却か競売か…ということになります。その場合、管理組合は、購入した次の区分所有者に、滞納管理費等を支払ってもらうことができるのですから、今、追いつめられた状況にいる人をさらに追い詰めるようなことはしないでもらいたい…と。

バブル崩壊のあと、それまで、景気がよかった業種の方々が経済的に破綻し、生活が一転、借金の返済に追われ、マンションのローンが払えず、管理費等も滞納…そういう事例をたくさん見てきました。自殺をされた方もいました。これまでの豊かな生活が一変、家族離散のようにマンションを後にされる方もいました。

ある理事長さんは、マンションが競売にかかることが決まり追いつめられている組合員の奥さんを、管理費は次の所有者からもらうから、もう払わなくていい。少しでも現金を手元に残しておいて、引っ越しの費用にするように…と励ましていたといいます。

今なら、こんなことをすると、理事長の職務怠慢だと責められてしまいそうですが、ぜひ、そういう優しさを、管理組合の方々に持ってもらいたいと心から思います。

コミュニティの一員だった人が、夢を持って誠実に生きていた人が、コロナで突然、生活の基盤が揺らぐのです。さらに、管理組合から義務違反者として責められるなんて、どれほどつらいことかと思います。

問題が表面化するのはこれからでしょうが、ぜひ、柔軟な対応をしていただきたいと、心から願います。

image by: Kathy Matsunami / Shutterstock.com

廣田信子この著者の記事一覧

マンションのことなら誰よりもよく知る廣田信子がマンション住まいの方、これからマンションに住みたいと思っている方、マンションに関わるお仕事をされている方など、マンションに関わるすべての人へ、マンションを取り巻く様々なストーリーをお届けします。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 まんしょんオタクのマンションこぼれ話 』

【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

print
いま読まれてます

  • 管理費の滞納が増えたら?コロナ不況でマンションに起こりうる事
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け