中国「香港国家安全法」に声上げぬ、日本の国会議員や護憲派の愚

 

日本政府はこの国家安全法に対して、正式にコメントしてはいないものの、5月25日に安倍首相が行った緊急事態宣言解除での会見で、以下のように述べました。

「私たちは、自国のことのみに専念していてはならない。内向きな発想では、この世界的課題を根本的に解決することはできないと考えています。しかし、感染が拡大している国では、そうした余裕はありません。これまで世界の政治・経済をリードしてきた国々の多くは、今、国内の対応で手一杯になっている、そうした現実があります。そこに隙が生まれるような事態は、決してあってはならない。こうしたときだからこそ、私たちは、自由民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的な価値をしっかりと堅持していく。そして、こうした価値を共有する国々と手を携え、自由かつ開かれた形で、世界の感染症対策をリードしていかなければならないと考えます」

また、記者からの質問に答えるかたちで、「この新型コロナウイルスについては、中国から世界にこれは広がったというのは事実であるというふうに考えています」と述べました。

これらの発言は、明らかに中国の動きを意識したものでしょう。

それにしても、日本の国会議員や政党で、こうした民主主義を踏みにじるような中国の動きに対して、ほとんど声が上がらないというのは、やはり民主主義を軽視しているからでしょうか。

確認した限りでは、声明や談話を出しているのは日本維新の会、国民民主党くらいしかありません。

香港情勢に関する声明について(日本維新の会)
【談話】香港で発生したデモを深刻に憂慮する(国民民主党)

また、自民党では山田宏議員が中心となって、共同声明への署名集めを行っています。

香港の一国二制度は風前のともしび 自民党有志が中国の国家安全法に反対署名

現在、世界の国会議員が共同でこの中国への反対署名活動を行っています。5月27日現在、32カ国から337人の国会議員の署名が集まっています。日本の国会議員は、少し前までは山田宏議員と山尾志桜里議員の2人だけでしたが、この2人の呼びかけに応じて松原仁議員、三谷英弘、長島昭久議員が加わり、5人となっています。

[Updated] Patten-led group of 457 Parliamentarians from 32 countries decry ‘flagrant breach of the Sino-British Joint Declaration’

とはいえ、総勢713人という、世界で8番目に国会議員数が多い国としては、あまりにも少なすぎるのではないでしょうか。

もともと日本は、アメリカがつくった憲法を押しいただいています。とくに護憲派は日本国憲法を後生大事に守ろうとしています。この構図は、中国共産党がつくる憲法を押しいただこうとしているキャリー・ラムと同じだともいえます。護憲派=親中派という方程式が目に浮かびます。

「民主主義や国民主権、人権を守る」と謳う政党の意見を聞きたいところです。とくに護憲派の人たちは、中国共産党がつくった憲法を、香港人は受け入れるべきだと思っているのか、ぜひ聞いてみたいところです。「差し障りのない法律」「すばらしい法律」なら、香港人の自治は無視して、中国共産党がつくってもいいと考えるのでしょうか。

日本の護憲派やリベラルは、香港の雨傘革命や台湾のひまわり学生運動に対して連帯を示してきました。しかしそれは、「香港も台湾も、中国という独裁国家に脅かされている。日本も安倍首相という独裁者に脅かされている」という、笑ってしまうほど幼稚な論法からでした。かたや、民主主義が奪われようとしている地域や国と、民主的に選ばれた政権が統治する国を同一視するところなどは、噴飯ものでしかありません。

そもそも安倍政権は過去6回の国政選挙で負けなしです。安倍政権が強権を振るっているというならば、それは一度も選挙に負けていないから強気になれるわけです。民意を得た政権だから強いのであって、もしも不満があるならば、民主主義の力で政権を倒せばいいだけです。しかし、香港は現在、それができません。また、台湾が中国に併呑されれば、香港と同様の道をたどります。

print
いま読まれてます

  • 中国「香港国家安全法」に声上げぬ、日本の国会議員や護憲派の愚
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け