習近平が台湾と世界に叩きつけた挑戦状。「米中新冷戦」の行方

 

その結果、さまざまな方面からの激しい批判に晒されてもものともせず、新型コロナウイルス感染拡大の影響でまだフルに反抗できないアメリカをはじめとする欧米“列強”や日本の状況を感じ取って、一気呵成に計画(宿願)の実行に乗り出しているといえます。南シナ海での“横暴”にはベトナムがもっとも激しく対立しており、その背後にはアメリカの影が見えますが、そんなことお構いなしに実効支配を政治的・外交的、そして軍事的に拡大しています。

東シナ海でも尖閣諸島を中心に台湾と日本、そしてその背後にいるアメリカを威嚇しつつ、宿願であった太平洋進出の窓口と海路の確保、つまり制海権の確立に乗り出そうとしています。これには日本とアメリカはもちろん、コロナウイルスの感染拡大以降、中国との全面対決に入ったオーストラリアも非難と緊張を強め、各国は香港のみならずウイグル族に対する人権カードを前面に押し出して中国の“野望”を挫こうとしています。一言で言えば『対中人権監視の徹底』です。

その典型例が、米・英・仏・豪・NZで構成される安全保障のための監視体制『Five Eyes』の中国監視強化でしょう。これによりアジア太平洋地域を舞台として、世界的な米中対立の構造がエスカレートしてしまうことを意味し、ついにかつての米ソ冷戦のように、米中対立もグローバルな対立へと変貌することになると予想されます。それに対するアメリカの“決定的な”対応が、『香港民主化法案』の成立と、『米軍のリバランスによるアジア太平洋地域シフトの実施』です。

前者についてはこれまで何度もお話ししてきた『対中経済戦争の決め球』です。この法案をもってして、必要に応じて米国内の中国の資産を凍結できるという措置を保証しています。つまり中国経済の発展のカギを握る米国市場でのプレゼンスに止めを刺すカードをトランプ大統領は手にしたことになります。

後者については、最近発表された内容ですが、欧州防衛と北アフリカ・中東地域の権益保護の中心地となっていたドイツに駐留するアメリカ軍のプレゼンスを一気に30%削減し、同時にトランプ大統領の公約通りに、問題は山積しているにもかかわらず、アフガニスタンとイラクからの米軍の撤退を早める動きが取られることになります。

これらの地域に駐留していたアメリカ軍勢力を近々一気にアジア・太平洋地域(ハワイ、グアム、アラスカ、日本、豪州など)に配備して、その規模は少なくとも数千人から多くて数万人規模のリバランスになるとのことです。このリバランス構想は、トランプ大統領が忌み嫌うオバマ政権下でも囁かれていた内容なのですが、実現できなかったオバマ政権を尻目に、トランプ大統領が実行に移すという別の戦いにもなっています。

米軍のアジア・太平洋地域へのシフト、特にチャイナ・シフトが進められる中、日本もこの方針にいろいろと影響されそうです。その筆頭が、最近、突如計画の見直しから撤回へと進んだイージス・アショアの配備計画です。通常であればトランプ大統領や米軍から激しいクレームが来そうな動きですが、意外なことにアメリカは状況を注視すると言及した以外は静観を保っています。そして、ペンダゴン筋から聞いた内容を踏まえてみると、その謎が解き明かされてきます。

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