ひれ伏す習近平。中国海軍が台湾沖で米台日同盟軍に勝てない理由とは?

 

中国に「トランプのバズーカ」が火を吹く

WSJの記事を紹介する前に、予備知識を申し上げてきたが、ここで本論に移りたい。

(1)「米国にとって本当の『バズーカ砲』は、中国の銀行に対する制裁だろう。昨年、名称非公開の中国の銀行3行が、北朝鮮に対する制裁の捜査を巡り法廷侮辱罪とされたため、米国から罰を受ける可能性が出てきた。上院に提出されている法案も、香港の自由をないがしろにする銀行への罰則をちらつかせている」

米国は、基軸通貨国であるのでFRB(米連邦準備制度理事会)が、事実上の世界金融の元締め役である。FRBが、中国の銀行との取引を停止すれば、中国は信用恐慌を起こす。まさに、米国は中国を狙う「バズーカ砲」である。

(2)「中国の銀行がドルで事業をする能力を限定することは、かく乱要因であることは間違いない。中国の銀行が国外に保有すると主張する2兆2150億ドル(約237兆7237億円)のうち、63%はドル建てだ。今後2年間に、中国と香港で発行された米ドル建ての債券約3210億ドル相当が償還を迎え、借り換えが必要になる可能性がある」

中国の銀行が、海外での事業に融資するにはドル資金を不可欠とする。誰も、人民元を欲しがっていないのだ。反米で盛り上がる北朝鮮すら、国民から米ドルを取り立てて輸入品の決済に使うほどだ。米ドルが世界通貨である以上、米国の影響力から「自由」であり得ないという宿命を負っている。

中国の銀行が、保有する資産の63%は米ドル建てである。これは、いつでも換金できるという流動性が付与されている結果だ。米国の市場規模(市場経済)が世界一であるのは、同時に金融市場が世界一であるという意味でもある。

中国は米国への嫌がらせで、約1兆ドルの米国債を売却するという情報を常時、流している。世界一流動性の高い米国債を売却して何を買うのか。米国債に代替される債券は存在しない。米金融専門家は、中国による嫌がらせ情報を高笑いしている。馬鹿にされているのだ。恥ずかしい話である。

(3)「中国の時代遅れの金融システムは崩壊しかねず、中国は高齢化から膨らんだ不動産セクターまで、成長に対する無数の脅威に直面している」

これが、WSJの結論である。中国は、時代遅れの金融システム、とまで蔑まされている。米国が、香港への特恵を撤廃すれば、香港経済は成り立たなくなる。香港の中継貿易という立地条件が失われれば、自動的に香港金融市場は機能低下に見舞われる。それは、香港ドルと米ドルとのペッグ制(固定相場)の崩壊を招くだろう。

香港への支配を強めて失う世界経済との繋がり

中国は、この香港ドルのペッグ制に助けられて、世界経済と繋がって資金調達が可能になっていた。中国の銀行が保有する資産の63%は、米ドル建てであるのもこの結果である。中国は、国内の不平不満を抑えるべく、香港へ国家安全法を適用しようとしている。それが、香港経済に打撃を与えて、中国の首を締める。自業自得の典型例がこれだ。

中国最高指導部は、この矛楯にようやく気付いたようだ。これまで、米中のコロナを巡る対立で、中国は米国からの穀物輸入を極端に減らしけん制してきた。それが、下記のように突然の翻意が起こった。「金融危機」を察知したのであろう。

ポンペオ米国務長官は6月17日、ハワイで中国共産党の楊潔篪(よう けつち)政治局員と会談した。その際、中国側が第一段階合意の下で交わした米国からの穀物輸入について、約束を全て守る考えを改めて示した。

これまで、米中対立を利用して、米中貿易「第一段階合意」を反古にして対抗すると予測されていた。それが、「約束の完全実行」と発言したのは、米中対立激化を恐れ始めたと見るべきだろう。ハワイ会談は、米中いずれが呼びかけたか不明である。しかし、場所がハワイであることから、中国が申し出たのであろう。

中国が慌てた理由は、形勢不利を悟り始めたと見るべきだろう。独裁政権ゆえに、これまでの行動を改めるとは思えない。現行路線を突っ走るだろう。周辺国との摩擦を激化させて、国内の不満を鎮めるという常套手段を継続させる。

これは、アジアが一段ときな臭くなるという危惧の念を強める。米国は、これに対応して「インド太平洋戦略」を強固にして、中国が軍事的に手出しできない体制を固めることになろう。

print
いま読まれてます

  • ひれ伏す習近平。中国海軍が台湾沖で米台日同盟軍に勝てない理由とは?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け