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既にコロナ第2波か?それでも国が60歳以上に外出自粛を求めぬ訳

東京都内の感染者数が連日3桁を超えるなど、またも予断を許さぬ状況に再突入した観のある、新型コロナウイルスの流行拡大。7月22日からは観光需要喚起策である「GoToキャンペーン」がスタートしますが、感染の広がりに拍車が掛かるような事態は避けられるのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、現時点で把握しうるさまざまな事実を総合し、新型コロナ「第2波」について考察しています。

新型コロナで第2波が起こるか?

7月10日、東京で243人の新規感染者が分かるなど、コロナ新規感染者が増えている。この動向と今後を検討しよう。

トランプ大統領とバイデン候補のダメさ加減の戦い

トランプ大統領は、コロナ感染拡大を止められなく、中国は止めた実績で優位に立っている。この対比から中国は勝ったとの思いから、しかし、内情は特別給付もなくコロナで店などを失った多くの国民の不満もあり、海外に対して強気に出て、愛国心で国をまとめようとしている。

もう1つ、ロシアがアフガニスタンのタリバンに対して、米軍兵士を殺したら報奨金を出していたと米情報機関は、大統領に報告していたが、トランプ大統領は、ロシアがそのようなことするはずがないと発言した。

このように中露を敵としないで、トランプ大統領は、11月の再選に向けて、海外の敵ではなく国内に敵を作り、分断を大きくしても自分の支持層をまとめて勝とうと方針を変更したようだ。このため、黒人の抗議デモを共産主義者とか、無政府主義者とかと言い、それを打倒することが必要と演説している。

黒人デモで警察解体と叫んだが、警察力を削いだ都市では、犯罪が多くなり、白人層から不満が出ているので、この不満を味方にしようとしている。このため、益々、米国の分断は大きくなっている。

トランプ大統領は、今までは中国を敵として、それに勝とうと演説していたが、中国は、農産物の輸入などを確約した米中貿易交渉の第1段階合意の履行を中止して、米国の出方を見ている。

このため、中国の許容範囲であろうと思われるウイグル人イスラム教徒に対する人権侵害阻止として、同自治区の高官5人に制裁を科した。自治区トップの陳全国党書記を含む3人に対しては、米国内の資産凍結に加え、米国ビザの発給拒否の措置が取られた。しかし、実害はないようである。

次の「香港自治法」は、北京の政府高官が対象になり、これにトランプ大統領が署名するかどうかが焦点となる。どちらにしても、トランプ大統領は、今中国とは喧嘩ができない。農産物の輸出がなくなると中南部州の農家の票をなくすことになる。

中国には実質的な被害がないことをしているが、仏のデジタル課税の報復として、仏製品への25%関税UPを行うとして、依然、欧州の同盟国には厳しい。

もう1つ、再選に向けて、黒人ラップ歌手のカニエ・ウェスト氏が大統領選に立候補するが、黒人票をバイデン候補から奪い取ることを目的としたトランプ大統領の援護射撃のようである。裏でトランプ陣営が動いているように感じる。

しかし、姪であるメアリー・トランプの暴露本の内容がNYタイムズに出て、そのハチャメチャな人生が明らかになっているし、米最高裁は、トランプ氏の財務記録の提出拒否を認めないことで、今後、脱税などが明らかになる。しかし、トランプ氏は、今までも多くの不利なことを乗り越えてきたので、その2つが出ても支持する有権者層には影響がない。

このトランプに対して、バイデン候補もやっと、本格的に公約を発表し始めてきた。まず、コロナ不況対策として、0.75兆ドルの米国製品購入で、500万人の雇用を生み出すとした。

法人税を21%から28%に戻し、最低賃金を7.5ドルから10ドルにして、富裕税を増税して、高齢者医療保険開始を65歳から60歳に引き下げるなどを公約としている。これらのことから当選すると、企業収益が大きく減り、NYダウが大きく下落することになると思われている。このため、ウォール街では悲観的空気になっている。

しかし、最後まで指名争いをしたサンダース氏が掲げていた社会主義的な公約を棚上げにしている。

バイデン大統領になれば、環境問題のパリ協定に戻り、WHOからの脱退もなく、イランとの核合意にも復帰することになる。しかし、TPPに復帰するかどうかはわからない。日米FTAで、実質TPP同等の条件を得ているからだ。

このほかにも政策提言を出したが、その中に対中政策がない。そして、容中派のスーザン・ライス元大統領補佐官が副大統領候補に浮上してきた。トランプ大統領より対中国では穏健な政策になる可能性が出ている。

それと、黒人デモでの要求の警察解体で犯罪が多くなり、特に警察力を削減したのが、民主党市長の都市であり、民主党全体への非難も出ている。

というように、バイデン候補にも問題点があり、両候補ともに問題児で、より少ない駄目さ加減を競うことになるようだ。

というように、現時点の支持率では負けているトランプ大統領にもまだチャンスがあり、トランプ大統領がお得意の予想もしないような何をすることで、逆転はあり得るようだ。

ということで、まだ、わからないことになってきた。

コロナ感染症の第2波はどうなるか?

7月10日には、東京で243人の新規感染者が出ている。全国でも400人以上の感染者が出て、確実に感染が拡大している。勿論、夜の街の関連が多くなっているが、ホストからホステスに移り、そのホステスが、夜の街に来るサラリーマンなどに移し、そのサラリーマンが、職場の同僚や家族に移しているようである。徐々に広がってきた。

このため、徐々に陽性率が上がり、相談件数も増加傾向にある。20代30代が多いが、徐々に40代50代の患者数も多くなってきている。

西浦博教授によると、このまま制限を掛けないと、最大10万人の死亡者が出るという予測のようだ。日本の事情を反映した低い数値にしているというが、恐ろしいことを言う。

PCR検査の拡大は、東京で日に2,500件、全体で日に2万件まで増加したが、PCR検査では、経団連の中西会長が日に20万件までPCR検査可能数を増やしてほしいと要望したが、厚労省はその要求を拒否している。

病状のない人への検査は必要がないというのが厚労省の見解であるが、海外への渡航条件に入国前にPCR検査で陰性を証明することとあり、これを厚労省は認めないという。このため、会社独自での検査を行う必要が出ている。この需要に関連企業が参入している。

もう1つが、コロナ治療薬の承認が遅れていることである。アビガンは、効果が確認できないと藤田医大が発表した。

しかし、英国などでは、ステロイド系薬である「デキサメタゾン」や「シクレソニド」(商品名オルベスコ)が効果ありとしている。この2つの薬は安価であり、抗ウイルス薬「レムデシビル」は1人分35万円もするが、その薬と同程度に効果がある。

サイトカインストームを起こした重症者には、IL6の暴走を止める関節リウマチ治療薬「アクテムラ」が効くようであるが、その承認も早くしてほしい。米FDAでは、コロナ関連の薬を緊急承認しているが、それと同じような仕組みが日本にも必要であろう。

このように前回このコラムで話題にした時点では、いつできるかわからないワクチンを待つまでは、安い治療薬とPCR検査を拡充して、コロナ感染しても軽症段階での治療が確立していれば問題がないとした。しかし、残念ながら、まだ確立していない。1ケ月以上も経っているが、実現できていないようである。

このため、予防を重点的にするしかない。重点的に夜の街対策を打ち、接待を伴う飲食店は、全従業員に対して、月1回のPCR検査を義務付けることが必要だ。昔の赤線で娼婦に週1回の検査を義務付けたことと同様な処置でもある。

事実、都医師会会長は、2週間繁華街での飲食を自粛してほしいと都民に呼び掛けた。軽症者用ホテルの契約は6月末までで、ホテルに軽症者が収容できずに、病院に収容したことで、空きベット数が少なくなっている。都は、3,000床を確保するよう病院に依頼しているが、コロナ患者を受け入れた病院は、大幅な赤字になっている。このため、依頼するには、それ相当な見返りが必要になっている。

もう1つ、のどから気管支、肺のルートでの感染は、軽症で発見されれば、ステロイド系薬などが有効であり、東京医科歯科の医者は、積極的に投与して軽症者を重症化させないようにしていると言う。

これでこのルートの治療法が確立しているが、鼻から脳に行くルートでの感染には、悪くすると脳障害を起こすことになり、後遺症なども持続してしまう。味覚障害などもこのルートから脳にウィルスが侵入して起こるようである。このルートの治療法の確立が必要な気がする。

この状態で、経済活動を正常化して、人の移動を活発化させると、再度、第2波の感染爆発を起こす可能性が高まる。重症者も出てくる。60歳以上の高齢者や基礎疾患を持つ人たちは、外出自粛が再度、必要になる。

また、治療方法が確立されていない鼻から脳へのルートで感染するように、コロナウィルスの変異が起きた場合、再度、多数の死者を出すことになりかねない。要注意である。

政府は、ウィズコロナの条件でも経済活性化が必要なので、60歳以上の外出自粛を言わない。旅行需要の内、多くが60歳以上であり、特に平日の観光地は60歳以上の人しかいない。

一番、コロナショックを受けているのが観光業であり、この立て直しには、60歳以上の観光需要を回復させないといけない。このため、GoToトラベルで旅行代金を補助してくれるので、行きたい気持ちは大きいが、60歳以上の人たちは、旅行をするにしても、三密を避けた旅行をするしかない。

よって、コロナで重症化する可能性がある60歳以上の人たちは、旅行をしないか、しても自分の車などで、空いている観光地に行くしかないようだ。

20代・30代・40代の人たちは、ガンガン経済活動と消費行動を行って、日本経済を活性化させることであり、コロナに感染したと思ったら、早くPCR検査を受けて、軽症の間に治すことだ。また、この年代の人は、無症状者も多く、将来的には、このコロナウィルスは人間と共存した常在菌化する可能性もある。

しかし、現在、60歳以上は、安い治療薬のない現状では、コロナに罹らないように、注意深く行動するしかない。

政府と東京都は、再度、ホテルとの契約を結び、軽症者の入院できる体制を整える必要が出て来たし、ダメなら笹川財団が用意するとした体育館の転用入院施設を、再度利用可能にするしかない。

もう1つ、重症者が増えた時点で、60歳以上の外出自粛宣言などを政府は検討するべきである。それと、60歳以上の人と同居する若い人たちにも注意を喚起する宣言を考えてほしいものだ。なるべく経済を止めずに、どう感染を拡大させないか、その方法を検討することである。

さあ、どうなりますか?

image by: cittadinodelmondo / Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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