6億人の貧困層を抱え台湾に侵攻する中国にV字経済回復は可能なのか?

 

ところが、現実には中国もコロナで経済が打撃を受けたため、米国からの輸入は計画から大幅に遅れています。例えば、農産物の輸入は5月まででわずか50億ドルにとどまっています。2017年から大幅に上乗せするどころか、2017年水準を30%以上下回っています。合意を実現するには、あと5か月で爆発的な大量輸入を取り付ける必要があります。

米国からの輸入を増やすには、中国国内の需要を高めるか、他国からの輸入や国内の生産を減らす必要があります。このうち、前者については新型コロナウイルスの影響でGDPが大きく落ち込み、内需も縮小しています。そこへ米国からの輸入を増やせば、オーストラリアなど輸入ライバル国との軋轢を高めるか、国内生産を圧迫します。生産か減れば雇用も減ります。

今の中国にとって、今年の「合意達成」はほぼ不可能な状態と言っても過言ではありません。そこで、閣僚会談でどう対処するのか、大きな関心を呼んでいます。合意書には、定期的にチェックの上、合意が守られていない場合は、改めて関税を引き上げる、との条項が入っています。しかし、大統領選挙まで3か月を切った今、関税を引き上げれば市場に混乱を起こし、米国株が下落すれば逆効果となります。

米国としては圧力をかけて、ここから中国に輸入を大幅に増やす約束を取り付け、いったんは時間の猶予を与えるとみます。それでも中国にとって、ここでの輸入拡大は国内生産者を圧迫するだけに、景気悪化要因となります。2000億ドルの輸入増は、中国のGDPを約2%押し下げます。そして米国は、大統領選挙後に次のチェックを行い、そこでも合意未達となれば、関税引き上げが選択肢となってきます。

海外市場がコロナ疲弊

国内生産が圧迫される分、海外に輸出を拡大できれば、中国の負担は軽くなりますが、欧米など主要な海外市場はコロナ禍で経済が圧迫されています。再び感染が拡大しているだけに、改めて経済規制がかかるリスクもあり、中国にとって輸出は防護服やマスクなどの公衆衛生関連や医薬品などが中心になりますが、これにも限度があります。中国にとっての輸出市場は決して楽観できる状況にはありません。

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