新型コロナの影響によりスポーツを取り巻く環境は大きく変わってしまいました。各競技工夫をしながら再開したり再開に向けた努力が続いていますが、大会ごとバーチャル空間に移動し開催され、密かな話題となっているのが自転車ロードレースの「バーチャル ツール・ド・フランス」です。『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』著者のりばてぃさんが、コロナ禍ならではの運動系アプリ使われ方の1つとして紹介。ほかにもマラソン大会や道路の修繕に利用されるなど、運動系アプリの意外な広がりについて伝えてくれます。
デジタル革命、自転車ライフを快適に!
(1)自転車支援を本気でするイギリス
イギリスの地方議会(デヴォン郡、Devon County Council)が自転車トラッキングアプリのストラバ(Strava)を使ってサイクリストがよく乗るコースの道路を優先的に修復すると発表。追加予算は2700万ポンド(約36億円)。
● Council uses Strava to repair damaged roads for cyclists
ストラバとは、自転車とランニングを計測するトラッキングアプリで、他の運動系トラッキングアプリ同様に、友人やグループ同士での記録の公開やコメント機能などソーシャル・メディアの役割も持っている。
そのストラバのコース記録を参照して、よく走る人気コースを優先して修復することでより多くの人々が快適に乗れることができ事故防止にも役立てようということなのだ。日本は比較的道路環境が良いけども、アメリカやイギリスなど海外の道路事情はあまりよくない。そこら中、穴だらけ、段差だらけといっても大袈裟ではないのである。特に道路に開いているくぼみは、英語ではポットホール(pothole)と呼ぶ、雨や雪が多いと道路の舗装状態が悪くなり劣化やひび割れさらには穴のようなくぼみができる。
ストラバを参考にすると発表したイギリスのデヴォン郡は、昨冬、雨雪が多かったため穴ぼこが多かったのだそう。この穴、自転車乗りだけでなく、車のタイヤのパンク原因にもなるので、なるべく補修したい。そこに新型コロナのパンデミックにより公共交通機関を避けて自転車利用が増えたということで、利用者の多い道路を優先して補修しようということになったのだ。道路修復にトラッキングアプリを利用するのも、新型コロナ問題が関係するデジタル革命のように思う。
さらにこのデヴォン郡の取り組みとは別に、イギリス政府は新型コロナ問題を受けて6月末から自転車利用を促進するため2500万ポンドの予算で自転車修復代の補助を提供(1台あたり50ポンドまで)。自転車利用を促進する目的は、公共交通機関を避けてもらうことで混雑の緩和や国民の健康改善、さらには車利用を減らし排気ガス削減にもつなげたいからとのこと。
なお、自転車修復補助の他、自転車支援策は全体で20億ポンドもの予算を投入している。
● Half a million £50 bike vouchers: How to claim your bicycle repair discount and how bike shops can register
(2)運動系アプリでバーチャルイベント
ストラバやナイキのランアプリの他にマップマイライドやマップマイランなど数えきれないほど運動を計測するアプリがあるが、そういったアプリを使って、今年は多くのマラソンレースがバーチャルランに変更されている。
これは、指定された期間に指定された距離を走るレースでアプリで計測した記録を投稿することで参加完了となる。日本でも札幌マラソンをバーチャル開催にすると発表されたばかり。
● 札幌マラソンはオンラインで開催
ちなみに毎年7月に開催するフランスの自転車レースのツール・ド・フランスは本大会を8月末に延期し、さらに、本来開催する予定だった7月にズイフト(Zwift)という屋内自転車計測アプリを使った同大会史上初のバーチャル大会を開催している。
● 公式サイト
● ズイフトで「バーチャル ツール・ド・フランス」が7月開催 ベルナル、フルームら出場
ズイフトは屋内で計測器をつけた自転車や室内用ランニングマシーンを使って仮想現実内のコースを走ることができるサービス。他のランナーやサイクリストのアバターもあるので、まるでたくさんの人たちと走っているような感覚になる。ランダムに参加者にいいねを押す機能もあるし、グループ参加もできる。
少し細かい話になるが、自転車で数台連なって走る際に感じる風の抵抗も反映される(ズイフトが販売する計測器をつける必要がある)。本格的に自転車をトレーニングしたい人も満足できるものとなっている。ちなみにズイフトからプロの自転車レーサーになった人もいるくらいなので、バーチャルイベント開催でプロへの道など可能性は広がっていくかもしれない。
また、ツール・ド・フランスのバーチャルレースでプロ選手が走ったコースをアマチュアでも走れるというものもあったりして、バーチャルだからこその新たな体験ができるのも非常に興味深い。
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