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4.ステイシー・エブラムズ元ジョージア州議会議員

一方で、バイデン氏には、BLM運動への連帯を示すために「黒人女性を副大統領候補に」というプレッシャーが強まっているわけです。確かにバイデン氏は「黒人票に強い」ということをアピールしてスーパーチューズデーに勝利しており、その政治的な勢いを保つためには黒人女性を指名するのは自然な流れとも言えます。

黒人女性として、まず出てくるのがエブラムズ氏で、彼女はジョージアの知事選で共和党のケンプというトランプ派候補と接戦を演じて有名になりました。極貧の中から苦学して政治家になったキャリア、小説も書く才人、庶民的な風貌など魅力的なキャラですが、いかんせん国政経験ゼロということでは、中西部の白人票にはソッポを向かれる可能性があります。

5.ヴァル・デミングス下院議員

彼女も、黒人女性政治家として待望論があります。確かに、トランプの弾劾裁判の際には、下院を代表して活躍したのですが、その点についても民主党内の評価であって、中道票への浸透は難しそうです。

6.ケイシャ・ランス・ボトムス・アトランタ市長

人気市長ですし、アトランタで「ロックダウン反対派」の知事の下で闘ったとか、今回のBLM運動でも存在感を示しています。ですが、やはり国政経験はゼロで、白人票への浸透は難しそうです。

7.スーザン・ライス元安保補佐官

オバマ政権下で国連大使、安保補佐官を努めたライス氏にも待望論がありますが、共和党の右派からは「ベンガジ事件の戦犯」だと思われているし、一方でミレニアル世代の若者からは「ヒラリー同様のリベラルホーク(リベラルなタカ派)」だとして嫌われている面が否定できません。民意を掴むスキルもイマイチという感じがします。

8.カマラ・ハリス上院議員

各メディアは一斉にこの種の「副大統領候補指名予想」をやっていますが、ダントツに人気があるのがカマラ・ハリス上院議員です。ハリス氏は、ジャマイカ系の父と、インド系の母を持つ黒人女性で、サンフランシスコ市の検事からカリフォルニア州の司法長官になった叩き上げの法律家です。同州の司法長官としては高い支持率を背景に、更に2016年には連邦上院議員に転じています。

そのハリス氏は、2018年に大統領選への出馬を意識した中で、自伝『私たちが守っている真実(原題は”The Truths We Hold”)』というのを出しています。この本ですが、リベラルな価値観で貫かれているのは言うまでもありません。例えば、冒頭から「トランプ当選」に驚いて泣き出した幼い甥っ子に対して「悪役が勝つことがあっても、必ずスーパーヒーローが退治してくれる」と諭したなど、トランプ政権に対して妥協ゼロの挑戦姿勢が示されているわけです。

その自伝の内容ですが、同性婚の実現などLGBTの権利確保に尽力した記録、微罪で収監されそうになった貧困層を救済すべく奔走する姿など、イデオロギー色が強いのはまあ仕方がないにしても、同氏の行動力をアピールする内容にはなかなか説得力があります。大統領選候補者の自伝としては、結構販売面でも好調でした。

そのハリス氏ですが、バイデン氏とは政策的にも近いですし、何よりも大統領に取って代わるだけのカリスマ性もあります。カリフォルニアでの人気は圧倒的ですし、燃えるような攻撃の弁舌はウォーレン以上、そして立ち居振る舞いを含めたルックスは非常に現在のトレンドに「はまる」感じです。

日本で言えば、さしずめ小池百合子の風見鶏と、辻元清美の突破力、扇千景のサバイバル術あたりを合わせた感じで、しかもトップ女優並のインスタ映えと押し出しがあるということで、なかなかの人材ではあります。

問題は、予備選の初期にバイデン氏に激しい批判を浴びせたという「しこり」です。かなり激しく「やっちゃって」いますので、それを乗り越えて、両者が手を組めるかは注目ポイントです。また、これは微妙な問題になりますが、黒人といってもジャマイカとインドの移民2世ということになると「アメリカ黒人=奴隷の末裔」にはならないわけです。オバマがそうであったように、そこは多少問題になるかもしれません。

image by: StreetVJ / Shutterstock.com

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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