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マスメディアが伝えないビラの内容。金与正が激怒した本当の理由

韓国内の脱北者団体が撒くビラに抗議していた北朝鮮が、開城(ケソン)にある「南北共同連絡事務所」を爆破した映像は日本でも驚きをもって報じられました。今週は、韓国への報復のビラ散布を計画しているとも報じられていますが、ナンバー2の地位に就いたと言われる金与正氏はなぜこれほど激怒しているのでしょうか?メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』著者で北朝鮮研究の第一人者の宮塚利雄さんは、数種類あったビラの中に、過去にはなかった最高尊厳の衝撃的な姿が含まれていたと報告。マスメディアが報じないビラの内容にこそ理由があると指摘しています。

ナンバー2となった金与正が激怒したビラの内容とは?

北朝鮮の金与正朝鮮労働党中央委員会第1副部長が、6月4日に韓国の脱北者団体の対北ビラ散布を非難する談話を発表した。韓国政府がビラ散布を止めさせなければ開城工業団地の完全撤去、南北連絡事務所の閉鎖、南北軍事合意の破棄を覚悟するようにと脅迫してきた。

北朝鮮は韓国の脱北者団体が金正恩を批判するビラを散布したことに強く反対しており、南北間の通信線遮断に続き、さらに6月16日には開城工業団地内の南北共同連絡事務所を爆破した。

北朝鮮が南北融和の象徴である共同連絡事務所を爆破したのは、金与正氏が6月13日に「連絡事務所が跡形もなく壊される光景を見ることになるだろう」と予告、実際に爆破し、それが単なる脅しでないことを見せつけ、金与正の指導力を内外に誇示することにあった。

北朝鮮では最近、『労働新聞』にかつて後継者を指した「党中央」という表記がたびたび登場するようになったが、これは健康不安を抱える金正恩が後継者として金与正氏を育てようとしていることを示唆しているのではないかとも言われている。かつて、金日成政権の末期頃に党中央という言葉が盛んに出るようになったが、当初のころは北朝鮮ウォッチャーの間ではこの党中央が何を意味するのか、皆目見当がつかない状況だった。その後、しばらくして党中央が金日成の後継者になる「金正日」を指す言葉だと分かったのである。

現在、使われている「党中央」が金与正氏のことであれば合点がいくが、一部には、「いや、これは金正恩のことを指している」という指摘もある。いずれにせよ、金与正氏がナンバー2に躍り出たことだけは確かなようだ。

北朝鮮の歴史で女性が政権のトップに就いたことはない。かつて、金正日が金日成の後妻で金平一の母でもある李聖愛が「朝鮮女性同盟の委員長」に就任したとき、これに強く反対し罷免させたことがあったが(以上の部分については、もう一度確かめて報告する)、金与正氏がナンバー2に就いたことは異例である。

旧大韓帝国末期に閔妃が大院君と政権争いを演じたことがあるが、最後は日本軍によって惨殺されている。金与正氏のこれからの動向が注目される。

今回の爆破の契機となった韓国から飛ばされたビラについてであるが、評論家各氏はビラの内容についてはあまり詳しく触れていないようだ。朝鮮半島の上空を飛び交ったビラを収集している私でも、今回、北朝鮮に飛ばされた何種類かのビラのうちの1枚にはくぎ付けとなった。

金正恩のプライベートに関するビラも北朝鮮側には衝撃的だったろうが、あるビラには金正恩を後ろから銃殺しているものがあった。このような北朝鮮の最高尊厳(金日成・金正日・金正恩)をパロディー化して非難、中傷する絵柄はたくさんあったが、相手を殺すような絵のビラはなかった。北朝鮮では最高尊厳を殺す絵など想像もできない。しかし、それが北朝鮮の各地に飛んで行ってしまい、少なからずの人がそのビラを見ているはずだ。金与正氏ならずとも皆驚いただろう。

韓国大邱でアジア大会が開かれたときの話だ。選手とともに参加していた北朝鮮の美女軍団が朝早くにジョギングか散歩をしていたときに雨に濡れている金正恩の顔写真が入った横断幕を見て、「偉大な指導者同志の写真が雨ざらしになっているとはどういうことか、早く、横断幕を取り外せ」と大騒ぎしたことがあった。最高尊厳は殺してはいけないのである。北朝鮮では我が身を犠牲にしてでも金日成・金正日の御真影は守らなければならいのである。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)

image by: Shutterstock.com

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元山梨学院大学教授の宮塚利雄が、甲府に立ち上げた宮塚コリア研究所から送るメールマガジンです。北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で披露します。また朝鮮半島と日本の関わりや話題についてもゼミ、そして雑感もふくめ展開していきます。テレビなどのメディアでは決して話せないマル秘情報もお届けします。長年の研究対象である焼肉やパチンコだけではなく、ディープな在日朝鮮・韓国社会についての見識や朝鮮総連と民団のイロハなどについても語ります。

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