障害者を自殺に追い込む「マンション自治会」の闇。他人事ではない悲劇の教訓

 

そして、管理組合の輪番制の理事に関する同じようなケースを思い出しました。その方は、夫が「うつ」になり自宅療養していました(そのことは、周りには言っていません)。

輪番で夫に理事が回ってきましたが、健康上の事情があって理事はできない…と伝えると、理事長とそのグループの理事がやってきて、どんな健康上の事情があるのか、根掘り葉掘り聞かれました。でも、「うつ」だと言う気になれませんでした。たまに見かけるが健康そうに見える…と。外から見ても病気には見えないので、理事ができないということが理解されないのです。

みんな事情があっても順番に理事をしている。不公平になるので、よほどの理由がないと理事は辞退できない。できない理由を文章にして理事会に提出するか、自分で、次の順番の人に説明して、替わりになることを了承してもらうように…と言われたのです。

「うつ」で仕事を休んでいる夫を抱え、目を離したすきに自殺でもしたらと神経を使っている妻にとって、これはたいへん重いことです。理事を辞退するのに、夫の病名までまわりに公開しなければならないのか…と、妻は追い詰められていました。理事長の高圧的な態度に、この人には、絶対に夫の病気のことを言いたくないという気持も生じています。

公平性や義務という正義を盾に、弱い立場の人の心情に対する想像力が欠如している「理事長」「自治会長」「班長」というような「長」はいたるところにいます。「長」のつく方には、ぜひ、気を付けていただきたいと思います。

ほんとうの「長」は、相手の様子から、あまり周りには知られたく事情があるんだろう…と察したら、それ以上は聞かずに、逆に、何か困ったことがあったら相談してくれ…というはずです。そして、ほんとうの「長」は、周りから信頼されているので、細かい事情まで言わなくても、自分の言葉で、周りを納得させることができるのです。

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