以前掲載の「武田教授が猛批判。国民に『温暖化』の嘘を植え付けたNHKの大罪」等の記事でもお伝えしている通り、長きに渡り環境問題の闇を暴き続ける中部大学教授の武田邦彦さん。そんな武田さんがデータ分析を駆使して環境問題のウソを暴く一冊をレビューしているのは、無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の編集長・柴田忠男さんです。武田さんが「今心配されている環境問題は、実は心配いらない」と言い切る根拠とは?
偏屈BOOK案内:武田邦彦『今、心配されている環境問題は、実は心配いらないという本当の話』
『今、心配されている環境問題は、実は心配いらないという本当の話』
武田邦彦 著/山と渓谷社
武田先生の仰ることは、ほぼ世間で常識と思われていることの反対である。いままで読んだ先生の本は、概ねそれがお約束である。わたしは激しく共感するのだが、世間ではなかなか認められていないようだ。試しに妻に「~は~~と言われているけど、ホントはこうなんだぜ」なんて言おうものなら、バカを言うんでないよ常識知らずがと殆ど瞬殺されて、その話題はもう出せなくなる。
1960年代から人類は「自分たちのやっていることに問題がないか」という疑問に取り憑かれ、殺虫剤DDT(子供の頃わが家では使っていた)追放に始まって農薬、食品添加物、人工甘味料、そしてダイオキシン、環境ホルモンにまで及んだ。さらに、資源の枯渇、大気汚染、ゴミ問題などから節約運動、大気汚染防止、分別リサイクルなどに進展した。ヒステリックといっていい大騒ぎ。
「歴史的に見ると、『思想から始まった科学』の殆どが間違いであり、多数の犠牲を伴ったのは事実である」。典型的な例が、ナチスドイツによるユダヤ人の追放(人種に関する思想から科学へ)で、アウシュビッツの悲劇を生んだ。またソ連共産党によるルイセンコ事件(共産主義の体制の下で小麦を育てるとよく育つという妄説)では、多くのまともな科学者がシベリア送りになった。
権力と結びついた科学は、残忍な結果に終わるのがお約束である。著者はある大きな学会で「リサイクルは余計に資源を使う」と発表したら、会場から「売国奴!」とやじられ、同じ内容を別会場で発表した教員は吊し上げられた。年月とともに劣化を続ける環境運動は「一世代ではハッキリしないことを大袈裟に言う」という方針に転換した。それが「地球温暖化」という環境問題である。
よく気象予想士や経済学者が「地球が温暖化する」と確信して叫んでいるが、間違いだらけの国連IPPC(気候変動に関する政府間パネル)などを宗教的に信じているだけで、それは科学ではない。地球が温暖化するかどうかを自分で判断できるのは、やや物理的な学問分野の人であり、気象の人では分からない。コンピュータでも予測はできない。それなのに、地球は温暖化するという。
もはや地球温暖化はダイオキシンと同様の政治問題であり、科学の問題ではない。現在の国や地方自治体の多くが「温暖化対策なら公的なカネを出す」ことになっている。そのおおもとの「温暖化するか」が大きな疑問なのだから、何をやっているのかサッパリわからない。大学の研究もさまざまな工夫も「地球温暖化」という大枠がかかっていることで、すべての活動が矮小化している。
現実に近未来、日本を襲うリアルな大厄災なら別だが、殆ど幻想のようなものに囚われた活動だから何も生まない。使ったお金も意味がない。無駄なところにカネと時間をかけている。現在の医療費は公的に40兆円といわれ、その8割が「医原病、マスコミのマッチポンプ、過剰な薬の処方」などといわれている。
先生の計算では、医療費の1/2の20兆円は減らせる。リサイクル関係で11兆円、温暖化関係で13兆円が節約できる。環境が良くなり、病院に行く時間が少なくなり、無駄な考えや不安も減るのだから良いことずくめだ。だから、環境関係、医療関係でおカネを貰っている人たちにとっては、本当のことをいいふらす先生の本は敵だ。だからメジャーな出版が抑え込まれているのかも。
編集長 柴田忠男
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