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あのイチローも。成功者になるパターンは2通りしかない納得の訳

成功者と聞いてどんな人をイメージしますか? お金をたくさん持っている、名を馳せた有名人、何もかも満たされていて不自由のない人…多くの方たちはこう考えるのではないでしょうか。これまで1000人の成功者に単独インタビューをしてきたという、米国の邦字紙「NEWYORK BIZ」CEOでメルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』の著者である、ニューヨーク在住の高橋克明さんは、成功者たちには必ず「ある2つのパターン」が当てはまると言います。その2つとは一体何なのでしょうか? 

自己啓発より自己破壊を!ーあるいは、セミナーや講演会で伝えきれなかった、僕がいちばん伝えたいこと

ニューヨーク、ロックダウンが解除されました。と言っても、「経済活動の第2段階」であることは先週にも書きました。なので、あくまで再開の為の最初の1歩、ということになります。日常に戻るのは、まだまだ先みたいです。

今回、この期間中に日本から様々な団体、企業から、オンラインでのセミナー、講演会、トークショーのお話を頂きました。それぞれ依頼された話す内容、テーマは違っても、最終的に、僕はあるひとつのことをお話させて頂いています。

テーマが「アフターロックダウンにおける我々の生き方」であれ、「世界最大のクラスター被害を受けたニューヨークの現状」であれ、「Black Lives Matter 人種差別デモについての見解」であれ、セミナー、講演の最後に、僕が個人的に伝えるメッセージは、いつも同じ。

どのテーマでも、結論は同じです。バカのひとつ覚え。「Take Action、行動しよう」、です。 要は、明日から、みなさん、それぞれ、思うだけじゃなく、行動しましょう、ということです。

参加者の中心が経営者であれ、大学生であれ、オープンセミナーで主婦層が中心であれ、最後はそう締めくくっています。なぜなら、主催者が僕に依頼をしてくるということは、僕の専門分野が「それ」なので、「それ」を話してほしいから依頼されたと思うからです。「それ」しか話せないし。

いや、「それ」以外のことも話せるのかもしれません。でも、専門ではない。わざわざただの新聞屋が「日米貿易摩擦」について、「日韓慰安婦像問題」について、ましてや「人生の真理」なんか語れません。語れたとしても、ただの「感想文」です。わざわざオンラインにアクセスしてお時間をとって聴いて頂くモノではない。

今までの経験値と従事してきた業務内容から「日本の企業、または個人が北米、特にニューヨークエリアに事業進出、または就職、インターン、留学に来る際の、失敗をかなり下げる方法」なら、堂々と話せると自負しております。一応は専門です。

もうちょっと許してもらえるなら、自身の経験と、行動派のニューヨーカーたちと日々仕事をしている日常から「行動したいと思っていても、イマイチ行動できない人の背中を押すような思考法」は話してもいいんじゃないかなぁとは思っています。そうだとしても、決して人間の行動学を脳医学の見地から学んでいるわけではありません。参考程度にしてもらっていい。世間でいう「成功者」に1000人以上単独インタビューしてきたので、僕が感じた彼らの共通法則も話せるかもとは思っています。

どちらにしろ、何が言いたいかというと、僕が堂々と人前で話せる、もしくは話しても許される権利を持っているテーマは「行動すること」だけです。そして、行動、その対象は人それぞれ。なんでもいいです。ご自身が手がけていること、手がけたいと思っていること、改めたい習性、追加したい習慣、その、すべてに対して、なるべく早くアクションを起こして欲しい。

それに対しての、思考、思想、見解、やる気、必要性は、すでにお持ちの方が多い。「じゃ、あとはやろうよ」、もしくは、「やり続けようよ」、と。ただし、行動する対象は前述した通り、なんでもいいのだけれど、たったひとつだけ条件があります。

それは、自分が今、一番したいこと、もしくは、一番しなきゃいけないこと、です。なんでもいいんだけれど、それだけは守ってください。2番目でも、3番目でもない。1番目、です。…そんな感じのことを生意気にもベラベラしゃべっていました。

で、昨日。街を歩いていて、ふと、感じました。誰に言われたわけでもなく、なんとなく、ふと、自分の中から。

今回も8回、述べ1300名の日本の、特に若い世代を中心に、ベラベラと平均1回90分くらい、臆面もなくしゃべり倒していたのですが、ひょっとして“行動しようよ!”というこの言葉。“明日から動きだそうよ!”というこのセリフ。まさか、スポ根漫画の熱血コーチよろしく「根性論」や「ガッツ論」として言ってるセリフと思われてないだろうか、と。

もちろん、誰に指摘されたわけではありません。ふと、一瞬、自分でそう思っただけです。学園ドラマの熱血教師のおっさんみたいに、とにかく、熱く!やろうぜ!行動しようぜ!と、精神論から言っている、と思われているのではないかと、心配になったのでした。

そうだとしたら、かなり心外です。なぜなら、僕ほど、根性もガッツもない人間はいないから。僕ほど、無駄な努力をするのが嫌いなやつを見たことがないから。

根性論やガッツ論とは真逆の理由で言ってます。精神論は嫌いではないけれど、これに関しては、180度違う理由、「行動するべきだ」と言っているからです。

なので、このメルマガで、弁解、弁明させてもらえたらと思いました(笑)。ここの読者の中には、今回のセミナー、8回のうちどれかに参加してくださった方もいると思います。参加されていない方にも「人間、どう考えても、行動するべきだ」という僕のいつもの言葉を、ロジックとして、メソッドとして発している、その理由を聞いてもらいたい、と思ったのでした。

僕が、アホみたいに、日本の若い世代に「行動!行動!」と言い続けている理由、それは、それこそ、彼らの大好きな言葉「コスパ!」なんです。コスパ的に、いちばん、イイからなんです。

そう、何か物事を進めていく過程で、もしくは思い描いていた夢を具現化する過程で、「行動する」ことがコストパフォーマンス的に、いちばん効率がいいんです。アクションを起こすこと、それ自体が、いちばん手っ取り早くたどり着ける方法なんです。

その理由をこれから、少し長くなりますが、今週と来週2週に渡り、お送りします。 そして、これは長くメルマガなりコラムなりを書いてきた僕が、今、いちばん伝えたい内容でもあります。 そして、もし僕が書籍の2冊目を書くとしたなら、その骨組みになる内容です。お付き合い頂けたら幸いです。

まずは、ここで「成功」の定義を決める必要があります。成功の定義は曖昧です。あくまで、ここで、このメルマガ内だけにおいて、「成功者」の定義を、たとえば「社会的、名声がある」、「経済的自由を所有している」、「自身の好きな仕事で、人生の時間の大半を費やせる」人たち、のことにします。

なにを当たり前のことを!と言われるかもしれません。でも、これ、日本の方に向けてのセミナー、講演会では、最初にきっちり言っとかなきゃいけないんです(笑)なぜなら、英語に比べて、単一民族の使う日本語には、ひとつの言葉に、深く多様な意味を持つからです。

つまり「成功者」という表現を使うと、必ず、「でも、でも、無名でも、お金がなくても、好きな仕事をしてなくても、大切な家族がいて、愛する誰かに愛されて、健康であれば、その人はもう…(ためて)…立派な成功者ではないでしょうか!!」みたいなことを涙目で訴えてくる方が、少なからずいらっしゃるからです。100%その意見に僕も賛成です。いや、1000%、10000%賛成です。

なので、ここで言う「成功者」はただのひとつの定義と思って聞いてください。話を進めやすくする為の、記号だと思ってください。要は有名で、金持ちで、ゆとりがある方々、くらいに思ってください。というか、僕の話自体、全体的に、ただのテクニック論としてお聞きください(笑)僕ごときが、そのような人生の大切な真理をみなさまの前でお話しする資格も技術もないです。

税理士が節税セミナーを開くように、料理家が鮭のムニエルの作り方を教えるように、ただ単に「行動したいと思っているけど、イマイチ勇気がない人に、こう考えたら行動しやすいよ」というスキル論、テクニック論を話しているだけです。閑話休題。

世間で言われているところの「成功者」、彼らが、どうやってそこにまでたどり着いたか、その彼ら、あらゆるジャンルに渡り、日米1000人以上にインタビューしてきた僕が感じたこと、を話します。世界的建築家、世界的ピアニスト、ハリウッドスター、メジャーリーガー、大企業の会長、今のアメリカ合衆国大統領が大統領になる前にも単独でお話を聞きました。

「だからって!だからって!彼らが幸せとは限りません!! 忙しすぎて、家庭を顧みず、将来後悔だってするやもしれません!」
「そんな人たちを、人生の成功者と、果たして言うことができるでしょうか!!」
できません。そのとおりです。あとで聞きます。今は続けます。閑話(再び)休題。

その彼ら「成功者」は、大きく、ふた通りに分かれます。

「分けられるわけがありません!!1000人いたら、1000通りの生き方があります!!それぞれに違う人生があるはずです!」
「人の人生をカテゴライズするなんてこと自体、おかしい!しかも、ふた通りだなんてありえません!」
「人生は…(ためて)、人それぞれ、たった一つのものだから…」
おっしゃるとおりです。もしよければ違うセミナーに行ってください。閑話(も一回)休題。(でも、大げさでなく、日本でのセミナーってたまにこんな感じになるんです・笑)

今回は、あえて、話しやすいように、強引にふたつにカテゴライズしたとします。1000人の成功者たちは、すべてがこの2通りのどちらか、でした。

ひとつは「人生を、自分の思い描いたシナリオ通りに、運べた方々」。そして、もうひとつは、「思い通りに行かなかった人生のシナリオを、思い通りに書き換えられた方々」。になります。もう一回、言います。

ひとつは、「人生というシナリオを、強引に、圧倒的な意志力で、圧倒的な才能で、圧倒的な努力で、時には圧倒的な運で、そのままシナリオ通りに生きている方々」。
そして、もうひとつは「人生、やっぱりシナリオ通りに行かなかったとして、それを書き換える力を持った、場合によっては何度も書き換える、シナリオ書き換え力(りょく)を持った方々」です。

1000人、全員が、結局、この2つのどちらかに分類されます。一人残らず、です。どちらかにはカテゴライズできると言っていいでしょう。逆を言うと、この2つのどちらでもない場合は(あくまでここでは、ここでの)成功者の定義からは外れます。

僕たちは、特に僕たちの世代は、よく、こういうセリフを今まで聞かされてきました。「人生、台本通りには行かないよ」「人生、筋書きのないドラマだから面白いんじゃん」「人生、シナリオ通りに行くやつなんていないよ」「人生、脚本通りに行ったら、苦労しないって」。確かに、僕もそう思います。でも、いるんです。たまにですが。ごくごく、稀に。

子供の頃、描いた夢をそのまんまに、その通りの人生を歩んでいる人。いや、常人では計り知れないパワーで、その通りに人生を強引に運ばせている人間が。

幼少期、もしくは、青年期に描いた「メジャーリーガーとして世界で活躍したい!」「ハリウッドで成功する役者になりたい!」「世界的ファッションデザイナーになりたい!」「日本を代表する、世界に通用するアーティストになりたい!」という夢をそのまんま実現している人たち。

彼らには、まず圧倒的な才能があります。そしてとんでもない努力ができます。その努力の量は、もはや「才能」というジャンルで表現しなきゃいけないほどだったりします。とてつもない努力ができる、才能。

まず、真っ先に思い浮かぶのが、ICHIRO選手、です。
ICHIRO選手が不世出のスーパースターであることは日本国民みんなが知るところです。ただ、20年間以上、ニューヨークでスポーツライターをする僕の友人が言ったセリフはさらに強烈でした、「実は、実際の功績に比べると彼は過小評価されている」。

野球業界から言わせると、彼のやってきたことは、世間が「すごい」と思っている何倍も「すごい」。「すごい」以上に「すごい」らしいです。とんでもない才能を持っていたとして、とんでもない努力をして、それでも叩き出せる数字ではない、と彼は言います。もう2度と出て来ない。とんでもない才能に、とんでもない努力をかけて、そして、四半世紀以上に渡るとんでもない意志力もなければ、できない。それらが重なって初めて出せる記録…とのことです。なんなら、もう、なんか、ちょっと、アタマおかしいんじゃない?(笑)ってレベルだそうです。

僕が取材したのは2005年、あの「年間最多安打」の世界記録を更新した翌年でした。彼は「昨年はまだ自分の打撃が見えてなかった」と言いました。「え!?世界記録出したのに!?」そう喉元まで出かかりました。

そして、「今年の方が理想のバッティングができている」と続けます。その時点で、自身が叩き出した昨年の記録にまだ到達していなかったにも関わらず、です。僕のような凡人には、まったく理解できない話でした。彼の感覚は、世界記録よりも上に位置します。

休みの日は何をしていますか、の他の記者の質問に、「ドラマを見たり、犬と遊んだり…」と言いながら、でもやっぱりすることないので球場に(練習をしに)行くかなあとつぶやきました。シーズン中の試合と試合の合間の貴重なオフ。そこでも練習ですか?と聞くと「いやぁ、練習なんてそんな大したもんじゃないっすよ。体を動かす程度のストレッチ代わりです」と答えました。

あとで、お付きの記者に聞くと「あの練習を、体を動かす程度って言われたら、並みの選手の練習がかわいそうだよ」と言っていました。

間違いなく、野球をすること自体が好きで好きでしょうがないのだと思います。練習という努力も彼にとっては努力ではない。ごくごく当たり前のこと。僕たちにとっての呼吸と変わらない。

もちろん、その過程で、凡人にはわからないほどのプレッシャー、ストレスも感じられているはずです。練習が嫌だと思う日だってあるに違いない。でも、僕たちの感じる、プレッシャー、ストレス、練習嫌だ、の感情とは、また別の次元のような気もします。圧倒的な努力を四半世紀以上継続できる、というある種「才能」ではないかと思うのです。

日本では書店に「イチローに学ぶ成功哲学」や「イチロー名言集」のような書籍が並びんでいます。もちろん、彼の流儀、ルール、生き方、そして言葉から学ぶことは多い。でも、本質的にあれだけの強靭な意志力を、言葉ヅラだけなぞって、果たして真似できるでしょうか。エッセンスは参考になっても、リアルな目標にできる対象でしょうか。

努力を努力と思っていない天才は、すべてが規格外です。どんなピンチもプレッシャーも跳ね返し、その経過はとてつもない苦労があるはずですが、結局は、思い描いたシナリオ通りに、現役生活を終えた。彼こそが、典型的な「シナリオ通りに、進んだ成功者」だと言えます。

もちろん、ご本人や熱狂的なファンにしてみれば、「そんな簡単な言葉で済ませるな! そのつど、プレッシャーを跳ね返し、ありえないほどの努力をしてきたんだ!」と言うかもしれません。

ただ、僕には、その才能と意志力と努力を使い、結果として「シナリオ通りに、進んだ成功者」に見えるのです。少なくとも、途中「2流選手でもいいから、そこそこの年俸をもらって、引退後は解説者に転身する」というシナリオの書き換えはしていない。細かい微調整は必要だったとしても、大局「メジャーリーガーの一流選手になる」のまま、野球人生のシナリオを終えた。

いまやハリウッドスターKEN WATANABE。渡辺謙さんも“こっち”側な気がします。開拓者、元ロサンゼルス・ドジャーズの野茂英雄さんも、こっちの「シナリオ通り成功者」かもしれません。「シナリオ通り成功者」というと、まるで努力をしていなくて、才能だけでやってこれた、と聞こえるかもしれませんが、そうではなくて、「長期間に渡る圧倒的な努力を継続してできる、という才能を持っている人」のことだということは、前述しました。

渡辺謙さんや、NOMOさんは、先にシナリオがありました。自分に才能があるかないか、自分に運があるかないか、は関係なく、人生のシナリオを描く時点で「ハリウッド・スター」に「メジャー・リーガー」になると書き込んでいた。結果論ではない、ということです。ハリウッドスターになるための、メジャーリーガーになるための、とてつもない努力を、とてつもない意志力で可能にした人たち、という意味です。

トム・クルーズさんにインタビューした際、彼はこう言いました。「道なき道を僕は進む」と。つまり、誰かを前例にしたいとは思わない、と。確かに、長いハリウッドの歴史で30年以上トップを取り続けたスターは歴史上、彼しかいない。前例のない道を歩む意志力は常人では測れません。

飛行機に実際に張り付いたアクション映画を撮った直後、ヘリコプターのライセンスを取りに行き、次は戦闘機を実際に操縦する作品を撮る。今度はプロデューサーとして、NASA協力のもと、史上初の宇宙で撮影すると言います。。。果たして、そのエッセンスは参考にできても、その生き方、成功への道を僕たちは、そのまんま真似できるでしょうか。リアルな参考になるでしょうか。

今挙げた人たちは、間違いなく、規格外。天に愛された人たちです。圧倒的な努力を努力と思わない、思えない、選ばれた人たちだと思うのです。

北野武さんにインタビューした時のことです。六本木のテレビ朝日の楽屋で、収録と収録の合間に、45分ほどお時間を取って頂きました。たけしさんは、僕の憧れの人。インタビューしている最中に「これ…夢かな」と思った唯一の人でした。

取材が終わって収録用のレコーダーを切った後に、予定されたスタジオ収録が遅れています、とマネージャーさんが入ってきました。帰り支度をする僕の横に、予定外に時間の空いたたけしさんはトコトコ歩いて来てくださり、その場で、立ち話をしてくださいました。その立ち話の内容が、僕の今までのインタビュー生活の中で、もっとも印象に残る話のオンパレードでした。

でもレコーダーは切った後、さすがに、再び録音していいですか?と聞ける空気じゃありませんでした。それに、あくまで取材が終わった後の、世間話で話してくださっていること。これが仕事となると、また内容が違ってくるかもしれません。なので、ここは、たけしさんが出している「ここだけの話」という空気を共有して、一言一句、聞き逃さないようにグッと集中しました。

内容は、3つの話。
1つは、「品」というものに関して。人間の本当の意味での「品格」について。そして、1つは、ズバリ「人生」。結局、理想の人生像なんて幻想だよな、という話。はっきり言って、この2つの話だけで僕は1冊、本が書けると思っています。今だって、いつだって、この2つの話を思い出します。ただ、この話は、今回のテーマとは違うので、また別の機会に。

話を戻します。今回、触れたいのは、たけしさんが聞かせてくださった、3つ目の話。これは話というより、ごくごく短い、ある一つのセンテンス。確か、映画を撮る際についての内容だったと思います。彼はこう言いました。
「結局さ、キャンスイムじゃダメなんだよね。スイムじゃなきゃ、ね」と。…Can swim? 泳ぐことができる?swimが上?ん?正直、その時はその言葉の真意がよくわかりませんでした。でも、目の前にあのたけしさんがいる。僕はインタビュアーの本質も忘れ、それだけで満足して、結局、その言葉の真意を問い直すことはできませんでした。「ハイ! ハイ!」としか言えず…。

で、それから数年後。ある別の人物にインタビューした際に、翻って、このたけしさんのセリフを思い出し、「ああーーーー!!!そう言うことか!!!!」と気づいたのでした。確信したのでした。この言葉の意味を。その人とのインタビューの帰り道、実際に、6thアベニューの57丁目の、信号待ちの時に、「ああーーーー!!! そう言うことか!!!!」と声に出して言ったことを覚えています。

その人とは、日本音楽史上最大のカリスマ、X JAPANのYOSHIKIさん、でした。僕はYOSHIKIさんに過去4回、単独インタビューをさせて頂いています。冗談で、「北米の専属インタビュー」と言ってくださったこともあります。

その3回目のことでした。ご宿泊しているホテルで取材を終えた帰り道、過去の2回の取材のことも思い出していました。YOSHIKIさんは、毎回、毎回、こちらがシビれるワードを投げかけてくれます。その中でも1回目、2010年の10月にした単独インタビューがいちばん印象深いものでした。

その1回目は、コンサートで数千人のニューヨーカーを熱狂させてその翌日、でした。その際、当初、聞こうか聞くまいか迷っていた質問をあえてぶつけてみました。

甲状腺肥大、ならびに甲状腺機能亢進症。当時、ニュースにもなっていた体調不良の深刻さは、かなり近しい関係者から「今回は、マジでヤバかった」とすら聞かされていました。命がけ…はさすがに大袈裟でも、重症になりうる可能性は十分にあった。今後、ステージに立てなくなる可能性がリアルにあったそうです。その演奏について聞くと、彼はさらっと答えました。

「ステージの上だといつ死んでもいいと思っているので」。…あ、この人、本気で言ってる。。。そう思いました。ミュージシャンにありがちな用意されたキャッチフレーズでなく、心底、本音だということは、その時点で数百人にインタビューした僕には理解できました。

彼にとって、ステージは人生そのもの。音楽となら殉死できる。それって、根性とか努力の次元ではない気がします。音楽に選ばれた人なんだな、と思いました。職業はロックミュージシャンってことになるのだと思いますが、時代が時代なら、音楽室の後ろに飾られる、歴史的音楽家の域ではないのか。ただのロックスターではないと確信します。そう、選ばれた音楽家。

こんなこと言うと、熱い熱いX(エックス)ファンは激怒すると思います。「よっちゃんは、すごくすごく努力してるの!! なめないで!」と。でも、1日14時間ぶっ通しでピアノを弾くことが日常なYOSHIKIさんは、はやり、天才だと思うのです。1日14時間ぶっ通しで練習する…ってもう、ひとつの才能です。彼にとって音楽を奏でるのは、魚が海の中を泳ぐのと一緒…と思った時に思い出しました。

あ! そうか!、と。そこで思い出しました。たけしさんの言葉を。数年前、たけしさんが、立ち話で教えてくださった「結局さ、Can Swim じゃダメなんだよね。swimじゃなきゃ、ね」というセリフを。
魚が泳いでいるのは努力ではない。「頑張って、頑張って!」と言ってる限りは、努力になってしまう。いつか休憩することになる。魚はただのSwim(泳ぐ)です。Can swim(泳ぐことができている)わけではない。

たけしさんは、この世の中には、凡人がどう戦っても勝てない天才がいる、ということを教えてくださったのではないか。そう気づいたのでした。

ということは、僕たちが参考にすべき成功者は、二つ目の「シナリオ書き換え力のあった人たち」なはずです。今週は、圧倒的な人もいる、ということ。そして、エッセンスは参考になっても生き方そのものをモデルにするなら、天才でもなく、成功した人たちにした方がいい、ということを覚えておいてください。

image by: shutterstock

高橋克明この著者の記事一覧

全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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