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デキる男はやっている。成功者たちの「シナリオ書き換え力」とは

世の中で成功している人たちについて、前回の記事「あのイチローも。成功者になるパターンは2通りしかない納得の訳」の中で、「シナリオ通りに人生を歩む人」と「シナリオを書き換える力を持っている人」に大別できると述べた、米国の邦字紙「NEWYORK BIZ」CEOの高橋克明さん。今回の記事では、多くの人たちが目指すべきは後者のパターンだとし、長期的にポジティブであり、一定数のエラーが必要だと、自身のメルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』でその秘訣を明かしています。

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自己啓発より自己破壊を! あるいは、セミナーや講演会で伝えきれなかった、僕がいちばん伝えたいこと ~後編 ~

Can Swim ではなく、Swim といえば、もうひとり、思い出す方がいます。ウエディングデザイナーの桂由美先生。僕はこの世界的ブライダルファッションデザイナーにおそらく3回か、4回、単独インタビューをしました。あのローマ法王が、復活祭で、着用するほどの衣装をデザインした、全世界でもっとも有名なブライダルファッションデザイナーです。

先生にインタビューする際、いつも思うのは、「過去の話を振った際、ものすごく、めんどくさそうな顔をされる」ということ(笑)です。インタビュアーのこちらとしては、数々の今までの栄光の話も聞きたいわけです。

あのニューヨークの老舗有名デパートのライバル関係である、サックス・フィフス・アベニューと、ヘンリー・ベンデルの両巨頭は、五番街を挟んで同じデザイナーの服を売らないことは有名ですが、YUMI KATSURA だけ、わざわざ別のデザインを発注して、両店舗が売り場の商品に並べました。その時の話も聞きたい。そして、80年代に、パリにおいて、日本人デザイナー初のグランドコレクションを敢行。それだって聞きたい。それらを取材で外すわけにはいきません。

でも、先生は、いつも「うーーーーん…どうだったかしら…。忘れたわ」「……(笑)」

ところが「来年の目標はなんですか?」と話が未来、この先のことに変わると、途端、目をキラキラさせて、いっぱいいっぱいお話しくださいます。

「今ね、京都の幽庵焼きってわかる?その色、素材を使って、まったく新しい生地を開発してて、どーのこーの、どーのこーの…」話は止まりません。

先生にとって、過去はどうでもいいことみたいです。それが世界的に名誉あることでも過去は過去。過ぎ去ったことに興味はない。先生はその時、すでに80を超えてらっしゃたと思います。でも、先生の目は前にしか向いていない。それは、努力とか、根性とか、ガッツでしょうか?

断言して違う、と言い切れます。先生は、また新たなウエディングドレスをこの世に生み出すことが、楽しくて楽しくてしょうがないのだと思います。

実際、ニューヨークでの先生のコレクションをお手伝いした時のこと。数ヶ月かかったイベントの当日。ショーの開始前、僕はランウェイの最前列、先生の真横の席に座っていました。で、いざショーが始まると、隣の先生は、そのままスーっっと寝てしまいました。唖然とする僕。

ええええええ! このイベントに向けて、先生もスタッフも数ヶ月かかりっきりだったのに。やっとショー当日を向けたのに。最前列で寝ちゃうの!!??

起こした方がいいのかな、と迷っていると、後部座席のお付きの方から、「そのまんま、寝させてあげてください」と耳打ち。ここ数ヶ月、先生は今回のショーのため、極度の睡眠不足だったのだとか。それにしても、ランウェイは数十分、すぐに終わります。

でも、先生にとっては、イベントそのものも、もう過去なのでしょう。あとはモデルさんの仕事。自分が手がけるのは、そのモデルさんが着る衣装。また新しいウエディングドレスを作りたい。やっぱり未来しか見ていないのだと思います。まさしくウエディングドレスを作るために、この世に生まれてきた人間。

果たして、たとえ、どのジャンルであれ、僕たちは先生のようになれるでしょうか。彼らは、やはり、常人には理解できない域まで達している。

簡単に言うと「天才」という言葉になってしまうのかもしれません。もちろん、圧倒的な努力をしています。でも、そのありえないほどの努力ができる、というのも、ある種、才能なのかもしれません。もちろん、彼らから学ぶことは山ほどありますが、正直なことを言うと、本質的な意味でリアルに彼らのようになれるとはどうしても思えない。

やはり、天に愛された人たちなのだと思います。よく日本の自己啓発本で「ICHIRO選手に学ぶ成功哲学」とか、「イチロー名言集」とか発刊されているのを目にしますが、多くの勉強になるのは間違いないとして、果たして、その言葉面だけを真似しても、本質的な意味でたどり着けないようにも思えてしまいます。

彼らのような人間は、今まで1000人インタビューしてきて、その1000人は、全員、すでにもちろん成功者で大物なのですが、その1000人の中でも、おそらく、20人~30人しかいなかったと思います。常人では理解できないほどの、圧倒的な才能、努力、意志力で、人生をシナリオ通りに運ぶ、パワーを持った人たち。

そして、僕たちが、参考にすべきは、それ以外の970人~、980人の成功者の方ではないでしょうか。実際に、シナリオ通りに人生が行かなくても、それでも、シナリオを書き換え、現実的な成功を手に入れた人たちの方です。彼らの方こそ、リアルに僕たちが参考になる生き方をしている気がします。本質的に同じ人間。感性も思考も真似できなくはない。そして、僕たちと同じように、僕たちと同じ種類の挫折を、同じくらいの回数の挫折を、経験してきています。

その「シナリオを書き換えて成功した人たち」の方は、事業家やビジネス業界に多い。大企業の会長や、社長。彼らも、はたから見るととてつもない成功を収めているように見えていますが、少なくとも1回以上は挫折を経験しています。少なくとも、前者のように、幼少の頃からの夢を実現している、わけではない。

なぜなら、子供の頃の夢は、普通、メジャーリーガーや、パイロットや、映画俳優や、ファッションデザイナーであるはずです。なかなか、小学校4年生で「僕の夢は、将来、半導体メーカーの企業のCEOになって、東証二部上場して、売りのタイミングでストックをソールドアウトして、キャッシュフローを得て生きていきたいです」と言う逸材はそういない。今の時代、まったくいないことはないかもしれないけれど、今現在、大企業の会長職に就かれている方の幼少期の時代にはほとんどゼロだったのではないでしょうか。

ということは、事業家で成功されている人は、子供の頃からの夢をそのまんま実現しているわけではない。実現していない可能性の方が高い。つまり、挫折を最低1回は経験している。おそらく、もっと経験している。

かなりの確率で、思い通りに物事が進まなかったことの方が多かった。ひょっとすると、最初は奥さんとふたりの家内工業で始めたかもしれない。従業員に裏切られた過去もあったかもしれない。銀行が融資してくれなくて、倒産寸前を味わったかもしれない。いや、実際、倒産を経験しているかもしれない。バブルがハジけたかもしれない。新規事業に手を出して、大失敗したかもしれない。そんな紆余曲折を経験して、今の地位を手に入れた。

彼らに秀でていた才能は、前述した通り「シナリオを書き換える能力」でした。自分の思い通りに事が進まなくても、そこで、また新たな夢を見て、それを実現するために、たとえそれが今までとまったく違う業種であったとしても、今まで長年にわたって身につけたスキルが仮に通用しない業界でゼロから学び直さなければいけないとしても、たとえ、今まで血の滲むような思いで貯めた資金がゼロになって、文字通り身ぐるみ剥がされても、「また挑戦することができる」、そんな能力でした。

「まいったよ~」と頭を掻きつつ、「でも、しょうがねえから、やるしかねえか、と笑い飛ばせる能力でした。ということは、彼らに学ぶ「シナリオ書き換え能力」は、大前提として、「打たれ強さ」が最大のファクターになります。あたりまえですが。

では、この「打たれ強さ」を構成しているものは、なんなのでしょう。打たれ強さを身につける、最低条件。それは…あまりにもベタで、言うのがちょっと恥ずかしく、あまり言いたくないのですが(笑)…ポジティブシンキング力…だと思います。あまりによく聞くセリフなので、「出た!おまえもか!」と言われるかもしれませんが(恥)。

ただ、日本のベストセラー啓発本に出てくる、やたら「ポジティブ、ポジティブと口癖にしたら、運が開けるよ」みたいな、そんな簡単な意味で言ってるわけではありません。日常生活においては無理して、ポジティブ!ポジティブ!とか言う必要を僕は感じていません。

むしろ、短期的な日常生活にはネガティブくらいでちょうどいい。それよりも長期的に見て「ネガティブにならない力(りょく)」と言った方がいいかもしれない。要は、この先、色々あるだろうけれど、「オレは(アタシは)結局、なんとかしちゃう!と思い込む力(りょく)」です。それが前述した「打たれ強さ」に繋がると思います。それはすなわち、「自己破壊力」なのだとも思うのです。

少し、物騒な言葉が出て来ました。自己破壊なんて言うと、ヤバ目なイメージです。自ら壊滅に向かう、という意味ではありません。破壊してもいいから、限界まで挑戦することなんじゃないかと思うのです。もちろん言葉のあやです。

建築家の安藤忠雄先生も、サックスミュージシャンの渡辺貞夫さんも、ユニクロの柳井会長も、一風堂の河原社長も、いきなりステーキの一ノ瀬会長も、決して順風満帆な人生ではありませんでした。

すべてを賭けてきて、失敗をしたこともある。どん底まで落ちた経験もある。それも一度や2度ではありませんでした。ある意味「これがダメなら終わりだな」くらいに人生を賭けたものが失敗に終わった経験をもっていらっしゃった方々ばかりでした。「自己破壊」するくらいの生き様で、そこから「自己再生」をされてきた。それこそが世間でいう「人間力」なのだと思います。

もちろん、極端な例です。なかなかゼロから、マイナスからあそこまでの逆転劇はそうそうない。でも箱の中に閉じこもった「自己啓発力」だけではなかった気がします。エラーを恐れず、言葉は的確ではないかもしれませんが「自己破壊」を覚悟で、そして毎回「自己再生」をしてきた。彼らは強烈で、峻烈で、ドラスティックな人生を生きて、生きて、生きてきた。

今、日本では「癒し系」「寄り添い系」と呼ばれる書籍が売れているらしいです。「いまのあなたのままでいい」「ナンバーワンよりオンリーワン」「存在するだけで特別なのです。人生は戦いではない」「今いる場所で花を咲かせましょう」「自分を大切にする方法」etc…こういった類の書籍はある程度一定数売れるらしい。

昨年秋に自著を発刊した際、当初予定していた出版社の担当には、実はそう進言されたこともあります。「寄り添い系で、いきませんか?」と。ホームランは打てずとも、ヒットにはなる。つまり、ある程度の売り上げを見込める、と。確かに、“そっち”を書く自信もある。1000人インタビューした中で、100人以上は、そういった「自己啓発セミナーの講師の先生」や「癒し系セラピスト」や「宗教家」の方々でした。そして、実際に彼らのセミナー、講演会もニューヨークで実施しました。それっぽいこと、書けると思います。でも、それを僕が書く必要があるのか。将来、息子が読む際に、現実の父親像とのギャップで悩むかもしれない(笑)。

なので、出版元を変えました。変えた先の担当は「高橋さんの書きたいことを書きましょう。炎上したら、その時はその時で」と笑ってくれました。もちろん、疾患を持たれている方、なんらかの心の病を持たれている方、無理しすぎてバランスを無くしかけている方には、「寄り添い系」は必要です。前述した言葉は、とてもとても素晴らしい言葉だと思っています。100%正しいとも思う。

でも、僕が日本で若い世代にセミナーや講演会などをして、彼らが健康的にも経済的にも余力がある状態で、免罪符のように「自分を大切に」「ありのままでぇ♪」のようなセリフを連呼する現状にウンザリはしていました。しかも、厄介なことに、言葉自体は何も間違えていない。1000%正しい。

でも、無理せず生きて、ビジネス書に書いてあるレバレッジを効かせた時間節約術だけで、効率重視だけで、安全第一だけで、死ぬ際「生きて、生きて、生き抜いた」と思うことができるのだろうか。前述した彼らのように。(…あれ、やっぱ、精神論や根性論になってきてます?…熱くなりすぎちゃいました笑。なので、慌てて、話の軌道修正をします)

「自己啓発力」は日本のみなさん、すでにお持ちだと思われます。なので、ここはあえて一回くらい「自己破壊」を覚悟して、打って出てみることを提案してみます。そこで、本当に「破壊」されて、そして、「自己再生」できたら、それこそが、今回のテーマの「シナリオ書き換え力」だと思ってください。

もちろん、あえて破滅への道に進む必要はありません(笑)。でも合理的、利便的、効率的な、「自己啓発」だけでは、結局、マイナーチェンジしかできないよ、ということです。多少のリスクを持って「挑戦したかったものに、挑戦してみよう」、ということです。それがすなわち「行動」です。でも、失敗しても大丈夫なんです(もちろん程度にもよるけれど)。

なぜなら、「なんだかんだ色々ピンチはあるけれど、結局、なんとかなるだろう力(りょく)」は、経験値からでしか身につかないからです。それはすなわち、エラーの絶対数です。一定数の失敗してきた経験です。エラーを何度もしても、今、なんとかやってはいる。失敗をいっぱいしてきたけど、結局、また立ち直ってる、という経験が多いほど、人生のシナリオを書き換える際の力になります。エラーをするのは、挑戦するしかありません。挑戦しないとエラーできない。エラーの絶対数を増やせない。

しかも今の日本の資本主義社会の中では、おそらく20代や30代の時のエラーの方が、被害は少なくて済む。一概には言えませんが、確率的には40代、50代、で家庭を持って、子供がいて、社会的に立場のあるポジションに就いてからの失敗の方が、一般的にはダメージは大きいはずです。

ということは、世代的に責任あるポジションじゃない時にエラーした方が、コスパはいいはずです(出た!コスパ・笑)。「若いうちに、失敗を経験しようよ!」ってなんだか、人生相談セミナーの講師みたいなことを言ってますが、これまで説明したロジックを元にすると、ただの精神論で言っているわけではなく、ロジック的に言っていることはわかってもらえると思います。

で、挑戦する、ということは。「行動する」ということなんです。わかっていただけましたでしょうか。前置き、長すぎる(笑)?

も一回、簡単に整理します。

世の中の成功者には二通りしかいない。ひとつは「シナリオ通りに人生を歩む人」。ひとつは「シナリオを書き換える力を持っている人」。凡人の僕たちは、後者を参考にした方がいい。シナリオを書き換えるには、長期的にポジティブでなくてはいけない。長期的にポジティブになるには「失敗しても、結果なんとかした」という自らの経験が多ければ多いほどいい。その力はエラーの数に比例する。どうせ、一定数のエラー数が必要であれば、若い世代でした方が効率がいい。そのためには、挑戦し続けるしかない。それはつまり「行動」し続けなきゃいけない……ということです。

「あえて失敗の数を増やすっておかしくないですか?」と言われるかもしれません。違います。あえて失敗の数を増やさなくてもいい。成功した方がいい。おめでとう。それはつまり前者「シナリオのまま人生を運べている」ということです。

人生、そう甘くない中で、圧倒的な努力と、圧倒的な才能と、圧倒的な意志力をあなたはすでに持っている。そのまま突き進んだ方がいい。あえて失敗なんてもちろんする必要はない。100%成功するつもりで挑戦して、それでもダメだったものを「失敗」と言います。最初から失敗数を増やすつもりの行動は「挑戦」とは言いません。やめてくれよ(笑)、きもちわるい、そんなの。「自分探しのための旅」みたいでそれは意味がない、と思います。

つまり、どちらのタイプだとしても、「シナリオ通り力(りょく)タイプ」だとしても「シナリオ書き換え力(りょく)タイプ」だとしても、行動しないと始まらないし、行動しないと損だということになります。

そう。行動した方が「得」なんです。成功したら、成功する。失敗したら、将来、大切なタイミングで、成功に向けて軌道修正する時に、その失敗が役に立つ。ということは、コストパフォーマンス的に、「行動しといた方が得なんだよ」ってことなんです。

これだけ長々と書きましたが、このロジックの流れを理解する必要はないと思います(笑)。ただ、単純に根性論だけで、バカみたいに「行動!行動!」って言ってるわけではない、ということだけをメルマガ読者の皆様にはわかってもらいたかった(笑)。

そして、ここからは余談なのですが。今回、説明したこのロジックに基づいて言うならば。よく日本の若い世代のビジネスマンに見る「効率だけ優先してエラーを極端に避けたがる」層も、よく日本の年配のビジネスマンに見る「精神論・ガッツ論に頼りたがる職人気質な」層も、両方ナンセンスだということが、理解してもらえると思います。両方、不十分。どっちもダサい。

前者は、神に選ばれた才能があればいいけれど、ここぞと言う時にシナリオを書き換えルことができない。後者は、ひとつの武器を絶対的依存し過ぎて、あまりに自己完結。自分が通った道以外を認めないのなら、シナリオ通りに行く天才まで批判するし、自分が書いたシナリオだけを押し付けようとします。それだけしか知らないから。

数年前、日本のとても有名な見識者が「寿司職人になるのに、3年とかの皿洗いの修行期間は意味がない」と発言して話題になりました。確かに、美味しいお寿司と皿洗いに明確なつながりを僕も感じません。なので、100%、僕はその意見に賛成です。ただ、注意が必要なのは、彼のフォロワーに、その真意が伝わっているかどうか、です。言葉ヅラだけをフォローしてたら、非常に危険です。

まず、第1に、そのインフルエンサーは日本を代表するくらい頭のいい方々です。つまり「シナリオ通りに人生を運べる」人かもしれない。彼らに、書き換え能力は必要ないかもしれない。でもフォロワーくんたちは、おそらく必要なんです、将来、書き換え能力が。エラー経験がそう必要ない人の意見を、エラー経験しといた方がいい人たちが、丸々鵜呑みにしちゃってる。

元々の資質も才能も頭脳も違う中、ツイートの内容だけに傾倒しちゃうと痛い目に遭う。だいたい、インフルエンサーの言葉を受け売りで拡散する時点で、大凡人。凡人ならでは戦い方が必要なはずです。

例えば、その見識者の言葉自体は100%正しいのだけれど、その言葉の後に、隠された言葉も存在するはずです。
「 腕のいいお寿司職人になるのに、皿洗いの3年間は意味がなく、もったいない」という主旨のセリフの後に、「」して、(だったら、その時間、美味しいお寿司をつくる時間に当てた方がいい)がくっつくはずです。皿洗いのような直接、意味のないことに時間を割くくらいなら、いい職人になる為にダイレクトに行動した方がいい、ということです。

でも、この真意を理解せず「寿司握るのに、皿洗い関係なくね?草草草」と、そこだけをフォローしちゃったら、そいつ良い職人になれそうもないように感じてしまいます(笑)。もちろん偏見だけれど。「皿洗い必要ないんだぁ」だけを都合よく受け取ってると、この先物事がうまくいかなくなった際、おそらくシナリオを書き換えられない。台本がそこで終わる。

この20年、ニューヨークで多くの、特に資格も必要のない、自称なんとかカウンセラー、なんとかコンサルタント、なんとかアドバイザー、という肩書きの若い世代のビジネスマンに会ってきました。もちろん中には成功し、優秀なビジネスマンもいるのだと思います。でも、たまたま、本当にたまたまなのだと思うのですが、僕が実際に会ったそれらのビジネスマン(?)たちは、今現在、ひとりも残っていません。誰一人です。シナリオを書き換えたわけでもなく、一人残らず帰国しました。

出会った際は、アメリカ人もあまり使用しないビジネス英語を駆使して「時代を変える」もしくは、「ニューヨークの日系市場を変える」くらいな勢いだったのに。彼らの特徴はあまりにスタイリッシュでカッコいい「企画書」を見せてくれることでした。いや「企画書」などという僕のようなダッサイ、古臭い、単語も使いません。なんとかカントカ シート。だいたい横文字です。要は「企画書」なんだけど。

で、その企画書には、メイク・ストーリーだの、ブレイン・ストーミングだの、アジェンダ・コンプライアンスだの、オーソライズ・バジェットだの、単語がこれでもかというほど並んでいるにも関わらず、最終的な、肝心の「マネタライズ」の箇所が空欄になっている。

要は、出口はどこなの?という箇所がまるまる抜けています。つまり、ビジネスにおける、「お魚屋さんが、お魚売って、お金が入る」のいちばん肝心な「お金が入る」のセクションが、まるまる抜けている。

「え…っと…ビジネスモデルはわかったけど…どこで収益あげるの?アプリカントから取るっていうスキームなのかな?それとも手数料として課金するの?」

その基本的な質問への、答えはいきなりグチャグチャってなります。もっと言うなら、その出口の部分がまるまる抜けていることも珍しくない。おもしろいことに、結構な数でそんな「企画書」を見てきました。あ、「サジェスト・ナントカ・シート(ってやつ)」を。

「マーケットにムーブメントを起こす!」という前半のくだりは、意気揚々だったのに、収益を具体化する後半部分は、急に口ごもる。中には、「そこは…時代が決める、って感じですかね」という子もいました。いや、そこはさすがに、おまえが決めろよ。

決して彼らは能力が低いわけではありません。むしろ、かなり高い。非常にスマートです。スタートしていない時点で、リスク管理ができている。僕の20代の時とは比べ物にならないほど優秀です。

ではなにが問題なのか。

要は何が言いたいかというと、ビジネスに関してリアルではないような気がします。効率性を求めた結果「お金が入る」という出口付近までリアルに実感できていない。それ以前は「効率化」が発揮できる場所です。人件費を抑える。時短術。プロモーション展開。すべて効率化にして素晴らしいモデルになる。でも、人(客)が介在して、リアルに、課金させるシステムになると、彼ら(客)の心理、購買意欲までは「効率化」では解答できない。

ということは、一度やってみて(行動)、失敗して(エラー)、諦めるなら終わり(破壊)。でも、次に挑戦する際(再行動)は、多分、肝心要の「金稼ごう!」の箇所を明確にしているはずです(再生)。足腰が強くなる。それがシナリオ書き換え力、だと思うのです(失敗したら、そりゃ次はリアルな課金システムから逃げようとは思わないよね)。

成功も失敗も結局は「行動」しないと、体験できない、ということです(シマッタ、結局、最後は、精神論みたくなっちゃった・汗)。

最後に、もうひとつ付け加えるなら、日本で「行動」すれば、それだけでブランディングできます。人が注目してくれるし、なんなら、協力してくれるかもしれません。日本では「行動すること」自体が大チャンスなんです。

だって「出る杭は打たれる」文化だから。だから、しづらい。だから、していない人が多い。だから、目立てる。ニューヨークだと目立てません。みんな行動してるから。その為に世界各国からわざわざ来てるから。みんなが「出る杭」だから。そこらじゅう「杭」。「杭」だらけ。それが当たり前の中、目立てるわけがない。「杭」だらけの中、ちょっとやそっとの「杭」だと埋もれちゃう。

でも日本は「杭」になっただけで、注目されます。一目置かれます(ついでに、後ろ指刺されて、陰口も言われちゃいます♪)。

そして、「出る杭は打たれる」文化だからこそ、今までしなかった人も、できなかった人も、どこかで、あなたが行動すれば、うらやましく、手を貸したくなる。自分ができなかった分まで(もちろん、妬んで邪魔される可能性も大♪)。

効率の面からも、ブランディングの面からも、「行動」しないのは、あまりに損なのです。

image by : shutterstock

高橋克明この著者の記事一覧

全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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