ひれ伏す習近平。中国海軍が台湾沖で米台日同盟軍に勝てない理由とは?

 

米がアジアで同盟軍を率いる

南シナ海は公海であり、中国領海でないと強く反発する米国が、「インド太平洋戦略」の重要性を高く掲げている。エスパー米国防長官は、中国の脅威に対抗して、インド太平洋地域のパートナーおよび同盟との協力を強化する、と表明するにいたった。

エスパー米国防長官は、シンガポール日刊紙『ザ・ストレーツ・タイムズ』に寄稿(6月15日付)し、「米国は新型コロナウイルスと中国共産党による挑戦の中、域内の同盟およびパートナーと緊密な安全保障関係を構築するために努力する」と表明した。米国が、域内で反中国体制を構築し、中国封じ込めに乗り出す意向を固めたもので、軍事的取り組みを明確にしたのだ。

米国は、すでに台湾防衛姿勢を明確に打ち出している。新鋭航空機を台湾へ売却して、中台の空軍力バランスを回復させている。最新鋭ではないが、米国新型航空機に中国も歯が立たないとされている。

軍事にくわえ金融でも沈没する中国

中国は、周辺国に対しては強圧姿勢を取っているが、米国に対してはなぜか、低姿勢に転じてきた。米国が、中国による香港への国家安全法適用で、「一国二制度」の消滅に強く抗議しているからだ。

米国は、香港に国家安全法が適用されれば、香港を中国の一都市として扱うと表明した。北京や上海と同じ扱いにする以上、現在、香港に与えている特恵(関税やビザ発給)を廃止すると宣言するのは当然である。

これによって、中国の受ける金融的な損害は莫大である。習近平氏を強力に補佐する民族派は、経済計算という合理性に無頓着である。国威発揚の情緒面を重視するが、合理性の視点が完全に抜け落ちている。香港が、中国の金融面でいかに大きな位置を占めるかが分からないのだ。愚かというか、子ども並みの知識にとどまっている。

米経済紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月15日付)は、「『王様』ドル、米中の闘いで人民元に対する死角は」と題する記事を掲載した。この中で、米国の中国に対する勝利宣言を早くも発したのだ。慎重なWSJがここまで報じたことは、中国が金融的にいかに脆弱な立場に置かれているかを見抜いている結果であろう。

私は、米ドルが世界の基軸通貨であることの強味を再三再四にわたり強調している。世間では意外と、GDPの規模と成長率の議論に熱中するが、金融面での議論に興味を示さないのだ。ここが最大の弱点である。

金融の話は、専門用語が頻繁に登場して面倒くささを感じる。だが、一番重要な点である。「金の切れ目は縁の切れ目」と言われるごとく、金融が杜絶すれば一国経済は沈没する運命だ。自動車にとって、ガソリンの役割である。

米ドルは、他国経済の運命を左右できる基軸通貨である。1816年に制定された英国の金本位制が、1930年代に崩壊し、第二次世界大戦後に米ドルが基軸通貨として登場した。

当初は、米ドルと金との兌換が行なわれたが、米国経済の停滞から起こるドル危機で金との兌換を停止。その後は、自由変動為替相場制でドル危機は起こらず安定した。こうして、米ドルによる世界経済支配が確立したのである。

米ドルが、世界の通貨になっている以上、この米国と政治的に対立すれば、米国からしっぺ返しを受ける関係になった。むろん、これを心よしとしない国々がある。かつては、フランスのドゴール大統領が反対の急先鋒であった。だが、フランス経済が逆境に立てば、そんな不満を言っていられなくなる。こうして、いつしか米ドルが絶対的な地位を固めた。

中国は共産党が支配する限り覇権を握れない

このほか、これを許す条件が3つある。軍事力・経済規模(GDP)・市場規模(市場経済)が世界最高という尺度だ。これに合わせれば、米ドルの右に立つ通貨は存在しない。

中国人民元が、逆立ちしても米ドルに敵わない理由は、前記の3点を見れば分かるはずだ。仮に、軍事力とGDPで米国を追い上げても、中国は市場経済を軽視する経済システムである。これは、国有企業中心=共産党支配を前提にしているからだ。こうして人民元は、本質的に基軸通貨になれないのだ。

中国がどうしても、基軸通貨国になりたければ、共産党を死滅させなければならない。自らの身を燃やして、新たな生命を世界に与える仏の御心になることだ。中国共産党にそのような慈悲の心があれば、南シナ海を不法占拠したり、新疆ウイグル自治区で100万人以上を強制収容所に閉じ込める非人間的なことを行うはずがない。

結局、我執の強い中国共産党には、世界覇権が手の届かない夢である。あるいは、見てはならぬ夢であることが分かる。

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