国民教育の師父が語る、幸せな老後のため60代までにしておくこと

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人生100年時代を迎えるとも言われる今、「より良き老後を送ること」は多くの人の望みとなっているのではないでしょうか。では、そのために私たちは、どのような心構えで老境に差し掛かるまでの日々を生きるべきなのでしょう。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、国民教育の師父とも呼ばれた哲学者の森信三氏が著した、「自由潤達な境涯に恵まれた老後を送るための、60代までの人生の過ごし方」が紹介されています。

父親のための人間学 森信三

人生には10年ごとに一つのサイクルがあるわけですが、15歳から30歳までは、人間の修業の時代であろうと思われます。

では30歳代は何かと申しますと、われわれ人間にとって、一生の基礎形成期だと申せましょう。

実はわたくしはかなり若い頃から、この点を問題として、いろいろと考えたり研究してみたのですが、古来卓(すぐ)れた人々について見てみましても、それらの人のほとんどが、皆30代という10年間に、一生の基礎づくりをしているようであります。

わたくしには、政治界とか実業界のことはよく分かりませんが、少なくともわたくし自身が関心を持っている、学問とか思想の方面について見ましても、卓れた人といわれるほどの人は、ほとんど例外なく30代の10年間に、その人の一生の土台を築いた人が多いのであります。

わが国では有名な中江藤樹先生がそうですし、また中国の王陽明という学者なども皆この30代の後半であり、また法然、親鸞、道元というような宗教家について見ましても、結局は30代というものがその人々にとっては、人間の基礎形成期だったといってよいようであります。

それというのも真剣に人生の生き方を求めていたら、30歳代は自立と開眼の年代だからであります。

人間の一生を一応75歳前後といたしますと、がんぜない幼少の頃を差し引くとすれば、この35歳前後というものは、一応人生の二等分線に当たるわけであります。

人間もこの人生の二等分線という山の頂きに立ちますと、それまで少しも見えなかったところの、やがて還りゆくべきわが家、すなわち人生の終末が見え出してくるのであります。

そこで、それでは男盛りともいうべき30歳代の10年間を一体どう過ごすべきかということになりますが、一言で申せば「自己教育」ということであります。

言い換えると求道的な生活態度といってもよいでしょう。「自己以外すべてわが師なり」として、自分の勤め先の仕事、ならびにその人間関係は申すに及ばず、それらを取り巻いて生起する一切の出来事は、すべてが人生の生きた教材であり、おのが導師たるわけであります。

では、40歳はどうでしょうか。

人間40歳ともなれば、一応その職場における責任ある立場に立たされるわけで、家庭的にも子どもはすでに小学高学年もしくは中・高生に成長しており、父親の権威が問われる年代になるわけであります。

それゆえ、職場においても家庭においても実に責任重大な年代である以上、一段の自己充実を要する年代であり、仕事の面でも、自分なりに一応の結実を図るべき年代と申せましょう。

それに次ぐ50歳代はどうかと申しますと「五十にして天命を知る」というコトバのとおりに、仕事の上でたいした飛躍も冒険も許されない年代であり、いよいよもって天命を畏み、自らに与えられた使命の一道を果すべき年代であります。

その上に後進の指導にも一段と拍車を掛け、社会的にも何らかの奉仕貢献を心掛けるべき年代といえましょう。

では60歳代はどうでしょうか。60歳になりますと一般には定年を迎えて第二の人生に突入するわけですが、60歳はまた還暦ともいわれるように、もう一度人生の原点に戻り、改めて人生修業を志さねばならぬ年代と申せましょう。

『論語』にも「耳順(じじゅん)」の年と申すように、年齢を問わず、とりわけ若い人々から、改めて聴き取り学ぶ態度を失ってはならぬと思われます。

それゆえ60歳代は聴聞修業の年代と申したいのであります。

このように、人はそれぞれの年代に応じて真剣な生き方をして参りますと、70歳代、80歳代は、まことに自由潤達な境涯に恵まれて、真の生き甲斐ある人生が送れるのではないかと思われます。

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【著者】 致知出版社 【発行周期】 日刊

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