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「どんなときもWi-Fi」の行政指導に見る、無制限使い放題のワナ

「無制限で使い放題」を謳いつつ、多くのユーザーの通信速度を制限していたとして、総務省から行政指導を受けた「どんなときもWi-Fi」の提供会社。そもそも回線設備を持たないMVNOが、「容量無制限」のサービスを提供することは可能なのでしょうか。ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは今回、自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、「ビジネスモデル的にかなりの無理がある」としてその理由を記すとともに、「MNO以外の事業者が安易に使い放題をアピールするときは用心すべし」と注意を喚起しています。

総務省が「どんなときもWi-Fi」に行政指導――MVNOが提供する「無制限で使い放題」には要注意

総務省は6月19日、「どんなときもWi-Fi」を提供するグッド・ラックに対して、行政指導を行なったと発表した。どんなときもWi-Fiは「無制限で使い放題」を訴求しておきながら、実際には相当数の利用者の通信速度を制限していたという。

同社では「極めて例外的な場合のみ制限」としていたが、実際は過去に一定以上のデータ通信を行なったことのあるユーザーに対して、月間25GBの上限を設定。総務省によると、そうした通信制限を設ける基準をユーザーに告知しておらず、問い合わせにも回答しなかったとのことだ。

どんなときもWi-Fiは、4月から新規受付を停止している。

ここ最近、クラウドSIMを用いたWi-Fiルーターで「容量無制限」とか「ドコモ、au、ソフトバンク回線で利用可能」といったアピールをするMVNOが増えているが、正直にいって「大丈夫かな」という気がしていた。

そもそも、MVNOで「容量無制限」を提供するというのが、ビジネスモデル的にかなり無理がある。回線設備を持つMNOですら、KDDIやソフトバンクにおいては容量制限を設けたプランしか提供できていないし、「5Gギガホ」で無制限のキャンペーンを展開しているNTTドコモもおっかなびっくりの状態で提供しているに過ぎず、いつキャンペーンが終わってもおかしくない状態だ。

「完全データ使い放題」をうたう楽天モバイルも、サービス発表時にはなかった「通信制御を行う場合あり」という文言が設けられるようになった。

過去にもMVNOで使い放題をアピールしたところがあったが、通信速度が遅くなるなどユーザーからクレームが爆発。結局、見通しが甘さを露呈し、大失敗に終わっている。

安直に「使い放題」をアピールするMVNOは、通信の世界における「ヘビーユーザーの実力」をなめている。彼らに目をつけられると恐ろしいほどデータトラフィックを発生させらせ、大惨事になることが理解できていないのだ。

他の事業者から回線を借りているにも関わらず、「使い放題」が実現できると思う方が間違っている。クラウドSIMだろうが関係ない。そもそも、KDDIやソフトバンクが完全な使い放題を提供できていないにもかかわらず、なぜ回線を借りる側が完全な使い放題を提供できるのか。

この数ヶ月、いくつかの「使い放題」Wi-Fiルーター事業者の関係者から、商品の売り込みや情報交換の依頼があったが、距離を置いたりお断りをしてきた。なぜなら、早晩、ビジネスモデルとして破綻するのが見えていたからだ。

無線ネットワークは有限だ。MNO以外の事業者が安易に「使い放題」をアピールするときは用心すべし。メディアとしても、今後、ユーザーが巻き込まれないように注意喚起をしていこうと思う。

KDDI株主「ローミングで楽天とソフトバンクに対抗する気ある?」――ユーザーに知られていない「世界データ定額」

6月17日、KDDI「第36期定期株主総会」が開催された。NTTドコモ同様にコロナ禍により規模を縮小しての開催で、プレゼンテーションおよび事業報告を割愛。40分ほどで終了となった。

プレスルームも開設されなかったので、大阪・オプテージビルの前にあるタリーズでネット中継を取材した。

質疑応答の中で気になったのが、国際ローミングに関しての質問だ。株主からは「楽天モバイルは特別な契約、追加料金がなくても世界中でローミングができる。ソフトバンクはアメリカ放題など追加料金なしでアメリカ国内でローミングできている。KDDIの対抗策はあるか」というものだった。

この質問を聞いた時、なんとも残念な気持ちにさせられた。客観的に見て、国際ローミングサービスで頑張っているのは4キャリアの中でもKDDIではないか。最近もサービス内容を改定し、24時間単位で使いやすく、数日間の使い勝手も良くなった。ステージ制により、ステージが高ければ、ローミング料金もかからないなど、海外出張の多い身からするとかなり重宝している。

確かにアメリカに限ってはソフトバンクがダントツにいい。アップルのイベントなど、アメリカ出張中には日本国内にいるとき以上にメディアからの音声通話がバンバンかかってくるのだが、ソフトバンク回線であれば、どんなに長電話しようとも一切、通話料が掛からないので本当に助かっている。

ただ、ソフトバンクはアメリカならいいが、他の海外はさっぱりであり、いまだに24時間2,980円という高額な設定で使う気にもならない。その点、KDDI同様、NTTドコモも頑張っている。

楽天モバイルに関しては、正直、まだ判断に困っている段階。本サービスが開始になる4月8日以降、海外出張に全くいけていないので、評価のしようがない。ただ、2月にアメリカ出張した際には便利に使えた。自分はAQUOS Sense3 liteだったから良かったが、Rakuten Miniを持参してきた人はほとんど使えなかったようだ。サービスはいいが、端末がローミングに対応してなければ意味がない。

今回の株主から質問を聞いて感じたのが、KDDIのアピールが全くうまくいっていないという点だ。KDDIに興味があるはずの株主にさえ、KDDIのローミングサービスの利点が伝わっていない。

ただ、株主に限った話ではなく、一般ユーザーにもさっぱり広まっていないのではないか。コロナ以前の空港では、Wi-Fiルーター貸し出しの窓口には、出番を待っているWi-Fiルーターが山積みされていた。多くの人が「自分のスマホでパケ死するのが不安」とWi-Fiルーターを借りていくのだろう。

今のローミングサービスであれば、明らかに使い勝手はいい。自分のスマホがそのまま使え、Wi-Fiルーターを借りるお金も要らなし、わざわざスマホと別に充電する必要もない。

海外用Wi-Fiルーターのレンタルに需要があるということがさっぱり理解できないのだが、結局はキャリアのアピールが全くできていないということなのだろう。

image by: Shutterstock.com

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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