日本と核兵器のベストな距離感。核の傘と核禁止条約の矛盾はこう解決せよ

 

日本は、バカ正直者ではなく大人になれ

ということを考えると、21世紀における、核の安全ということを考えたときに、次の点が指摘できます。

まず確認したいのは、核禁条約イコール即時核廃絶ではないということです。つまり5大国に関しては、相互に「自国民の生命を人質に取られれば自制する」だけの文明的な判断力を持っていることを前提に、当面の保有が相互に「恐怖の均衡という安全」を実現している、これは当面残さざるを得ないと考えられます。その一方で、5大国以外の拡散についてはNPTの原点に帰って、強く禁止するということです。

その上で核拡散の防止を補完する意味で、核禁条約を幅広く締結して核の使用を厳しく制限するということは有効と思われます。つまり「5大国以外が持つことを禁止するだけでなく、使うことへの厳しいまでの禁止」を行うことで、核拡散と万が一の使用を抑止するという考え方です。

論理矛盾という指摘はあると思います。ですが、核の使用が違法だと報復ができず、そのために恐怖の均衡が成立しないなどというバカ正直な理論と比べれば、遥かにマシと思うのですが、いかがでしょうか?

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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